十
千鶴と話しながら帰り、それぞれ自室でゆっくりしてしばらくの時間を過ごした後、いつの間にか帰宅していた薺に夕食だと呼ばれ、リビングで席に着いた。三人で夕食を食べ始めるなり、いつもの調子で、口論がたまに混じりながら薺と千鶴が話し始める。奈々世は、それをぼんやり聞き流しながら箸を進めていた。
「それで、奈々世、学校はどうだった」
「え?」
奈々世は、思わず持とうとした食器を滑らせそうになるくらい驚いて、返事をした。
「何を惚けているんだ」
「あ、ごめん、学校どうだったとか聞かれるの初めてでびっくりした」
「親御さんに聞かれたことはないのか?」
「……うん。学校の行事とか授業参観とか、ほとんど来てくれたことなかったし、多分学校のこと興味なかったんだと思う。そもそも家にいること自体少ないし」
学校行事も授業参観も、親の参加が必須のもの以外は、来てくれたことがないのは事実だ。それなのに、自分で言っていて、鼓膜の外に並べられた言葉たちに、心が浅く針を何本か刺されたようにジクジクさせられる。
それに、きっと興味がなかったのは、学校のことではなくて別のものだけれど、それは易々と口に出せるほど奈々世にとって小さなものではなかった。
「そうか……奈々世の親の教育方針がどうであれ、ここでは聞かせてくれ。保護者は、保護下にある人のことに関して、大きな責任がある。それ故に、学校生活のことも、ある程度は把握しておくべきだと考える。私は、一応ここでは保護者だからな」
「分かった。学校は、あやかしの勉強とか普通の勉強した。祓うのにもついていった」
「そうか。多様な経験ができたようで、何よりだ」
「うん」
「はいっ、わたしも聞きたい」
「貴様は一緒に行ったのだろう」
「うん。でも、奈々世の感じたことは、奈々世にしか分からないし、教えてもらわなきゃ何も分からないままだよ。それに、午前の授業受けられなかったから、授業の内容聞きたいし」
「それは、話を聞いた方が良いな」
(やばい、内容答えられるかな……)




