紅い正義を撃て・その十参
「悪の組織が関わっているかはともかく、あなたが本当に料理に対して真摯にやっていたのは分かりました……その、お店壊してごめんなさい」
なるほど、先ほど謝ると言っていたのは、この事だったのか。
「んー、まぁお店は結局直ったし、新しいメニューもできたしあまり気にしてないよ?」
「後、グラス……」
「それはもう、忘れたことにしたんだ……」
俺のコレクションは犠牲になったのだ……。
「あ、う、ごめんなさい……」
「あ、いやいや、一応まだグラスは残ってるし、買えないものじゃありませんから!」
落ち込んだように俯いたので、慌ててフォローする
「確か、正義のヒーローだったんですよね? 立場的に、戦うの仕方ないと思いますし……そんな申し訳なく思わないでいいですよ」
「でも……」
「君は、俺が悪の組織に属していると言うのに、俺のカレーを認めてくれた。店が壊れたのなんて、それでチャラですよ」
思えば、誰かに対して一対一で自分の料理を食べさせるのなんて初めてだった。
そして、彼女が一言『うまい』と言ってくれた時、今まで感じたことのない程嬉しく思えた。
自分の料理を認められる、今までの自分を認められたようなそんな感覚。
それがなにより嬉しかった。
「なので、これからもあんな感じに元気に食べに来てください」
もちろん、また壊されたら困りますけど、苦笑いしながら、彼女に答える。
すると彼女は、少しだけぽかんとこちらを見つめた後、顔を伏せてしまった。
気づかぬ内にマズイ事を言ってしまったのだろうかと、焦り声をかけようとした瞬間、彼女は顔をあげて笑顔を見せた。
「……分かったわ。これからも、食べに来るから、美味しい物食べさせてよね」
先ほどとは違う、砕けた喋り方。しかし、それがなんとなく彼女らしいと感じた。
「それじゃあ、早速、私は今日の日替わりで!」
横で俺たちのやり取りを見ていたゆきちゃんが、元気よく注文を言う。
「あ、じゃあ私はチキンタツタカレー!」
それにつられるように、赤崎さんも注文をする
「私は、日替わりチキン相がけカレー」
「はいはい……いや、クローブちゃんは働いてね!?」
「ちぇっ……ばれた」
楽しそうに話し合っている二人の少女を一瞥して、厨房に入る。
波乱は確かにあるものの、やはり、自分の店を持てて良かった。
そう思いながら、俺はエプロンを締め、カレー鍋の前に立つ。
カレースタンド モダルカン。今日も、平常運転だ。
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