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会話

ソルはエミリアに近づくと彼女に紙と筆を渡した。


ソル

「筆談…だったな? さっそくだが時間が無い。質問させてもらうが…いいかな?」


微笑む顔で頷く彼女を見ながら、ソルは話を続ける。


ソル

「魔導人形の起動試験中に俺は意識を失った…だが、意識を失う前に君の声がした…「貴方は未来を見た」と。…あれは君の力によるものなのか?」


エミリアは筆を走らせソルの問いに答える。


「あの力を発現させたのは私です。あなた方が魔導人形と呼ぶ物の中にある魔硝石を共鳴させて起こした現象です。複製されたものでは不可能ですが…ソル隊長の起動させた人形には本物の魔硝石が使われていましたので」


ソル

「…たしかに俺の乗った魔導人形はオリジナルが使われていたが、一介のハーフエルフの君に、はたしてそんな事が出来るものかと疑問が出てくるのだが…」


ソルの答えにエミリアは服のボタンを外して胸板を見せた。彼女の胸の中心には縦に縫った跡が痛々しく残っており、縫い目の間からは淡い緑色の光が漏れだしていた。


「私はエルフに捕らえられ人体改造されたハーフエルフです。私の胸には複数の魔硝石を合成したものが納められています。心臓などの生体機能を殆ど取り除かれ、魔硝石の力だけで私は生かされています。魔硝石は、いわば私そのもの…共鳴させる事は難しくはありません」


ソル

「これは…! これではまるで…作られた生命体……あ……いや…すまない…」


エミリアは服を元に戻すと顔を横に振り筆談を続ける。


「気になさらないでください。貴方の言う通りに私は神が作った生命とは、もはや言えないでしょう…エルフ達は人間と自分達の交配により魔硝石を持って生まれるハーフエルフの研究をしていました。私はその研究によって産み出された副産物です」


ソル

「そんな事をされていたのか…いや…人間である俺が同情する資格も無い…か。我々も君らハーフエルフに対しては魔硝石を求める為に数多くの非道な事をしてきた…自らの欲や富の為にな。それはこれからも…続く事だろう」


一呼吸おいてソルは更に質問を続ける。


ソル

「話を戻そう…あの未来を見る力は君の魔硝石が作り出した能力でいいんだな?」


エミリアは頷き微笑んだ。


ソル

「…何故、エルフは君のような能力のあるものを斥候に出したんだ? 未来を見る能力は奴等にとっても貴重なものだと思うのだが」


「エルフに捕まっていた時は、未来を見る能力があると言う事を隠していました。彼等は人体改造された魔力が高いハーフエルフとしか私を認識していなかったのでしょう。斥候に出された理由は…私が長く持たない体だと分かったからです」


ソル

「…それはどういう事だ?」


エミリアは筆を取り、少しうつ向きながら書き始めた。


「私の体が魔硝石の魔力に耐えられなくなったのです。未来を見る力の代償…この魔硝石を埋め込まれてから、常に私の体は強力な魔力に蝕まれていました。私の命は…あと数日と無いでしょう」


ソル

「……最後の質問だ。俺は…意識を失った時に見た夢の中で君に会った。その夢の中で俺は…狂気にとらわれ、罪の無いダークエルフ達を皆殺しにしていた」


椅子に座ったソルは、自分の震える両手を見て話しを続けた。


ソル

「 とても夢とは思えない生々しい感触を覚えている。俺は…逃げ回る村人を魔導人形で次々と殺していった。子供…老人…見境なく…そして、とある村で青年と娘にあった。娘に憎悪していた俺に青年が立ちはだかり…君が現れ…そこで夢の記憶は途切れている」


目を閉じながら顔を左右に振り、自嘲気味にソルは話しを続ける。


ソル

「馬鹿馬鹿しい事だとは思うが…俺には…この夢が現実になってしまうのではないかと…そう思っている。…君は未来が見えるのだろう? これは…俺の未来なのか ?」


「申し訳ありませんが…その問いには私からは答えられません」


ソル

「…私からは? 他に知っている者がいるような言い方だな」


「その夢の中で会った青年と貴方は、この世界が変わる為に大きな役割を背負っています。それは神話と呼ばれる時代が終わりを告げた時に起こった出来事を復活させるものでしょう」


ソル

「どういう事だ? 神話だと…?」


エミリアが文字を書き始めるのと同時に部屋の扉が勢いよく開く。兄のハート・スティングと高位の魔導服に身を包んだ男が部屋の中に入ってきた。


「これはこれは…誰かと思ったらソル・スティング魔導騎士殿ではないか。御兄弟揃って捕虜のハーフエルフに何用ですかな? 兄のハート副団長ならともかく…貴公のような魔力を持たぬ者が魔導院に出入りされては困りますな」


ハート

「ラディッシュ魔導議員…このハーフエルフは我が弟ソルが捕らえたものです。少し話をする位なら構わないと思いますが?」


魔導議員と呼ばれた男はフンっと鼻を鳴らし見下した目でソルを見る。


「私は魔力を持たない人間が魔導院にいる事に対して言っているのだ。ここは魔導を追究する場所である。子供のような人形遊びが趣味の人間が立ち入って良い場所ではない!」


ハート

「なんだと……貴様…言わせておけば」


ソル

「兄さん!やめろ!」


男に詰め寄ろうとした兄を制止するソル

ハートは歯を食いしばり怒りの表情で男を睨みつけていた。


「ハート君…クズとはいえ身内が馬鹿にされるのは嫌なのか?君も苦労するな…いっそ私のように一族から抹消したらどうだ。ええと…今はアリーシャとか名乗っていたか…元気でやってるかね?

あのゴミは」


ソル

「………くっ!」


さらに怒りで震える兄を押さえながら冷静にソルは答える。


ソル

「もういい…俺が出ていけば済む話だ。許可無しで魔導院に入った俺達が悪いのは明白。さあ、行こう…兄さん」


冷静なソルを見て、兄ハートスティングも落ち着きを取り戻し部屋を出る。

全員出た部屋に残されたエミリアは椅子に座ったまま動かなかった。


ソル達が退出し暫くした後、エミリアの部屋の片隅の空間に歪みが生じると、黒い甲冑を着た女が現れた。


「…時間よ。覚悟はいいわね」


頷くエミリアに女は歩み寄り、手刀で彼女の胸を貫いた。


「さてと…これを彼女に届けなきゃ…これから忙しくなるわね」


ポツリと呟くとエミリアから奪った魔硝石を片手に空間に消えていった。



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