魔導人形の戦い
カーク
「あ…!?隊長!エルフの反応が消えました!…これが霊子化ですよね?」
ソル
「そうだ…エルフは短時間だが体を物質から霊子に変化することが出来る。だが…奴らもその状態では、こちらを攻撃する事は出来ん…訓練通りに陣形は弐の型でいくぞ」
「了解」
魔導人形達は互いに背中合わせの十字陣形を組んだ。魔導人形達は前面を警戒し構える。
ソル
「ニック…お前は戦闘に参加しなくていい。参の型に移行と同時に、俺の後方で零の型で待機しろ」
ニック
「り…了解です」
ソル
「…アリーシャ。魔光球を撃て」
アリーシャの魔導人形の両肩に魔力が集まり始めた…集まった魔力は球状になってゆく。
光球は圧縮され、高音を響かせると勢いよく弾け飛んだ。光の衝撃波は魔導人形を中心に円形に広がっていく…
衝撃波が霊子体となったエルフ達に触れると、空間が歪みエルフが姿を現した。
エルフ達は何故、自分達の体が突然実体化したのか理解出来ずに驚いている。
ソル
「左のエルフはお前達に任せる。参の型…外すなよ」
アリーシャはエルフの1人に向かい、両腕の前腕部から突き出たブレードで挟み込むように斬りつける。
エルフは桁外れの跳躍力で上空へ飛んで避けた。
カーク
「うっし!読み通りッス!出力調整・角度調整完了!…いっけぇーー!!」
アリーシャの後方にいたカークの魔導人形が、上空に逃げたエルフに向かって魔導砲を放つ。
魔導人形の胸から放たれた光の束はエルフに直撃し、エルフの体に張り巡らされていた防御結界を次々に破壊する。
エルフは魔導砲の光の中に消えていった。
カーク
「や…やった!…はは♪意外となんて事なかったッスね!……あ…あれ?」
カークの魔導人形は動きだそうとしたが、背中から大量の蒸気を吹き出すと、膝をつき地面に座り込んでしまった。
アリーシャ
「魔導砲の出力調整ミスだ…それでは暫くは動けない。隊長の援護は私がする」
カーク
「すみません…アリーシャさん」
アリーシャは急ぎソルのもとへ魔導人形を走らせる。もう1人のエルフとソルは一進一退の攻防を繰り広げていた。
ソルは魔導人形のブレードで斬りつけるが、エルフは紙一重で避けて水魔法で反撃する…エルフの手の先から魔法陣が現れると、その魔法陣から大きな氷柱が凄まじい速度で魔導人形に向かい放たれた。
ソルは魔導人形の掌で向かってくる氷柱を弾き、魔導砲で反撃をする…魔導砲の光の束が、エルフの手前で拡散し無数の光の刃がエルフを覆うように襲う。
エルフは光の刃を前後左右に高速移動し難なく避けてみせた。
ソル
「…アレを避けるか…厄介だな」
エルフは、ソルの魔導人形を中心に円を描くように回りながら様子をうかがっている。そして、左手で右手首を掴み魔力を集中させ始めた…右手は青紫のボンヤリした光に包まれる。
アリーシャ
「隊長!援護します!」
両腕のブレードを構えてエルフに近寄るアリーシャ…エルフはアリーシャの魔導人形に向かって飛びかかり右手を振り下ろした。
アリーシャ
「…そんなもので魔導人形が倒せるものか!」
エルフの右手にブレードをあわせたアリーシャだったが…エルフの右手はブレードを砕き折り、腕を切り落とした。
アリーシャ
「なっ…!?魔導人形の腕をいとも容易く…」
腕を落とされ動きが鈍ったアリーシャの魔導人形に、エルフはさらに追い討ちをかける。
魔導人形の頭を、右手で簡単に切り落とすと、背後から水魔法でアリーシャに攻撃を加える。
エルフの左手から放たれた氷の塊を背中に受け、アリーシャの魔導人形は地面にうつ伏せに倒れた。
アリーシャ
「くっ…!!先程のエルフとは桁が違う…動きについていけない」
