クロード4
重厚な扉を抜けて執務室に入ると、クロードは腕の中に抱きかかえていたコレットを、まずはそのまま入口近くのソファへと静かに降ろした。
そして、すぐ後ろの扉の鍵をカチャリと施錠する。完全に二人きりの空間になったことを確かめると、彼はソファに腰かけたコレットの前へと膝をつき、二度と逃がさないようにその両手をとった。
「コレット……無事で、本当に良かった……」
見上げる彼のアッシュブロンド(金髪)の間から覗くサファイアブルーの瞳が、痛切な情愛と深い後悔に濡れていた。
「……もう、絶対に手放さない。お前を守るためだったとはいえ……冷たくして酷い言葉で傷つけて、本当にすまなかった……」
クロードはコレットの擦りむいた腕と、赤くなった指先を愛おしそうに両手で包み込んだ。
「痛かっただろう……。私のせいだ。私が彼女を甘く見ていたばかりに、君をこんな危険な目に……」
彼の大きな手が、労わるようにコレットの傷口をそっと撫で、そこへ祈るように愛おしく口づけを落としていく。その震える唇の温かさに、コレットは胸がいっぱいになり、首を横に振った。
「いいえ……。クロード様が助けてくれたから……それに私、クロード様がエレノア様と婚約されると聞いて、もうお側にいられないのだと……それが一番辛かったんです」
コレットが涙ぐみながら告げると、クロードはハッとしたように顔を上げ、彼女の頬を両手で優しく包み込んだ。
「……婚約などしていない。あれは、エレノアが勝手に流した噂だ。昔から彼女はああで……私には、彼女を娶る気など微塵もなかった」
「え……?」
「君が冤罪を着せられそうになったことも、連れ去られそうになったことも……すべて彼女が裏で糸を引いていた。他の者に助けられたとはいえ、君が何度も恐ろしい目に遭っていたのは、私の存在が君を危険に晒していたからだ。……だから、君を守るためには私から遠ざけるしかないと思ったんだ」
クロードは苦しげに顔を歪め、コレットのおでこに自身のおでこをコツリと押し当てた。
「だが、君を泣かせたあの瞬間、私の心も引き裂かれるようだった。守るためとはいえ……あんな酷い言葉で君を突き放して、平気でいられるわけがなかったんだ……」
「クロード様……」
「もう誤魔化すのはやめだ。どんな理由があろうと、君を手放すなんて私には不可能だった……。二度と君から離れない。頼むから、私を許してくれ……コレット」
真っ直ぐに見つめられ、紡がれる甘く切実な告白。
コレットの目から再び涙が溢れると、クロードはその涙を親指でそっと拭い、ソファに座る彼女の身体を優しく抱き寄せて、慈愛と熱量のすべてを込めて唇を重ねた。
「んっ……」
最初は傷ついた彼女を慈しむような、羽のように優しい触れ合い。
だが、コレットが受け入れるように彼の服の胸元を小さく握りしめると、クロードの中でせき止められていた感情が決壊した。
「ふ……っ、あ、んっ……」
階段での抑えめな口づけとはまるで違う、情熱的で、どこか焦れるような深く熱いキス。
息継ぎのために一度唇が離れても、吐息を分け合う間もなく再び捕らえられ、何度も何度も貪るように唇が重ねられる。
「……好きだ、コレット。愛している……。身分も立場も関係ない。私だけのものになってくれ」
冷たい仮面を完全に脱ぎ捨て、熱に浮かされたように甘い言葉を耳元で囁きながら、クロードは膝立ちになって彼女を覆うように抱きしめ、細い首筋や鎖骨へと熱い口づけを落としていった。
「あ……クロード、様……っ、あぁ……っ」
首筋に触れる彼の唇と荒い吐息に、コレットの身体が甘く跳ねる。
クロードは彼女の腰をぐっと引き寄せ、自分の身体へと隙間なく押し付けた。指先がハニーブロンドの柔らかい髪の奥へと潜り込み、解ほどくように撫で上げていく。
「こんなにも愛おしい……君が私を好きだと言ってくれた時、どれほど抱きしめたかったか……」
サファイアブルーの瞳を酷く揺らし、熱い吐息を吹きかけながら、クロードは再びコレットの甘い唇を割り、深く深く舌を絡めて口内を貪った。
逃がさないように重なる男らしい体温と、包み込むような強い腕。
怪我を気遣いながらも、どこか必死で、コレットを欲してやまない情熱が全身から伝わってくる。
「ん……ふ……っ、んっ……!」
何度も交わされる熱い口づけと、全身を揺らす甘い愛撫。
先ほどまでの絶望や心の傷が嘘のように溶けて消えていき、コレットの心と身体は、クロードが注ぎ込んでくれる底なしの深い愛と甘いぬくもりでいっぱいに満たされていくのだった。




