第10話 対人訓練4
一回戦目を勝ち残り、次に進むセル、ビルス、レフィリカ、スード、ニーナの5人はくじ引きで対戦相手を決められ、余った1人は問答無用で3回戦進出となる。
くじ引きの結果はセル対レフィリカ、スード対ニーナ、ビルスは余りになった。
そして始まる2回戦第1試合、セル対レフィリカ。
またしても透過を使い、忍び寄るレフィリカだったが、セルはなんと目を瞑り、音だけに集中。足音、呼吸音、木刀を振り下ろす音を聞き取り、見事タイミングを合わせきったセルは攻撃を弾き返し、隙ができたレフィリカの首元に木刀を突きつける。
「勝者、セル!」
試合終了の声が響いた。
「一度見た技は喰らわない。少しは工夫すべきだったね。」
確実な力をの違いを突きつけられ、レフィリカは2回戦敗退を喫したのだった。
そして2試合目、スード対ニーナ。
「あなたはさっきみたいには行かなそうねぇん。」
そう言ったニーナの周囲がぼやけ始める。「なんだ?」と様子を伺い、気づけば大量のニーナに周囲を包囲されていた。
「分身?にしても多過ぎるだろこれ!」
あまりの数に驚いたスードに、10数人のニーナが一斉に襲いかかる。
記憶にある体術を全て駆使し、混ぜ合わせ、背後からの斬撃、横からの打撃、遠くからの氷魔法に土魔法、多彩過ぎる攻撃にを全て避け、なんとか1回目の総攻撃を切り抜け距離をとった。
「ハァッ…ハァ……。あっぶねぇ。」
息を吐き、呼吸を整え、思考する。スピードはどのニーナも全く落ちていなかった。なら、威力もか?
そんなわけがない。そんな魔法それこそ強過ぎる力だ。
「「今のを全て避けるなんて、あなたとんでもないわねぇ。」」
声が何重にも重なり、2回目の総攻撃が始まる。
斬撃を避け、打撃を弾き返し…弾き返せなかった。
なんとニーナの腕がスードの木刀をすり抜け、体をすり抜けた。
「な、なんだこれ!?」
驚き、隙を見せた瞬間ニーナが目の前のニーナをすり抜け、強烈な蹴りがスードを直撃する。
「ぐぁ!」
ガードが間に合わず、直撃した攻撃はいとも簡単にスードを吹っ飛ばした。
「ぐっ…くそっ、いってぇ。でも分かったぞ。この大量のニーナは質量を持つ分身じゃない。幻影魔法だな。」
「そう。分かったのねぇん。でも分かったところで見分けつかないでしょぉ?」
そして本物はまたしても幻影に混じり、総攻撃を仕掛けてくる。
「いいや、見分けつく方法。あるぜ。」
そう言い切り、右手に闘気を貯め、近付いてきたところで、一気に右手を地面に振り下ろした。
その衝撃で地面は割れ、あたり一体に砂埃が舞う。
「お前が本体だな。」
木刀を持たず、後ろから氷魔法を発射しようとしていたニーナへと一直線に走り、慌てて発射した氷魔法を避けながら目の前へと踏み込んだ。その間、攻撃してきた幻影は全て無視だ。
「服が砂埃で汚れてるぞ。」
「あなた、むちゃくちゃねぇ。」
木刀を振り抜き、首前で寸止めする。
「勝者、スード!」
こうして第2回戦は終わりを告げた。
◇
第3回戦、進んだのは3人ということで、ビルスは試合決定、そしてセルとスードはお互いくじを引き、外れたものがビルスと戦うことになった。当たりは決勝進出だ。
「お、やったぜ!当たりだ!」
くじ引きの結果、スードは決勝が確定する。
「ビルス!頑張って決勝こいよ!」
そうビルスを鼓舞し、「さっきのがまたできる感じはしないけど、頑張るよ。」と言い残したビルスは試合へ向かった。
◇
「1回戦で見せた能力、使わないのか?」
多くの斬撃、打撃でボロボロになったビルスに、少し傷がついた程度のセルはそう問いかけた。
「ハァ……ハァ…、分からないんだ。さっきの、力の使い方が。」
自分が情け無い、と言った表情でそう返すと、セルは「フッ。」といやみったらしく鼻で笑う。
「それでは一回戦で敗退したドーラが浮かばれないな。流石に俺も同情する。あの状態の君を倒してやろうと思ったが、これでは続ける意味がないな。もう終わらせよう。」
目つきを変え、木刀を構える。少しの静寂が訪れた後、いつ動いたのか分からないほど、セルは静かに、自然に足を踏み出す。
木刀がぶつかり合い、交差する。
「ぐっ…くそっ!…はっやいっ!」
今まで辛うじて致命傷を防げていたセルの攻撃は、1度木刀がぶつかり合う度に、1段階、2段階とギアを上げていく。
そこから決着は一瞬だった。ビルスの木刀は弾かれ後ろに突き刺さり、対抗手段が無くなったビルスの首にはセルの木刀が突き付けられていた。
「勝者、セル!」
そうして3回戦は幕を閉じた。
「くそっ、なんで僕はこんなに弱いんだっ!」
悔しさを滲ませ、唇を噛みながらそう感情を表に出した。
そんなビルスを初めて見るものだから少し驚いたが、
「そんなに落ち込むな。ちゃんと戦えてたぞ。」
「そうだよ!あの能力のことはこれからちゃんと使えるようにしていこ?」
「そう、だね。ごめん。ありがとう。」微笑み、そう返してくれたビルスだったが、目に映る感情は暗いまま、端に座る。
「俺が仇をとってくるよ!任せとけ!」
そう言い残し、何でもこなす底の見えないビルスと、隙の見えない強敵セルとの決勝戦が始まるのだった。




