カレーと正義の交差点・其の九
おもわず固まる、俺と赤崎さん。
突然の事に、身動き一つ取れなかった。
「おいおい、何もそんなに強張らなくても良いだろう? 別に説教に来たわけじゃないんだから」
原因である本人はこちらの状態をおかまいなしにケラケラと笑いながら、こちらに歩み寄ってくる。
なんだろう、やはり俺が悪の組織側の人間だったからだろうか、良くわからないプレッシャーを感じてしまう。
「あ、あはは……すいません、その、お邪魔してます」
「なに、構わんさ。赤崎に料理をしえてるんだろう? どうせなら、うちの妹にも教えて欲しい物だね」
そう言って義正さんは豪快に笑っている。
ただの世間話。だと言うのに、気が気ではない。
異様な重圧感が俺の心を強く鷲塚んでいる。
「あぁ、そうだ赤崎。妹で思い出したんだが、さっきお前の事を探していたぞ?」
「え? 藍華さんが?」
意外そうな声を上げて、赤崎さんが首を傾げる。
「そうそう、暴漢を吹っ飛ばした件がなんとか……って相当怒ってたが、何をしたんだ?」
「……あ」
その言葉で急に顔を青ざめる赤崎さん。恐硬直したまま体が小刻みに震えている。
彼女をここまで恐怖に落としれる藍華さんの怒り。一体どれほどの物なのだろうか。
「……早めに行った方がいいんじゃないか?」
「は、はい……ご、ご、ごめん田中。ちょっと行ってくるね」
「あ、うん……頑張ってね?」
それだけ言うと、必死の形相で外へと飛び出していった。
そうして、調理室には俺と義正さんだけが残されたのである。
不味い、非常にまずい。時計を見ればもうすぐ22時を回ろうとしていた。
そんな、夜分遅くの静かな調理室に男が二人。
……とても気まずい。




