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二十六

 林の中のどこか遠く、正確には結界内の中でみんなと遠く離れているであろう場所で、奈々世は拘束を解かれ、乱雑に地面に投げ捨てられる。

 拘束を解いて乱雑に地面に投げ捨てたのは、あやかしだった。おそらく拘束して奈々世を連れ去ったのも、今目の前にいるこのあやかしだろう。それは人のような姿をしているので、一瞬人かと思ったが、おでこに目がついていたのであやかしだと分かった。人との違いはそれくらいで、厚い前髪でおでこを覆ってしまえば、あやかしだとは気づかないと思う。


「ヨウキョウビトに混ざって何をしている」


 みんなと切り離された不安や、どんなあやかしか分からないが故の恐怖のせいで、すぐには上手く口を開けなかった。


「……答えないのか」


 あやかしの視線が鋭く、威圧的に変わって、奈々世はそれに身の危険を覚えた。答えないと何か恐ろしい目に遭うのではないと(おのの)きながらも、なんとか喉から声を絞り出す。


(ヨウキョウビトに混ざって何してるって言われても、分からない。してるのは、勉強とかくらい……)


「分からない、です。勉強はしてます」


「分からないとはなんだ。何をしていると聞いている」


「えっと……色々あって、ヨウキョウビトの学校に通ってます」


「色々とはなんだ」


「それは……異世界から来たから?」


「異世界?」


「はい」


「異郷の者であると言うのか」


「はい」


 自分なりにあやかしの質問に答えていくと、あやかしは急に黙り込んで、険しい顔で、奈々世をじいっと見つめ続けた。しばらくすると、あやかしは静かに目を見開いた。


「……目が良い自信はあるが、鼻が利かないのはまずかったな。あやつの力を手に入れることができるかもしれないと思ったんだが、ただの人間ならば、さて、どうするか。だがしかし……そうだな。一思いに殺して喰べるか、部位を一つずつ削ぎ落として喰べるか……」


 奈々世は、身に差し迫った恐怖に、固唾をごくりと飲み込んだ。

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