紅い正義を撃て・其の九
「……うわぁ」
「あの二人は、いつもあんな感じで決着がつかない」
もはや二人とも武器も変身も解け、抓ったりしながら、怒鳴りあっている。
争いの中心は、悪口にシフトしたようだ。
「あれなら、止めれる?」
クローブちゃんが、不安そうに聞いてくる。そういえば彼女にずいぶん見っとも無いところを見られてしまったな。少し恥ずかしい。
「うーん、まぁ、とりあえず仲裁してみるか……」
そういって、店内の二人へと近づいていく。正直先ほどの事もあって、怖くて仕方ない。
「お、おーい、二人ともー」
「この、若づくりボンテージ女!」
「誰が若作りよ! 現役女子高生よ!」
「マジで! がふっ」
こぶしが飛んできた。すごく痛い。
「何よ! だいたい、なんで悪の組織がカレーなんか作ってるのよ! 馬鹿じゃないの!?」
「ほう、カレーなんか……ですか」
「あ、馬鹿っ!」
「なるほど、確かに正論だ。悪の組織がカレー……変だと思うだろう。俺も思ってる。」
「え、ちょっと、何よ?」
先ほどまで、互いに吠えていた二人は急に静かになる。軽く、フェンネルさんが震えているように見えるが、そんな事はどうだっていい、今は重要なことじゃあない。
「今! あんたはカレーを馬鹿にした! その事だけが、お前の罪だ!」
「は、いや悪の組織が罪って……」
「だまらっしゃい!」
「ぴぃ!」
突っかかってくる、少女に対して怒鳴り声をあげると、怯えたように動かなくなった。
俺はそれを見て、倒れた椅子と机を一つ、起こした。
「座ってください」
「え、い、いや」
「座 れ 」
「……はい」
少女を起こした椅子に座らせると、そのまま厨房に戻り、鍋の前に立つ。
「……? どうするの?」
クローブちゃんの質問に笑顔で答えようとすると、彼女は少し後ずさりして、小さく「怖い……」と呟いた。ちょっとショック。
「あの、ヒーローの少女は、この黄金色の魂を馬鹿にした……それは度し難い罪だ! 憲法違反だ!」
「そこまで!?」
「だが、俺はそれを作る料理人。彼女を更生する事の出来る、唯一の存在……だったら!」
そう、認めないのなら、認めさせればいい。
「見せてやるよ、カレーの素晴らしさを……」
そういって、俺はフライパンを手にした――




