翼竜と天竜
ベルマー王国の南には高い山脈が連なっている。季節がくれば山は深い雪に覆われ人の侵入を拒む…また、山脈の中腹には「山鬼」と呼ばれるディンゴと呼ばれる亜人間が住んでいた。
それほど知能は高くない彼らだが、群れによる狩りを得意としており、その狩りの対象は人間も含まれるため、経験の浅い冒険 者や民間人には脅威であった。
最近、その山脈の頂上に翼竜と呼ばれるスカイドラゴンが住み始めた。
翼竜は、その名の通りに自在に空中を舞いながら、地竜とは比べ物にならないくらい強力な息「ブレス」で獲物を仕留める。
だが、その皮膚はドラゴンの種類の中でも最も柔らかく、人間が使う通常武器で仕留める事が可能なほどであった。
ソルが目覚めた同時刻…サイフォンを隊長機とするカーク達は、その山脈の中腹にいた。
カーク
「ドラゴンかぁ…養成所で学んだかぎりだと、エルフより手強そうなんですけど…我々だけで大丈夫ッスかね?」
サイフォン
「地竜なら数が多けりゃあ厄介だが、翼竜なら問題ねぇよ。お前の魔導砲なら一撃で仕留められるぜ……おい小僧!ドラゴンはどうしてる」
隊の後方にいるニックは、魔導人形の目の真横に装備された望遠レンズを調整し、山の頂上を見た。
ニック
「ドラゴンの生体反応は頂上から動いてません…数は2匹。あと…自分はニック・ウォルトです。小僧は止めてもらえませんか?」
ニックの冷静な返答にサイフォンは操縦席で大笑いをする。
サイフォン
「オイ!聞いたかカーク! コイツは俺に対して物怖じしねぇ…大したガキだ。オメェも、ちったぁ見習えや!」
カーク
「いや…無理ッス。サイフォン隊長こえーッスから……… 顔が」
サイフォン
「あぁ? これでも俺は昔はなぁ…」
2人の会話を遮るようにアリーシャは魔導人形ごと割って入ってきた。
アリーシャ
「いくら共振会話といえど大声で会話していてはドラゴンに気づかれます…いや、もう気づかれているとは思いますが。隊長…アレを見てください」
アリーシャが差した指の先にはディンゴが5匹程、岩山に隠れてこちらの様子を伺っていた。
ディンゴは見られたと気付くと、すぐに岩山から離れ林の中へ逃げていく。
サイフォン
「魔導人形を見るのは初めてで興味があるんだろ。奴等が群れで襲ってきても問題ねぇ…俺のクレイモアで両断してやるよ」
魔導人形の肩から背負っている大剣を指して、サイフォンはアリーシャに自信を持って答えた。
カーク
「しっかし…サイフォン隊長の専用機って、設計思想がアリーシャさんのスラッシャーに似てますよね。武装が大剣1つしかない極端さといい…」
サイフォン
「…似てて当然だ。スラッシャーの設計を俺好みにしたのがコイツだからな。まぁ、オメェ達みたいな1つしかない特別機とは違い、あくまでも量産機を改修したもんだが…俺専用に調整してあるからな。一対一なら負けねぇ自信はあるぞ」
サイフォンの乗る魔導人形は関節部分が補強されており、とりわけ下半身の装甲が厚かった。
大きく分厚い大剣を振り回す為に重厚に作られた機体は、アリーシャが乗る軽快なスラッシャーとは正反対な印象を受ける。
カーク
「その大剣なら地竜でも両断できそうな気がしますが……アレ? どうしたんです?ニックさん」
突然、歩くのを止めたニックの魔導人形に向かってカークは話しかけた。
ニック
「…これは!? ドラゴンの生命反応が桁外れに上がっています。数が2匹から……1匹に?…なんでこんな事が……この情報を流しますので、皆さん確認してください」
会話の後にスイーパーの右肩から波長が放たれた。
アリーシャ
「…どう考えても翼竜の反応にしては大きすぎます。反応値としては上級竜…天竜に近いものと考えられますが…」
サイフォン
「翼竜が融合して天竜になったとしか考えられねぇな。竜の融合なんか、本当にあり得るのか疑問に思ってたんだがな」
カーク
「天竜って……資料では見たことありますけど。竜の中でも高位な存在じゃなかったでしたっけ? まずくないッスか?一旦引き上げた方が…」
サイフォンは自分の前を歩くカークの魔導人形の頭を叩いた。
サイフォン
「バカ野郎!何を弱気になってやがんだ。チッと手強くなっただけじゃねぇか。このままいくぞ!」
息を荒げながら進むサイフォンの魔導人形の後に、カーク達はついていく。
山の頂上では天竜が声をあげる…その咆哮は山の中腹にいる魔導人形達の操縦席に響くほどだった。




