カレーと正義の交差点・其の壱
昼のピークタイムに入った店は、人の話し声と食事をする音が混じりあって、騒がしい盛りとなっていた。
そんな、新鋭カレーショップ、モダルカン。
一見、大繁盛で順風満帆なこの店、しかしながら今一つの問題を抱えている。
「二番テーブルに、日替わり二つと、タツタカレー一つとラッシー三つ」
「了解! ラッシーは手前の冷蔵庫だからそのまま持って行って……」
「分かっ……」
「すいませーん! 注文お願いしますー」
「う……」
「いいよ、クローブちゃん! 注文取ってきて!」
「分かった」
そう、人 手 が足りないのである。
元々そこまで広い店舗ではなかったこの店だが、数々の襲撃(主に身内からの攻撃が中心である)による修復を数回程だが行っている。
開店から半年も立っていないのに、この様である。
果たして一年後に店舗が無事に残っているのか心配だ。
だが、そのおかげで厨房はより広く使い易くなった。これは、ある意味襲撃のおかげだろう。
そして、同時に店内も広くなった。
……なってしまったのだ。
「田中、会計に手が回らない」
「あぁ! 分かったよ、今いく!」
前までは後ろせくせくとカレーを作り続けている作業だったと言うのに、今は店内にでなくてはならない。全く由々しき事態だ。
こんな事が、三時を回った頃まで続き、その頃には俺もクローブちゃんもほぼバテテしまっている。
「うぅ……刻が見える」
「駄目だ、クローブちゃん。それは死んだ時の言葉だ……」
「えー……えっと、大丈夫?」
俺とクローブちゃんのあまりのグロッキーぶりに、ラッシーを楽しんでいた赤崎さんが、声を掛けてくれた。
「あ、うん、大丈夫だよ赤崎さん」
そう言いながら、栄養ドリンクを一気飲みする。しばらくすれば効いてくるだろう。
クローブちゃんも、目を細めて一気飲みをしている。
……俺より飲みっぷりが様になっているのは、気の性だろうか?
「まぁ、大丈夫ならいいんだけどさ……もう少し人増やしたら?」
「あー……それは確かに考えて欲しいかも……」
「……上に許可は取ったし、求人誌にも乗せた。後は人材が来るのを待つのみ」
そう言いながら、クローブちゃんはパサリと求人誌を赤崎さんの前に置いた。
「えーと、自給900円、昼に賄あり、交通費支給……」
この周辺でも、それなりに高い賃金。決して悪い条件ではない。
「なかなか来ないんだよなぁ……」
「……店のビジュアルの性じゃない?」
確かにここの店のデザインは、カレーショップというより峠の茶屋だが。
「ま、条件良いんだし、そのうち来るんじゃない?」
余り興味がない、と言った風にパサリとカウンターに投げおくと、勢いよく立ち上がった。
「そんな事より、今日はこっちでも働いてもらうんだから、しっかり体を休めてよね!」
赤崎さんがこちらを指差してくる。
一拍間が空いてから、沸き上がるように今日の予定が頭によぎった。
「あ」
そうだった、今日はあの日だった。




