カレーと正義の交差点・その伍
「あんたねぇ……」
空が真っ赤な夕焼けから、蒼黒い夜の色に変わり始めた頃。
知人からの強烈な質問責めをのらりくらりと躱して俺たちは目的地にたどり着いた。
本来、俺にはほとんど縁がないであろう、正義協会の支部である。
その一室で、俺は赤崎さんに胸ぐらをつかまれていた。
件の知人、松島さんは俺たちのあやふやな回答に対して決して納得したわけでは無く、彼女の習い事の時間が迫ったためであり、彼女による取り調べ、もとい尋問は後日行われるらしい。
なお、日常的に会わない俺はともかく、すでに明日出会う事が確定している赤崎さんはほぼ明日にでもすぐに再び強烈な追求が来るのは確実な事である。
彼女の顔はすでに明日の絶望と、その原因である俺へ怒りによって般若のような顔になっていた。
「何、どういうつもりな訳!?」
「いや、魔が差したというかつい口が本音を吐いたというか」
なんだろう、さらに爆弾を投下してしまった気がする。
「ほんっ……!」
予感は当たったらしく、般若のような顔が一転して茹で蛸の様に顔を赤く染めた赤崎さんは、俺を胸ぐらをつかんだまま慌ただしく上下に振り続ける。
まずい、酔いそうだ。
「う―……うううう」
よく分からない唸り声を上げる赤崎さんは涙目になっている。
上目使いでこちらを見る彼女と見つめ合う形になり、胸が高鳴る音と自分の顔が熱くなるのを感じた。
この状況、一体どうすればいいのか……そう思ったのは赤崎さんもらしく、見つめあったままお互い固まってしまう。
いつもより早い鼓動が、やけに耳につく。
「え、えっと。それじゃあ早速始めようか」
戸惑いながらも、なんとか当初の目的を成すために話を切り出す。
「そ、そうね」
それをきっかけに赤崎さんも慌てたように手を離した。
「それじゃ、こっちはこっちで支度するから赤崎さんは着替えてきなよ」
「わかったわ。じゃあいつもの場所で会いましょ」
俺の指示に従い、赤崎さんは奥へと入っていく。
何をときめているのだ俺は。
「相手は高校生だろうに……」
誰に言うでもなく、言い聞かせるようにそう呟いて自分の支度を始めた。




