死にゆく者
正月中は調子良ければ、このペースで書いていこうと思います。
仕事が始まったら一週間に一度となりますが…
アリーシャ
「急いで博士を救護室に運べ!両腕が粉砕骨折している。魔導院からの治療班に回復させろ!」
ソルにスラッシャーを渡したアリーシャは、ソルが乗っていた量産型で博士と共に魔導騎士養成所に着き、訓練兵に博士を治療させるように指示を出した。
異常警報が発令された為、訓練通りなら魔導院から応援部隊が来ているからである。
指示を受けた訓練兵は俯きながらアリーシャの問いに答えた。
「…それが…魔導院から応援部隊が…来ていません」
アリーシャ
「何だと!?…どういうことだ!?すぐに応援部隊を来させるように魔導院に打診しろ!怪我人が…」
「その必要はない!アリーシャ2等魔導騎士!」
話しを遮るように大声を出した者がアリーシャの背後から近づいてくる。
その人物は魔導騎士団最高責任者のハルであった。
アリーシャ
「…団長。それはいったいどういう事でしょうか」
「博士の身柄は私が預かろう…この件はなるべく身内で処理したいのでね。魔導院からの応援部隊も私が断ったのだ」
アリーシャ
「な…戦死者も出ているのですよ!?我々だけでは…」
語気を強めて訴えるアリーシャに団長は睨みつけながら答えた。
「アリーシャ二等魔導騎士…貴様は部屋に戻る事を命ずる。後は私が指揮をとる…復唱しろ!」
アリーシャは少し顔を俯きながら復唱し、鋭い目つきで団長を睨みつけながら敬礼をした。
自室に戻るアリーシャを見送りながら、団長は溜め息をつく。
「気持ちが解らんでもない…だがこの件は外部に漏れてはいかんのだ。博士のためにも…な」
一方、ソルとオスカーは互角と呼べる戦いを展開していた。
ソルは両手に魔導刀を持ち、オスカーが放ったランツェーフランメを次々に斬り落としていく。
「遠距離戦じゃあ埒があかねぇようだな…このシュバルツリッターの他に新型機があったとは驚きだぜ……だがなぁ!」
オスカーは両手の甲から鋭い爪を出し、ソルに襲いかかった。
魔導刀で爪による攻撃を防いだが、勢いを殺す事は出来ずに後方に飛ばされてしまう…オスカーは確信したように得意気に話しをしてきた。
「思った通りだ…駆動部分に装甲が付いていない軽量機じゃあ、俺と接近戦は出来ねぇよ。一撃の重さが違うからな」
ソル
「…どうかな?軽量機だけにしか出来ない事もある」
低い姿勢になり魔導刀を構えながら挑発するソルにオスカーは叫びながら走っていく。
「そういうのをなぁっ!根拠のねぇ強がりだってんだよ!」
右手の爪で機体を引き裂こうと大振りに振りかぶるオスカーに対し、ソルは構えたまま動かない。
右手が振り下ろされる刹那、ソルはオスカーの右脇を凄まじい速度で通り抜けた。
直後に大きな物が地面に落ちた音がする。
それはオスカーの右腕が地面に落ちた音だった。
「な…なんだと!どういうことだ!」
魔導刀をしまったソルはオスカーに振り向いた。
ソル
「…たしかに俺の機体は軽い。出力もお前の半分以下だろう。だが、お前が魔導人形であるかぎり俺にも勝機があったということだ」
「魔導人形だから…だと?」
ソル
「どんなに装甲が頑強でも魔導人形であるかぎり、駆動部分は必ず脆くなる…この魔導刀で装甲の間を通せば切断することは容易い。相手の勢いも利用すれば尚更だ…」
「くっ…まだだ!まだ終わらねぇっ!」
残った左手でランツェーフランメを放ちながらソルに向かっていく。
ソルは放たれた光の束を魔導刀で弾き飛ばすと、オスカーの振り下ろされた左手をいなし、左足を切り落とした。
オスカーは残った左手と右足で四つん這いになる。
有らん限りの声で叫ぶオスカーだったが、完全に勝敗が決したと理解すると、魔導人形の装甲が変化していき元の姿に戻る。
装甲の色も黒から輝く白銀色に変わっていく。
暫くすると操縦席が開き、青年が地面に降りてきた。
ソルも攻撃する意志が無い事を示す為、魔導刀を捨てて操縦席を開きながらオスカーに歩み寄る。
オスカーはただソルの魔導人形を見上げていた。
「この場面…シュバルツの中で見た。そう…あいつがソコで止まって…俺は」
ソルが歩みを止めたその時、オスカーの頭を黒い閃光が貫いた。
オスカーは何も言う事もなく膝から崩れ落ちる。
オスカー・ヴァインズは自身が見た未来を変えることなく死亡したのだった。




