インドから来た暴れん坊・其の十四
ウイキョウが帰った後、ふと外を見れば夕日が沈み始めていた。
「あれ、ウイキョウは?」
片づけに勤しんでいると、後ろからクローブちゃんが奥から帰ってきた。
余程ぐっすり寝ていたのだろう。頬には服の跡がついていた。
「あぁ、さっき帰ったよ」
「……そう」
少し残念そうな顔をするクローブちゃん。
やはり昔なじみの彼とは、もっと話したかった事があったのかもしれない。
「ウイキョウは……ナス、食べれた?」
「あぁ、なんだかんだお替りしていったよ」
それを聞くと、そう、と一言呟きクローブちゃんの顔が少し綻んだ。
今日はなんだかクローブちゃんの色んな表情を見れたような気がする。
「……」
「何?」
頭の中で、ウイキョウから聞かされた話が思い返される。
出会った時、クローブちゃんは首領に拾われたと言っていた。
なら、その理由は何であったのだろうか。
それを聞こうとして口を開いたが、結局言葉は出なかった。
「いや、なんでもないよ」
果たしてそんなに簡単に聞いていいことなのか。
少なくとも、先ほどウイキョウが自身の事を話した時の表情を思い出すと言葉が口から出る事はなかった。
「? そう」
訝しげにこちらを見ていたものの、ふと何かに気づいたかの様にそわそわと辺りを見回す。
そして言葉より先に可愛らしい子猫の鳴き声のような腹の音が、自己主張をするように静かな店に響いた。
「……おなかすいた」
「あ、あはは」
言われてみれば今日クローブちゃんは結局何も食べていない。
エンゲル係数が7割は行くであろう(俺の予想であるが)クローブちゃんにこれはきついはずだ。
「うん、じゃ今すぐカレーを……」
そう言おうとして、洗いかけのカレー鍋が目に映る。
……ソウイエバ、ミンナタベラレチャッタンダッケ。
後ろから、無言の重圧を感じる。
後ろを振り向いたらやられる。
そう、まるで魔術師の赤を操る占い師がガオンされる前の瞬間のように、そう本能がつげていた。
その重圧を耐えながら、ゆっくり振り向けば当然そこには飯に餓えた、クローブちゃんの姿が……
「……まだー?」
「ま、待って! 今作ってるから!」
言葉にできなかった疑問は、いつの間にか心の底に沈んでいた。
もしかしたら、またそのうち浮かび上がってくるのかもしれないが、その時はその時で考えればいい。
今は、彼女と共にこのカレー屋成功させる事と。
そして。
なるべく、彼女用のカレーを用意しておこうという事。
この二つを強く決意し、つねられて赤くなった頬さすりながら彼女のご飯を作る手を進めた。
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