インドから来た暴れん坊・其の九
「え、いや認めないって、どうして!?」
「俺は、つい最近までどこに行っていたか分かるか?」
「……インド、でしたったけ?」
「そうだ! インドだ! カレーの本場だ!」
あぁ、なるほど。
「インド式カレーではないから、認めないと?」
「うむ」
確かに、インドのカレーと、日本のカレー。この二つは大きく違うものだ。
スパイスの種類、材料。どれを見ても、似て異なる物。
インドでカレーを食べて続けていたら、それはまぁ、別物として認められないのも分かる。
「ですがここは日本なので、日本式の方が多くの人の口に合います」
「だが、本場の味。家庭で味わえない味にしなければ客を取る事は出来ないだろう」
否定はしない、実際それを売りにしている店は多くあるし、それを目的にカレー屋に来る人もいる。
「スパイスは自家製の組み合わせで使っています。それに、そもそもカレーは家庭料理。親しみやすい味と言うのも重要だと思いますが?」
「……」
反論が浮かばないのか、黙ってしまった。
心の中で、はい論破―と、ドヤ顔をしておく。
「うおおおおおおお」
怒号と共に机を勢いよく叩く。大きな音が店に響き、俺は思わず飛び上がる。
「うおぅ!?」
「とにかく! これを! カレーとは! 認めん!」
怒りで真っ赤になったウイキョウの顔が間近に迫る。悪鬼羅刹のような雰囲気に思わず体が震える。
だが、料理ばかりは、俺も譲れない。
「たた食べる前から、そんな風に言わないでくれ!」
「認めれぬものなど、食えるかぁぁ!」
「なんだとぉぉぉ!」
食べてまずかったならいざ知らず、食べる前にこうまで否定されると、流石に頭にきた。
勝てないのは分かっているが、殴らずにはいられない。拳を上げたウイキョウに合わせるように俺も拳を振り上げた。
「ねぇ」
そんな一触即発な状況を、クローブちゃんの声が遮り、お互いが手を止めた。
「……ウイキョウ、もしかしてまだナスが食べれない?」
「うっ」
「え?」
突拍子のない一言。
だが一言で、途端にウイキョウはビクリと体を震わせ、顔を青くした。
一触即発の場は、思わぬ形で凍りついてしまった。




