第15話:俺は、この屋台で生き直すと決めた。
ある日、屋台の仕込みをしていた時。
「おまえさん、高級食材に頼りすぎじゃないかね?」
オヤジさん――先代の屋台の店主――がそんなことを言ってきた。
「ここは『屋台』なんだ。あまりお金のない人も来る場所だ。むしろ、そういう人たちの場所、と言ってもいい。もっと、安くて満足してくれる料理を目指してみてくれんか」
俺は、オヤジさんの言葉にうなだれた。俺は、もう、高級ホテルの総料理長ではない。屋台の料理人なのだ。屋台に来る客層を考えなければならなかった。それに悩み、克服できてないことを見透かされていた。
高級食材を使えば、確かに美味しい料理を提供するのは容易い。しかし、それでは、値段の面で、どうしても客を選んでしまう。それでは「この屋台」は成立しないのだ。
俺は、俺自身の「驕り」を恥じた。
「オヤジさん。すいませんでした。私は、まだ、『ホテルの総料理長』であったことを忘れられてなかったです」
オヤジさんは言った。
「いや、その気持ちを忘れる必要はない。ただ、その意識を『屋台の客』にも合わせられることはできるだろう、ということじゃ」
オヤジさんは笑った。
「お前さんの料理の腕は、屋台料理でも発揮できる。それを試しなさい」
オヤジさんの言葉は優しかった。
「ここで、この屋台で、もう一度、俺の料理をやる」
俺は、改めて、そう思うのだった。
次回予告:
ホテル時代のやり方が、ふと頭をよぎる。
だが、俺はもう屋台の店主。やり方を変えなければいけなかった。




