十二
学校へ戻って職員室を覗くと、岡先生がもう出勤していたため、報告をするために、全員で岡先生のそばへ行く。
「おはよう。朝早いわね。任務に行ってきたの?」
「はい、無事祓えました」
「そうですか、有難うございます。お疲れ様。祓ったのは、千鶴さん?それとも、郁さん?」
「俺です」
と郁は、半歩前に出た。「これです」と、先ほどあやかしに当て、あやかしが消えた後に回収していた石を岡先生に見せる。奈々世はそこで初めて、石を近くで見たが、石には何やらきらきらとした粉で、見たこともないような模様が描かれている。
「確認できました。教室に戻って、授業が始まるまでゆっくりしてください」
みんなで協調性の取れていない「はい」という返事を岡先生に返し、職員室を後にする。
廊下に出た際、奈々世は、郁が手にしている石をじっと見つめた。あのあやかしが、体の何倍も小さな石に収まってしまったというのが不思議だったのもあるが、石に描かれた模様が気になっていた。ユニークな模様だったので興味深く、思わず見入ってしまう。
「何」
「あ、変わった模様だなって」
「あやかしに分けてもらった皮膚でできた粉で、石に決まった模様を描くと、あやかしを石に封印できる。だから、石に模様がある」
「皮膚……?」
「……うちが契約してるあやかしは、脱皮みたいなのするから、そのいらなくなった皮膚もらって粉作ってる」
「そうなんだ」
「さっき、あやかしに近づきながら描いてたの見なかった?」
と千鶴に尋ねられ、思い返してみると、確かに、郁の指先が石に触れながら、丹念なのに素早い動きをしていたのを見たことが、頭に浮かぶ。
「あー、見てた」
「結構難しそうだよね。石に模様描くとか」
「慣れれば大したことない」
「それより、その石ポケットかどこかへしまってくれない?」
美愛は、あやかしが封印されてる石というだけでも駄目なのか、渋い顔で、自分の目に見えないところにしまうよう郁に頼む。郁は、無言で、その石を制服のポケットへ入れた。
「その石どうするの?」
「持ち帰る。石はあやかしが喰べるから」
「そうなんだ。あやかしにも、食物連鎖?みたいなのあるんだね」
「ちょっと!気分の悪い想像が浮かぶようなこと言わないでよ!」
「え、ごめん」
「奈々世は悪くないよ。食物連鎖、弱肉強食は、生き物が逃れられないものだし」
「聞きたくないぃ……!!」
と美愛は耳を塞ぐ。あやかしがあやかしを喰べるというグロテスクな場面を想像したのか、はたまた昔攫われてた時などにそういった場面を見たことがあるのかは、分からないが、美愛は顔のパーツ全部にぎゅっと力を入れた。
「あやかしがあやかしを喰べるとか割とよくあることだから。人間食べることもあるし、そういうもん」
「いやぁぁ」
耳を塞いでいても千鶴の声は聞こえてしまったのか、情けない悲鳴をあげた美愛に、奈々世は、「なんか、ごめん」という気持ちになった。
門倉家が使っている粉は、例えるなら、ラメ入りのクレヨンを砕いたようなものをイメージしています。門倉郁は事細かく丁寧に説明をしてくれるような人ではないので、これでは伝わりづらい部分があるのではと思い、ここで補足させていただきました。




