インドから来た暴れん坊・其の十
「……正座」
怒っている。
彼女のと出会って数か月。
こんなに怒っているクローブちゃんを見るのは、始めてだ。
先ほどまで怒りで赤くなっていたウイキョウの顔が、今度は真っ青になっている。
……むしろ、軽く体が震えている。
彼はどれだけ彼女の怒りにトラウマを覚えているのだろうか。
「ご飯は?」
「粗末にしてはいけません」
「作ってくれた人には?」
「ありがとうございます」
目の間で行われている、謎の宣誓。小柄なクローブちゃんの後に続けて、大柄で強面なウイキョウが答える姿は何ともシュールである。
「あの、姉さん。もうそろそろ……」
「……」
無言の重圧、というのだろうか? クローブちゃんの一睨みで何かを言いかけていたウイキョウは黙ってしまう。
これは、もう少し時間がかかりそうだ。
そう考えた俺は、一度カレーを戻して後ろで仕込みをする事にした。
「田中」
仕込みに集中していると、後ろからクローブちゃんに声をかけられた。
「あぁ、クローブちゃん、お説教は終わった?」
「うん、ばっちり」
どこか満足そうに胸を張るクローブちゃん。相対的にウイキョウはすごい事になっていそうだ。
「すこし、喋りつかれたから、後ろで休んでるね」
ほほぅ?
そんな事を言うクローブちゃんも珍しいけれど……俺にウイキョウと二人きりにするだと?
「……ああ見えて、ウイキョウは良い子」
「う、うん」
心見透かしたように、クローブちゃんに言われる。
そんな、まっすぐな目で見られてしまっては、こちらはうなずくしかない。
全く持って、女の子は卑怯だ。
「大丈夫」
謎の励ましをしてくれた後、クローブちゃんは厨房の奥に行ってしまった。
……いや、大丈夫って、何が?




