カレーと正義の交差点・其の十一
義正さんはゆっくりと調理場の冷蔵庫を開け、水をこちらに投げよこす。
とっさの事で、慌ててそれを取ろうと手を伸ばす。何とかキャッチする事が出来た。
「まぁ、君のお仕事の事はまた後日聞くとしてね、今日聞きたいのは赤崎の事なんだよ」
「……? 赤崎さんの事、ですか?」
「そうそう、あの子がこんなに人と接するのってさ、学校以外だと珍しいんだよ」
意外な事実である。彼女が普段見せてくれている姿からは、そんなイメージは浮かばないのだが。
「彼女……まぁここに居る奴らは大体そうなんだが、異能力者っていうのはあんまり好かれていない」
異能力者。
ウイキョウも言っていた、彼らが悪という存在になった理由であり、彼らが今正義という存在と出来る要因である。
「田中君は、そんなに気にしていないけど、家族に居たりしたのかな?」
「いえ、そもそも大学出るまで能力者なんてテレビ以外では見る事がありませんでしたし……」
相当な田舎だったのか、僕が生まれた町では異能力者という存在は見受けられなかった。
もちろん、テレビでは、そんな彼らの事もしっかりと報道していたので、存在は知っていたが、実際目の当たりにしたのは、大学に入ってからである。
「そうか、まぁ異能力者なんてそんなに沢山はいないしな……初めて見たときは怖くなかったのかい?」
そう聞きながら、義正さんは余っていたゼリーを興味津々といった目で眺めている。
「ま、まぁ初めは驚きましたけど、それだけで後は別に……店に来てくれる皆さんは良い人たちでしたし……食べます?」
興味津々から、食べてみたいというもの欲しそうな目に変わっている義正さんに尋ねると、彼は答えの代わりにスプーンをみせてニヤリと笑った。
「いただきますっと……そうか、それなら俺も安心だ」
「安心、ですか?」
「そう、少なくとも君は変な偏見とかは持ってなさそうだしね」
そう言いながら、義正さんはゼリーを頬張る。
うまいな、と一言呟いて口の中の感触を楽しんでいる。
「……赤崎もな、異能が原因で一度嫌な目に合っていてね。それ以来人との接触を避けるように待ってしまっていたんだよ」
静かな声で、彼は赤崎さんの事を教えてくれた。
異能の暴走で両親を亡くしてしまった事。
その事が理由で、妹に憎まれた事。
そんな彼女を親族は疎み、たらい回しにされたこと。
そして、限界一歩手前の彼女を義正さん達が保護して、やっとあそこまで明るくなる事が出来た事。




