王国攻防戦1
ソル
「定刻になった…今より陛下の演説が始まる。各員は異常を発見し次第、直ぐに報告せよ。ライオットの索敵だけに頼るなよ」
指示を受けた魔導人形達は隊列を組み、持ち場の警戒を強化する。
各小隊にはスイーパーを簡易量産した無人機体が1体ずつ配備され、それを遠隔操作する術者が配置されていた。
アリーシャ
「こちら外壁右翼担当の第4小隊…異常無し 」
カーク
「こちら外壁左翼の第5小隊…異常無しッス」
魔硝石の共振会話で隊長達はソルに報告をする。
報告を受けたソルは、自分の機体の動きを確かめると一息ついた…後方にいたソルの小隊の魔導騎士は、その様子を見て心配そうに話しかける。
「あの…ソル隊長。その機体…本当に大丈夫なのですか?」
ソル
「問題はない…心配するな。それより警戒を怠るなよ」
操縦席の計器類を見つめながら、ソルは団長との会話を思い出していた。
王国警備任務2日前ーー魔導人形第3格納庫ーー
ソル
「……これは」
団長に呼び出されたソルの眼前には、白銀色に輝く魔導人形が立っていた。
それは忘れようもない機体…オスカーが搭乗していた黒騎士と呼ばれた魔導人形である。
魔導刀によって斬り落とされた右腕と左足が、何事もなかったように修復されている事にソルは驚いた。
「…驚いただろう?斬り落とされた部位は、我々が手をつけずとも自己修復したのだ…たった1日でな」
ソル
「魔導人形には自己修復機能が備わってはいますが…それは多少傷ついた装甲等を修復する程度。機体の一部が再生するなどは聞いた事がありません…一体これは」
「…私にも分からん。ただ1つ言えるのは…この機体は他の魔導人形とは桁が違うという事だけだ…あらゆる面でな」
細巻を口にくわえて煙をふかしながら黒騎士を見上げる団長を見ながら、ソルは話を続けた。
ソル
「これを運用すると言うことでしょうか?」
「察しがいいな…その通りだ。お前に、この機体を任せようと考えている」
ソル
「性能が飛び抜けているのは認めますが…暴走し、その原因が分からぬ魔導人形を運用する必要性が、今回の任務にあるとは思えません…自分は承服いたしかねます」
団長はソルの意見を細巻をくわえながら黙って聞いていた。
そして暫し沈黙の後、団長は魔導人形を見ながら呟くように話をする。
「今度の警備任務…お前はどう思っている?」
ソル
「…配置について疑問はありますが」
「魔導人形は騎士団や術者との連携をとりつつ、運用する事で能力をより発揮する。だが、今回は城壁の南側のみ騎士団を配置し、魔導人形のみで城壁の外側を警戒する事になった。何故このような布陣になったと思う?」
ソル
「……魔導院…ですか?」
細巻の灰を落としながら、団長は険しい表情で話を続けた。
「その通りだ…我々や騎士団の反対意見を押しきって…な」
ソル
「我々が魔導院から嫌われている…だけではなさそうですね。これには何かあると?」
「分からん…だが最近、魔導院の様子が妙だとは内偵から報告を受けている。どうやら中央魔導炉に頻繁やに出入りしているらしい…炉の調整をしているわけでもないようだ」
「私の取り越し苦労であればそれでいい…だが、何かが起きて動いたのでは遅いのだ…使えるものは使っていきたい。たとえそれがコイツであってもだ…」
団長の言葉を遮るようにソルは反論する。
ソル
「もし、この機体が暴走してしまったら?」
「…元々コレは、お前の専用機として博士が作っていたのだ。暴走に至ったのは、違う魔導騎士を乗せて調整作業をした結果であると私は思う。もし暴走した時の対処だが…」
団長は魔導人形の胸のあたりを指差した。
「技術班に取り付けさせた装置がある。外部から魔硝石の出力を操作出来るものだ…勿論、操縦席からも装置を作動させる事が出来る。まぁ…簡易的なリミッターのようなものだ」
ソル
「暴走する前に出力を抑え込んでしまえば対処出来ると…?そう上手くいくでしょうか」
苦笑しながら団長はソルを見る。
「心配事が尽きないようだな。よろしい…これは命令だ。ソル1等魔導騎士…貴様はこの機体に乗り警備任務にあたれ。異論は任務が終わってから聞くとしよう…以上だ」
ソル
「…了解しました」
細巻を吸い終えると団長は格納庫の出口へと歩きだした。その後ろ姿をソルは敬礼をしながら見送った。
ーーーーそして現在ーーーー
「ソル隊長…ソル隊長!」
小隊の魔導騎士の呼び掛けに放心状態だったソルは我にかえる。
ソル
「…なんだ?何かあったのか」
「陛下の演説が聞き取れなくなりました!魔硝石での共振会話が……こ…これは!?ま…魔導炉の出力が落ちています!80…70…65…王国の魔導結界が維持出来なくなります!」
ソル
「魔導炉が!?一体どういうことだ…各小隊は索敵の結果を報告せよ!」
カーク
「こちらカーク!こ…これは!?…自分の隊はエルフの反応を捕捉しました!場所は…王国…内部」
ソル
「なんだと!?」




