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真実

ソルは操縦席を降り、オスカーの遺体に歩いて近寄る。

両目を開けて倒れている遺体の上半身を起こすと、弔うためにオスカーの両目をそっと閉じた。

静かに遺体を地面に横たわせるソルの背後から、突然、拍手の音が鳴り響く。


…そこにはダークエルフの男が立っていた。


灰色の肌で左目には傷があり、ベルマー王国の紋章が縫い込まれた騎士の衣を纏っていた。


「流石はソル・スティング殿…噂に違わぬ見事な腕だ。魔導人形の戦いを充分、楽しませて頂きましたよ」


ソル

「何者だ…何故、我が国の紋章が入った騎士の衣を着ている。騎士団にダークエルフはいないはずだ」


ダークエルフはソルの問いに丁寧に御辞儀をしながら答えた。


「申し遅れました。私はハウンド…兄上から聞いていると思いますが、ハイエルフを捕らえた者です。その褒美に、陛下から特例でベルマー王国の魔導院直属の騎士にして頂きました。以後、お見知りおきを…」


ソル

「ハイエルフ…そうか…傭兵団の」


ハウンド

「左様で御座います。依然は傭兵団ヘルハウンドの隊長を勤めていました。貴方の噂はかねがね聞いていますよ…ソル・スティング隊長。「持たざる者」でありながら異例に騎士団に入隊した人物と……ですが」


ハウンドは笑顔になり握手を求めて近寄ってきた。

ソルも立ち上がり握手に応えようとしたが…ハウンドはソルの懐に素早く入りこみ、人差し指で「みぞおち」を突く。


ソル

「っ!?…何の真似だ?」


ハウンド

「甘い…と言っているのですよ。何故、そこの青年が地面に降りた時に始末しなかったのですか?…もし、彼がナイフを隠しもっていたら…このように刺されていたかもしれない」


ソル

「…抵抗する意志は感じられなかった。殺す必要はないだろう。そうか…これは、お前がやったのか…」


ハウンドはソルから離れるとシュバルツリッターを見上げる。


ハウンド

「もしそうなら貴方の命を救ったのですよ… 感謝して欲しいものですな。あぁ…それと団長さんに言伝をお願いしてもよろしいかな?「中の物は我々に返さなくていい」とね」


ソル

「…中の物?」


反応をうかがっていたハウンドは、確信したように笑みを浮かべると話しを続ける。


ハウンド

「やはり知らされていないようですな。まぁ…いいでしょう。さて…私は魔導院に戻りますので、このあたりで失礼いたします」


踵を返すと騎士の衣を風になびかせながら、ダークエルフは去っていく。

ソルは、その背中を見ながら「中の物」の意味を考えていた。

自分が知らない事を何故、部外者である魔導院の者が知っているのか?

そして、このシュバルツと呼ばれた魔導人形は何なのか…



半壊した格納庫の瓦礫や負傷者・戦死者の対応を終えたソルは、ハウンドの言葉を伝えるために団長室に向かった。



ソル

「…1等魔導騎士ソル・スティング。入ります」


扉を開き、椅子に座って此方を見ている団長に敬礼をするソル。

団長は片手を上げて答えると、手にした書類に目を通しながら話してきた。


「あぁ…ご苦労様。軽く見積もってみたんだが…格納庫の半壊、魔導人形の損害、すぐに元通りとはいかなそうだ。議会が修復費用を出してくれるかどうか…頭が痛くなるよ。ハハハ」


投げやり気味に話す団長に、ソルは真剣な眼差しで話した。


ソル

「団長…全てを話して頂きたい。あの搭乗員の事…そして、魔導人形の「中の物」とは一体なんの事ですか?」


沈黙が暫く続き、団長は書類からソルの方に向くと、手を組んで溜め息をついた。


「…魔導院がいたのか?」


ソルは頷き、出会ったダークエルフの事を話した。

団長はソルの話しを聞き終わると、椅子から立ち上がり、部屋の片隅を見ながら話す。


「…ではお前には話しておこう。いや…いずれは私か博士が話そうと思っていた事だ」


ソル

「…博士が?」


「あの青年はオスカー・ヴァインズと言う。彼は魔導騎士養成所ではなく、博士の下で操縦技術を学んだ…非合法な方法でな。彼は、あの魔導人形の為だけに調整された魔導騎士だ。お前が知らないのは、そういう事だからだ」


団長は手に持った細巻「煙草」に火をつけると、天井に向かって煙を少しずつ吐き出した。


「…あの魔導人形には特殊な魔硝石を使用している。博士は言っていた…これは、お前が捕らえたハーフエルフの魔硝石だ…とな」


ソル

「な…?それでは」


「勘違いするな…私達が取り出したわけではない。その魔硝石は博士の研究室に置いてあったそうだ…時を同じくして、魔導院から通達があった。捕らえたハーフエルフの娘が魔硝石を取り出されて死亡したとの報告がな」


ソル

「…だれが、そんな事を」


「それは分からん。ただ、現在の魔工技術では、その魔硝石を取り出すのは不可能だったそうだ。私達は、手に入れた魔硝石を魔導院に知らせる事なく、魔導人形に組み込み実験を行った…そして今回の騒動が起きた」


煙をくゆらせていた団長は、灰皿に細巻を押し付けて火を消した。そして、クロイツと呼ばれる高級茶葉を使用した紅茶を飲み干す。

再び椅子に座った団長は、話し始めた。


「魔導院は私達が、例のハーフエルフの魔硝石を使用していた事に気づいていたようだな。まぁいい…そのダークエルフの話が本当なら、私達で魔硝石は活用させてもらう事にしよう。…以上だ。ソル隊長…何か質問はあるかね?」


ソル

「…いえ」


「お前も少し休んだ方がいい。後の雑務は他の者にやらせるよう手配する…色んな事がありすぎたからな」


敬礼をして自室を出ていくソルを、団長は頷きながら見送った。




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