インドから来た暴れん坊・其の壱
開いてから、早くも三か月がたった。赤崎さんの起こした騒動もすっかり昔の話になり、カレーショップは順調に客足を伸ばしている。むしろ、現在赤崎さんはかなりのお得意さんとも言える。
なんせ、毎回友人や他のヒーローを連れてやってきてくれるのだから、頭が上がらない。もっとも、悪の組織的にはすごく複雑である。
しかし、赤崎さんの連れてきてくれた人は、すでにほとんど常連になっている
幸いと言うべきか、あれ以来フェンネルさんは来ていない。だが、はたして次
に来たときに問題が起きないか、いつも冷や冷やしている。
そんな心配を余所に、定期報告から帰ってきたグローブちゃんが持って帰ってきた情報はさらに頭を痛める者だった。
「え、幹部の一人が視察にくるの?」
厨房の客席から見えない隅で小さくなりながら、静かに頷くクローブちゃん。だがそれだけではない、この三か月でだいぶ彼女の表情を読み取れるようになったのだ。
そして、その慧眼で見るに彼女はかなり焦っている。
僕も同じく、焦っている。
二人そろって客席の方を振り向く。
「ふはは! やっぱここのカレーは美味しいなぁ! 妹よ!」
「……静かに食ってくれ、愚兄。カレーがまずくなる」
カウンター席で賑やかに食べている兄妹。赤崎さんが連れて来てくれたお客さんで、兄が義正さんで、妹が藍華ちゃんだったか。
「ふむ……チキンタツタ、日替わりと食べたから次は相かけカレーで食べよう」
「……妹よ、それ四杯目だよな? まだ食えるのか?」
「ん? 全く平気だぞ? それに前の二つを二杯ずつ食べたのだから、相かけも二杯食べなければ作ってくれて失礼であろう?」
「……そんだけ食べても失礼なら、だれもカレーショップにいけないだろう……」
まさに今時の兄妹のようなやり取りを見ながら、俺は一気に冷や汗が出た始めた。そりゃそうだろう。一見普通の兄妹にしか見えない二人だが、本当は違う。
「そんなに食って昼の作業は平気か?」
「最近、平和だからな……あとは書類整理だけだ。問題ないよ」
「それならいいが、満腹で昼寝なんて勘弁してくれよ?」
「その言葉、丸ごと全部愚兄に返そう。そっちこそボーっとしないで仕事をしてくれよ?」
「分かってるって」
「就任早々解任されても困るからな? 支部長どの?」
兄である青年、壮美 義正さん。
彼は、赤崎さんたちが所属するヒーローたちの組織、日本英雄協会……通称JHSのこの付近の支部長なのだ。




