第7話 対人訓練1
「よし、集まったな。今からお前達には1対1の勝負で勝ち残りのトーナメントをしてもらう。ルールは簡単だ。相手に参ったと言わせるか、私が勝負あり、と判断すればそこで試合は終わりだ。」
「剣は木刀を使用する。剣でなくても、魔法でも拳でも、勝てるのならなんでもしろ。」
非常に内容はシンプルなものであった。【再現】の能力を見せることはできないが、スードにも騎士団の上に上り詰めないといけない理由がある。成績を1位で終えるために負けられない。
「まず第一試合はコルト対セルだ。準備をしろ。」
「「はい!」」
ベルトール教官の訓練の説明が終わり、緊張感を高めながら、訓練生初めての真剣勝負に挑むのだった。
◇
お互い剣先を向け合い、張り詰めた空気が場を支配する。
「それでは、試合始め!」
「どりゃあー!!」
号令の瞬間、先に動いたのはコルトだった。
真っ直ぐセルに向かって行き、剣を振りかぶる。
「バカなのか?」
セルは呆れてそう溢すと、洗礼された剣捌きでコルトの剣を受け流し、流れるようにそのまま反撃に出る。はずだった。
それより先に、コルトの蹴りが腹に直撃し、後ろに吹っ飛ばされる。
「くっ。1試合目の初撃でそれをするのか。小賢しいやつだな。」
「へっ!小賢しいじゃなくて器用って言ってくれよ!」
開始直後、一直線にセルに向かって振り下ろした剣は元々当てる気なんてなかったのだ。受け流される前提の剣撃。そして直後剣を自ら手放し、本命の蹴りを浴びせた。
それを悟らせないコルトの器用さと、1試合目のセルの固さを利用した肝の座った初撃だった。
「今の不意打ちで戦闘不能にさせれなかったことを悔やめ。」
一つ呼吸を置き、セルは再度構えを取った。
「いくぞ。」
瞬間、驚くほど静かに、そして驚くほど速くコルトに迫り、剣撃を浴びせる。
「うおぉ!…くっ…はっ…くそっ。」
辛うじてコルトは剣撃を受け流す。が、耐えることに精一杯だ。
しかし、流れる水のような剣撃はコルトの体力をみるみる奪っていく。そしてついに。
「くそっ!…どりゃー!」
止まることなく浴びせられる剣撃に耐えかね、無理やり攻めに転じようと反撃を試み、一歩右足を踏み込んだ。
「焦ったな。」
そう聞こえた瞬間、踏み込んだはずの右足は地面の感触を味わうことはできず、気づけばコルトの視界は地面の側にあった。
遅れて気づく。踏み込んだ足を払われたのだ。
そして慌ててセルを見上げたコルトの目の前には、木刀が突きつけられていた。
「勝負あり!」
ベルトール教官の声が響き、第1試合は終了した。
木刀を腰の鞘に直し、一礼を終え、2人とも皆の見ている場所に向かう。
「くっそー!最初はいけると思ったんだけどなー!」
普段の調子で明るく戻ってくるコルトだったが、圧倒的な実力の差を突きつけられたその表情には確かに悔しさが含まれていた。
「仕方ないよ。セル、すごい強かったし。」
ビルスはコルトを励まそうとするが、ビルスも緊張しているようで、手が少し震えていた。
「他人を励ます余裕があんだったら自分に集中しろよ。ビルス。」
背中をバンっと叩き、逆に励まされたビルスは「そうだね。ありがとう。」と、自分の頬を叩き、気合いを入れ直す。
「第2試合、ビルス対ドーラ。準備をしろ。」
「…!はい!」
正直、1番見たくない組み合わせだ。「頑張れよ。」「頑張ってね。」とスードとレフィリカはビルスに言葉を投げ、無事を祈る。
「大丈夫だ。もう震えてない。僕はやる、やるんだ。」
ドーラが相手なのだ。怖い気持ちは消えないが、そう自分を鼓舞し、ビルスは試合に挑むのだった。




