三十八
水鳥宮祭りの舞を終えた後、佐々芽と変装をして祭りを回った。友だちと祭りへ行くなんて小学生ぶりで、祭りへ行くことも全然なくなっていたので、久々だったが、とても楽しかった。
祭りが終わり、薺と水鳥宮祭りの後片付けを手伝った後、千鶴と合流した。千鶴は舞を褒めてくれ、この世界に写真はないけれど、その代わりに、たまたま会った学校の先輩に描いてもらったと、佐々芽とさくらの舞の絵をくれた。千鶴は、「どんなだったか気になるじゃん?」と言っていた。楽しかったし、上手く踊れなかったとは思わなかったので、どんなふうだったかはそこまで気にしていなかったが、先輩の描いてくれた絵はとても綺麗で、なんだかうれしかった。
三人で帰りの電車に乗って早々、佐々芽にバレたことを話すと、薺にはこっぴどく叱られたが、バレたのが佐々芽だったことでおそらく許された。つまり、他のツカサビトだったらまずいのだろう。
路面電車に三人で揺られ、最寄駅を降り、家へ歩く。家について中に入り、みんなでリビングへ行くと、
「あ、おかえりー。ん、このお団子おいし」
と、くつろいでいる金髪の男性がいた。奈々世は、この人に見覚えがあった。
『サプラーイズ。こういうのは形から入る方がいいかなと思って、ちょっとやってみたんだ。こんな感じであってるのかな?"狐の嫁入り"って……』
『あぁ……ごめんね。こんな真似したくなかったんだけど、まだ時間が必要なんだ。キミを代わりにすることを赦さなくていいから、どうか__』
(あの人だ__)
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ榊、貴様ッ!!!!!」
薺は、怒号を飛ばすやいなや、がちゃがちゃと今までの文句を矢継ぎ早に言い出す。
「あちゃー、こうなったら長いですなー」
(長くなりそうなのは、なんとなく分かる……)
薺のそこそこ長い説教が終わり、説教の間も終わっても穏やかな様子の榊。奈々世は、この人と会ったことがあった。そう、狐の嫁入りの時、隣にいた金髪の男性だ。奈々世は、「この人が自分をこっちの世界に連れてきた榊さんだったのか」と思った。
「それで、何故ここへ来た」
「久々に時間を空けられたから、キミに施した加護、また念入りにかけておこうと思って」
「加護……」
"加護"と聞いて、頭を捻る。頭の中に、先日、あやかしに殺されたと思った時、視界が真っ白になって無事だったことが思い起こされる。
「一回やばいって思った時なんか無事だったんですけど、もしかしてそれですか?」
「多分それかも。じゃあ、もう一度かけるね」
榊は自分の心臓あたりに手を当てて、目を瞑った。
「うん、これで大丈夫」
「使える能力って異世界干渉じゃないの?」
千鶴は、不思議そうに言う。
「俺にとっては、他の人はみんな異世界だよ。入ることのできない未知の世界」
「なるほどー。世界の解釈を広げて、そういうこともできちゃうわけか」
「そうとも言うかも」
榊は、柔らかく笑って同意した。
「それにしても、加護が発動するところ、見てみたかったなー。いつだったの?」
「学校で、千鶴たちの任務について行った時、あやかしに殺されかけて……」
「それは災難だったね……無事で本当に良かった……」
榊はそう言った後、一呼吸置き、
「千鶴ちゃんと同じ学校に行ってるんだ?」
と尋ねる。
「はい、まあ……」
「そっか。それはいいけど、さくらちゃんの代わりもよろしくね。佐々芽ちゃんと水鳥宮祭りの舞にも出ちゃったわけだし、一週間に一つとかから少しずつ始めてみたらいいと思うよ」
「何を言っているんだ。願いを叶える力など奈々世にはないのだぞ」
「でも、さくらちゃんの分野なら、多分人の力でもどうにかできるものもあると思うよ。三人で協力してなんとか頑張ってみて。俺も、さくらちゃんのためにできることはなんでもするから」
なんでもする__そう榊が言った瞬間、場の空気が少し重たくなった気がした。空気に臆さず、薺が口を開こうとすると、先に榊が声を上げた。
「じゃあ、そういうことで。そろそろ帰るねー。しばらくよろしく」
「は?帰るって、おい、待て!!」
引き留める薺の声に構わず、榊は一瞬で姿を消した。
「すまない……奈々世を帰らせるよう進言するタイミングを逃した……」
「いいよ。結構毎日楽しいし」
「そうか?ならば、良い、良くはないが……」
「ううん、いい。楽しいよ」
(ダンスをもっと学びたいし、母さんたちに会えなくなるのは複雑な感じするし、向こうで楽しみしてたこととか向こうにしかない好きなものもある。帰りたい気持ちがないわけじゃない。でも、今は、まだもう少しだけ__)
「楽しいならいいんじゃない?」
「……そうだな」
そう言って、和やかに微笑んでくれた二人に、奈々世も柔らかく微笑み返した。
第一部これにて完結です。ここまで読んでくださる方がいるのか分かりませんが、読んでくださった読者様、本当にありがとうございます。届かないと思いますが、途中まででも読んでくださった方にも、お礼を伝えたいです。読んでもらえることは決して当たり前のことではないので、毎日のように見つけて読んでくださる人がいることが本当に有難く、嬉しいです。いつも深く感謝しております。なので、毎話「読んでくださり、ありがとうございます。」とつけたい気持ちもあるのですが、くどいような気がしていて……最近になって、後書きを書く時に毎回伝えるようにすればいいのだと思いつき、実践しております。それとはまた別に、第一部が終わるという区切りまで来ることができたので、この場をお借りして、改めてお礼を申し上げました。
第一部では、奈々世が無条件に愛をもらう展開が続きましたが、そのターンは終わって、第二部では、第一部を受けて奈々世が成長していく姿を描きたいです(頑張ります)。また、ヨウキョウビトの契約についてやっと!触れたいと思います(序盤の薺と千鶴の言葉から回収までに時間がかかりましたが)。千鶴がどうしてヨウキョウビトになることになったのかも書けたら……!とは思っています。第二部では、ツカサビト数名、そして他のクラスメイトたち、(いつになるか分かりませんが二部中に必ず)三年生も全員出る予定です*。第二部が一番苦労しそうだと思っているので、更新がスムーズにいくか見通しが立ちませんが、もし上記の内容から第二部に興味が湧いたら、ふらっと訪問しに来てくださると嬉しいです。
第一部では毎日更新するようにしてきましたが、第二部からは、週に一回、数話投稿する形に変更しようか検討しています。ペースも見ながら、また考えます。明日は更新のお休みをいただき、次は13日に投稿させていただきます。1エピソードだけ投稿し、それ以降は13日の次の週に更新します。コンスタントに更新していきたいのですが、まだ第二部をどんどん書き進められそうな段階になく……申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。
第三部で完結なのですが、ゴールまで繋いでいけるよう、第二部も書いていきたいと思います。よろしくお願い致します。
*蓮・みーちゃんと呼び合っていた二人(最初に登場したヨウキョウビト)は、三年生なので出てきます。この回の冒頭の文にあった、絵を描いてくれた先輩も三年生なので出てきます。涼に、「小野寺の人の困ってる者は見捨てない精神は美徳ですけど、そんな甘い考え突き通してたら早死にしますよ〜」と声をかけた先生も、三年の担任なので出てくると思います。初任務の際に名前が出た、立川のいとぴ先輩は二年生なので出ません(二年生は第三部登場予定)。気になっている方がいらっしゃるか分かりませんが、一応書いてみました。




