インドから来た暴れん坊・其の十参
「首領が世界征服する理由?」
そういえば、何故だろう。
正直な話、これまで見てきた首領はとても悪の組織を統べ、世界を混乱に陥れようとする悪のイメージをあまり感じない。
「いや、聞いた事ないな」
「……だろうな。あの方は自分からそういう事を語る人ではないからな」
そもそも首領がまともに話している所を数回しか見たことないのですが。
「俺たちの為だ」
「え?」
「首領が世界征服を企む理由はな、俺たちの為に、俺たちの住みやすい世界をつくる為なのだ」
「住みやすい、世界?」
「例えば俺は、生まれつき筋肉の発達が早いから、こんな姿だ」
そう言いながら、二の腕を叩く。
その顔は、どこか諦めたような、悲しそうな顔でたった。
「異能を持っている人間というのはな、生まれ持った力の性でその先は二択になってしまうのだ」
二択。なんとなく意味を察してしまった。
「極わずか、ヒーローとして社会に歓迎されるか、悪として、日の当たらないところで生きていくか」
日常に適応しない、異質、異端、異常。
それこそ、正義と悪が社会の表面に現れるよりも前からあった自然な迫害。
「それを良しとしない首領は、俺たちの為に世界を手に入れようとしているのだ」
ふと、いつぞやにクローブちゃんと眠った夜を思い出した。
『私も皆も、首領の為に頑張ってる。首領の夢の為に』
首領は、ウイキョウやクローブちゃん達の為に。
そして、ウイキョウやクローブちゃん達は、首領の為に。
だからこんなにも、この組織は強い結束をしているのだ。
こんな、カレーを使う奇妙な作戦にも何の文句も言わずに。
「だから、他人であるお前に作戦を任したと聞いた時は、不安で仕方なかった」
それは、そうだろう。
俺が作戦を担当するというのは、親の大事な物を人に貸し出しているような物だ。
「まぁ、こうして食べてみて、腕は確かなのは分かったから、もう何も言わん」
「……そうか」
言いたいことをすべて吐き出したのか、ウイキョウはグラスの水を一気に飲み干し、椅子から立ち上がって身支度を始めた。
「今日は帰るよ、どうせ、姉さんは寝ているのだろう?」
先ほどまであれだけ騒いでいたのに来ないという事は、おそらくそうなのだろう。
「たぶんな」
「まぁ、俺に説教した後はいつもそうであったからな……」
そう、苦笑いしながらウイキョウは言う。だが、その笑顔はすぐに消えて、最初の時のような真面目な顔つきになる。
「……姉さんの事、頼んだ。組織(家族)以外で少しでも心開いたのは初めてだ……信頼されているのだろうな」
そういうと、ゆっくりと店から出て行った。
俺に、クローブちゃんに信頼されてもいいのだろうか。
クローブちゃん達の夢の為に行う事を、知らなかったとはいえ利用して、あたかも自分の夢のように扱っていたと言うのに。
そんな事を考えていると、急にウイキョウが急ぎ足で戻ってきた。
そして、凄まじいさっきと共に、一言。
「言い忘れていたが、姉さんに変な事をしたら容赦なくお前を潰す。それだけは覚えておけよ」
「誰がするか!!」
「なんだと! 姉さんに魅力がないと言うのか!?」
「そうじゃねえよ!」
……なんというか、先ほどまで悩んでいた事が一辺に吹き飛んでしまった。
結局、この後数分ほど言い争った後、ウイキョウは帰っていた。




