インドから来た暴れん坊・其の十壱
さて、クローブちゃんの後ろ姿を見送り、カウンターへと戻る。
そこでは、青い顔をしたウイキョウがうな垂れながら椅子に座っていた。
説教堪えたのか、来た時の荒らしさは待ったく感じられない。
「えーっと」
しかし、ここまで落ち込んでいると、なかなかに声が掛けづらい。
さて、どうしたものか。
「……あぁ、貴様か」
こちらがどうしようか悩んでいると、彼の方が気づいたらしく、こちらに声を掛けてきた。
「あぁ、うん。なんかこってり絞られたみたいだね」
「昔からこうなのだ……いつもは寡黙で大人しいのに、何か琴線に触れると途端に威圧感まして……」
どうやら、トラウマは重症のようだ。ずっと下を向いて喋っていらっしゃる。
「えーっと、カレー、どうする?」
「……食べるよ」
「ナスは?」
「いらない」
「クローブちゃーん!」
「おい馬鹿! やめろ!」
わりと小声で言ったので、当然クローブちゃんには聞こえていないのだが、素晴らしい慌てぶりである。
「じゃ、ナスも食うよね?」
どん、と音を立てて置いたカレーはもう一度温めて注ぎなおしたカレーである。
なお、先ほどのカレーよりナスの量は二倍になっております。
「なっ、鬼か貴様は!」
「そうさ、ただし頭に『料理の』って言葉が付くけどね」
もっとも、こちらも苦手な物をただ出している訳では無い。
「ま、試してみなよ。ナスをスプーンで切って、カレーと一緒に食べるんだ。そうすりゃ、ナスが嫌いな奴でも食べれるよ」
「……本当か?」
「おう、なんたってカレーは魔法の食べ物だからね」
「その理論はおかしい」
「いいから食べないと、まじでもう一度グローブちゃん呼ぶぞ?」
「……ぬぅ」
俺に言われ、カレーを見つめるウイキョウ。
振るえる手で匙を取り、ナスとカレーを合わせて口に持っていく。
そして、目をつぶり一気に口に入れた。
口の中で数回咀嚼してから、目を大きく開いて一言。
「うーーまーーぁぁあいいいいいぞおおおおおおお!」
その怒声の衝撃で、カウンターの後ろに並んでいたチャイグラスが、木っ端みじんに砕け散った。




