王国攻防戦2
ーーベルマー王国中央魔導炉とは
大魔大戦時に聖騎士マルクの騎士団に所属し、魔導人間の身で、エルフよりも強大な魔力を有していたハインツ・ストーカーによって建造された物である。
炉には魔硝石を、何らかの方法で精製したと思われる「エーデル・シュタイン」と呼ばれる魔石が納められている。
この魔石のおかげでベルマー王国は絶えず魔力による結界を張ることが出来ていた。
エルフが隠れ住んでいると言われるスー地方に近い位置にありながら、王国がエルフに侵攻されなかったのは防御結界があるからに他ならない。
だが…その防御結界は呆気なく消えてしまう。
国王の演説中に魔導炉の出力は下がり始め、結界が無くなると同時に、演説を行っていた広場から爆発と共に悲鳴があがった。
演説を聞こうと集まっていた住民は、たちまち混乱状態に陥り、叫びながら我先にと逃げまどう。
混乱を制止しようとした騎士団も人の波に押され、陣形を立て直すどころではなかった。
街中には次々と火の手があがり、霊子体から姿を実体化させたエルフ達は、容赦なく住民達を殺戮していく…街中を警護していた騎士団達も応戦したが、市民を守りつつエルフを倒す事など出来るわけもなく、エルフとの戦闘で街の被害は増す一方であった。
サイフォンの魔導小隊は街の中央を警護していた。
次々と街のいたる所が戦場となる中、騎士団と連携し市民を避難させようと尽力していたが、魔導人形の共振会話が魔導騎士団本部や壁の外にいるソル達にも通じない状態では、市民を避難させる場所を確保する事もままならなかった。
サイフォン
「野郎ーっ!」
魔導人形の両腕に装着された量産型より一回り大きなブレードを振りかざしエルフを両断する。
エルフの胴体は2つに分かれて散らばった。
サイフォン
「くそっ!…兵士級とはいえ数が多すぎる!オメーら!パニクって市街地で魔導砲なんかブッぱなすなよ!市民の避難が完了してねぇからな」
「隊長!もうこれ以上は……我々の魔導人形の数が少なすぎます!無人魔導人形隊は…全滅したようです。我々も城に後退しましょう!」
サイフォン
「俺達が下がったら誰がコイツらの相手をするんだよ!?壁の外からはエルフは来てねぇ…ソル達が食い止めているんだ。俺達は…」
怒号を飛ばした部下の魔導人形の操縦席を氷柱が貫く…直撃を受けた魔導人形は煙を出しながら、ゆっくりと仰向けに倒れた。
サイフォン
「ザイル!?…くっそっ!テメーらァーー」
氷魔法を放ったエルフは、向かってくるサイフォンの魔導人形を見るや、建物の陰に隠れながら逃げ出した。
サイフォンがエルフを追撃しようとした時、白銀騎士団の衣を纏った 騎士が馬に乗って魔導人形に近づいてきた。
「魔導人形隊のサイフォン隊長ですね!?私は白銀騎士団の者です!ハート・スティング副隊長からの指示
を伝えにきました。魔導人形隊は中央広場から城までの行く道の確保にあたられたし…です!」
サイフォン
「…アレを使って市民を避難させるつもりか。城の安全が確保出来てるかは怪しい所だが…外の様子が分からねぇ今となっちゃあ、それが一番いいかもしれねぇ…了解した!残った魔導人形を使って中央広場を防衛する!」
「我々は市民を広場に誘導します。急いで下さい!こうしている間にも被害は増えています」
騎士団の男は馬を走らせ市民に呼び掛けを始める。
サイフォンの部隊は中央広場に向かい走りはじめた…
だがこの時、サイフォンは知らなかった。
…王国の上空に竜が近づいている事を
…そして
ーーベルマー城のエントランスーー
街全体を見渡せるエントランスの一角が黒く歪んでいく…そこに金色の瞳を持った黒い甲冑姿の女が現れた。
女はエントランスから燃えていく街全体を薄く笑いながら氷のような鋭い眼差しで見つめている。
「もうすぐ…ね。さあ…抗いなさい…人間達。アナタ達が足掻けば足掻く程、魂は強く…そして歪んでいくわ。そして彼の魂が黒く染まる時…フフフ」
女は綺麗な風景を眺めるように街を見つめていた。




