5
マンションから十分も歩かない場所に、小さな公園がある。
平日の夕方ということもあり、人影はまばらだった。滑り台の上では鳩が羽を休め、風に揺れる木々の音だけが静かに響いている。
その中で、一人の少年がしゃがみ込んでいた。
年は六歳くらいだろうか。
黒髪で、幼い顔立ちには似合わない鋭い目をしている。
何かをじっと見つめたまま動かない姿が気になり、俺は自然と足を向けていた。
少年の隣まで行き、視線を地面へ落とす。
そこには一匹のハムスターが倒れていた。
腹には鋭いもので裂かれたような傷があり、小さな身体を震わせながら苦しそうに呼吸を繰り返している。もう長くは持たないだろう。そんなことは一目で分かった。
俺は少年を見下ろした。
「お前がやったのか?」
少年は黙って首を横に振る。
「見つけただけ」
そう言うと、両手でそっとハムスターを抱き上げた。
「野生のハムスターをどうするつもりだ?」
少年は少し不思議そうな顔をして、俺を見上げる。
「野生のハムスターなんていないよ」
その言葉に、俺は思わず口を閉ざした。
確かに、その通りだ。誰かが飼っていたものが逃げたか、捨てられたか。そのどちらかだろう。
「地面に埋めるのか?まだ生きてるぞ」
「違うよ!」
少年は抱きかかえたハムスターを見つめながら、強い口調で言った。
「じいちゃんのとこに連れて行くの!」
そう言い残すと、少年は勢いよく駆け出した。
俺はその小さな背中を見送りながら眉をひそめる。
「じいちゃん…」
この近くに動物病院なんてものはない。
だとすれば…。
「……あいつの孫か?」
独り言を漏らし、俺は少年の後を追い始めた。




