紅い正義を撃て・その十壱
「んんっ……」
少女は、口に含んだ瞬間ギュッと目を強く閉じる。そして先ほどよりも大きな声でこう叫んだ。
「な、何これ! 凄い美味しい!」
「いっよしゃあぁぁ!」
思わず、その言葉に大きくガッツポーズをする。横でフェンネルさんに変な物を見る目で見られた。
「これは、から揚げ?」
「正確には、龍田揚げですかね」
俺が今回、秘密兵器として用意したのは、竜田揚げ。
これは基地で食堂をやってた時も日替わり定食の一つとして作っていた物で、衣に少しカレー粉を混ぜてカレー風味にした物だ。そのままでもおいしい事は、自分の舌と、食堂で好評だった事が示してくれている。
単体でも旨い龍田揚げだが、今回さらにカレーが付いてくる。
辛さに特化したカレーと共に頬張れば、辛さに鶏肉のジューシーな肉汁とカレーが混ざり合い。旨味と辛味と香りのトライアングルフォーメーションが舌の中に押し寄せるのだ。
彼女のスプーンは止まることなく口と皿を行き来する。
もはや、彼女には言葉は必要ないらしく、ただひたすら無言で食べる。
代わりに横から袖を引かれる感覚。
「私も食べたい」
予想通り、クローブちゃんからの催促がきた。
これを見通してあらかじめ大目に……
「おかわりッ!」
「俺も食べたい」
「俺も、俺も!」
ヒーローの少女のおかわりコールと共に、今まで隠れていた客たちの一斉の注文コール。
あきらかに、余分に作った分を凌駕する人数。
いつの間にか、店内は注文のコールでライブ会場の様になっていた。
ここまで求められて、作らなかった料理人の名折れである。
「ああもうっ! 今作りますから、机といすを直すのお願いしますね!」
そういって、俺はもう一度厨房へと入った。
結局、この日はいつもの営業時間まで常連で賑わい、皆がカレーを食べていった。
そんな出来事が起きてから、二日たった後、ヒーローの少女は、再び店にやってきた。