アリーシャに、とどめを刺そうとするエルフにソルが割って入る。
エルフは後方に飛んで距離をとり、ソルに対して警戒している。
アリーシャ
「申し訳ありません…隊長」
ソル
「…奴の相手は俺がする。ニックの位置まで下がっていろ」
エルフは巨大な氷の塊を、後退するアリーシャの魔導人形に放つが…ソルは魔導人形の蹴りでそれを砕いた。
ソル
「貴様の相手は俺だ…」
両腕を胸の位置で交差させブレードを突き出し構えるソルに、エルフは怒りの表情をみせた。
ソル
「…人形の力を使っているとはいえ、人間が1人でエルフと対等に戦おうとする事に怒っているのか?」
ソルはさらに挑発を続ける
ソル
「その驕りが前大戦で貴様達エルフが負けた理由だと、まだ気づいてないようだな…哀れな連中だ」
エルフは、さらに怒りの表情を強めるとソルの魔導人形に一直線に突撃してきた。
(…意外に単純な奴だ…うまい具合にかかったな)
エルフは右手の手刀でソルの魔導人形の胸を切り裂こうと真っ直ぐに飛びかかってきた。
ソルは左手でエルフの右手を押さえようとするが…エルフの右手は魔導人形の左手の掌を切り裂き、前腕部を砕きながら上腕部をも砕き折った…
エルフの右手は、魔導人形の左手を破壊し胴体部分にたどり着いたが、魔導人形の装甲の中で最も堅い部分である胴体は切り裂けず、右手は胴体に食い込んだまま止まってしまった。
ソル
「…もらったぞ!」
残った右手で胴体付近で静止しているエルフを掴み、魔導砲を右手ごと零距離から撃ち込んだ。
エルフは一瞬にして塵となる。
ソル
「左手を犠牲にして奴を捕まえる危険な賭けだったが…何とか上手くいったな」
両腕が無いソルの魔導人形は地面に片膝をつく
ニック
「た…隊長!ご無事ですか!?」
後方で待機していたニックの魔導人形が近づいてくる。アリーシャの魔導人形も胸の搭乗口を開けてゆっくりと歩いてきた
アリーシャ
「…隊長。お見事です」
ソル
「ああ…何とかな。初の実戦だったが…お前達もよくやってくれた。まさかエルフが相手になるとは思いもしなかったがな」
ニック
「…じ…自分なんか何も役に立っていません。後ろで待機していただけです…」
アリーシャ
「お前が隊長の命令を破り戦闘に参加していたら、間違い無くやられていただろう…お前を助けに私達が動いていたら損害はさらに増えていた。動かない事が、あの場合は良かったと言う事だ」
ニック
「…はい。でも次は自分も役に立てるように頑張ります!」
ソル
「…何が自分に足りないかを常に考えながら修練すれば成長は早くなる。決して努力を怠るなよ」
ニック
「はい!!!」
アリーシャ
「まずは魔導砲の出力調整を完璧にしなくてはな…ああなるぞ」
アリーシャの魔導人形が振り返ると、いまだに蒸気を出しながら座り込むカークの魔導人形がいた。
カーク
「あ…はははは…ニックさん…これは真似しちゃいけないッスよ」
ソル
「サイフォン隊長に出力調整の訓練を頼むか…」
カーク
「えーーーっ!!!それはマジ勘弁して下さいッス!」
アリーシャ
「鍛え直してもらってこい」
カーク
「トホホ……そ…そんな事よりハーフエルフはどうします?反応はまだ消えてませんが」
ソル
「捕獲する…だが俺とアリーシャの人形は戦闘不能だ。カークとニックで捕獲するしかないな。カーク…頼むぞ」
カーク
「了解です!そろそろ動けますから…ニックさん!行きましょう」
カークの魔導人形がゆっくりと動き始めた。
その後ろにニック・アリーシャ・ソルの順番でカークについていく。
ハーフエルフの反応地点に向かい魔導人形達は進み始めた。




