第17話 「対 香香背男 戦」
香香背男は、依り代の状態でも強かった。
蓬生はすでに戦闘不能。草野姫もHPで例えれば残り10パーセントを切っていた。今は長が何とか押さえている状況だった。
この男の力の根元は、どうもこの村の"現状"にあるようだった。成金となり、貪り化した村人が放つ私利私欲の気——この"負"の気を取り込むことで、香香背男は依り代の状態でも常に回復し続けている。
「おいおい〜、一対三で俺が勝つかぁ〜。なぁ?分かるだろぉ〜?俺が余裕な理由がぁ〜」
「……っ!」
「祈りだかマツリだか知らねぇが、それよりも"貪り"の力の方が遥かに強い影響と力を与えるぅ!なぜか分かるかぁ〜?貪りの方が"人が気を発しやすい"からだぁ〜!」
香香背男の声に、どこか陶酔したような色が混じった。
「これを扱えれば、誰でも思うがままにできるぅ! あぁ、"あの時"これを使えれば"あいつ"に付き従うことも無かったのになぁ〜!」
「建葉槌命か」
「あぁ!そうだぁ!」
バゴン!ドガン!
激しい交戦が繰り広げられていた。ただの二柱の戦いかと思うかもしれないが、どちらも"かみ"だ。神とカミの対戦。村が丸ごと戦場と化していた。
ひかりサイド―――
「ハァ、ハァ……なかなかやるじゃない……」
「当たり前だ。親分に近づく者は"消して"構わん。親分にも"絞めろ"と命を受けている」
ひかりは思ったよりも上手く戦っていた。二人いた眷属のうち一人はすでに倒れている。
「じゃあ、そろそろ本気を出すか」
「そうか、出してみろ!」
その瞬間、眷属が太刀を振りかざした。
ひかりは、動けなかった。
(! なんで、体が動かない!)
太刀は"妖刀"だった。刃を向けられた者の体の動きを封じる、呪いの刃。その切っ先がひかりへと落ちてくる。
(斬られる……!)
「!!」
森樹サイド―――
「……すまねぇ〜!もう勘弁してくれぇ〜!」
「あぁん?何ほざいてやがる。私は聖人じゃねぇのよ」
「……じゃあ、なんだよ……!」
「お前らの、敵だ」
ドガンっ!
森樹は子分を全員殲滅していた。
森樹サイド、勝者——
「久久能智神(久能智 森樹)」
内部―――
「……ハァ、ハァ。さすがぁ……山の神ぃ……」
バタン。
香香背男の体が倒れた。長が静かに前へ出た。
「今だ…。"御霊抜き(みたまぬき)"……できるか?かやひめ」
「……えぇ、できるわよ……」
御霊抜きとは、依り代から神の御霊を引き抜き、依り代としての効果を無くすことだ。
香香背男は、依り代となっていた男の体力が底をついたため、離れざるを得なかった。しかし、離れたとはいえ、依り代がそのままであれば再び戻ることができてしまう。そのために、依り代を無効化する御霊抜きが必要だった。
草野姫は儀式を行なった。戦いのあとでかなり疲弊していたが、どうにか成し遂げた。
内部、香香背男の失踪。依り代の御霊抜きにより、勝者——「大山津見神、草祖草野姫神、少名毘古那神(少 蓬生)」。
ひかりサイド―――
(あばよ。"天鈿女命")
「!!」
ガキンっ!
「……なんだ……!」
金属と金属がぶつかる音が響いた。眷属が目を見開く。
「...おい」
ギラリ―――
―――第18話へ続く。




