決着
エイト
「駄目なものは駄目…か」
溜め息つきながらボウガンを地面に置き、クロムダイト鋼の剣を抜いた。
狙いをつけて放たれた矢は、正確に巨人の眉間に当たったが、一瞬怯んだだけで何事も無かったように巨人は向かってくる。
接近戦は、あまりやりたくはなかったが…
攻撃を避けつつ矢を装填する動作は余りに危険すぎる…装填するたびに止まらなければならないからだ。
巨人に矢が、もう少し効果的なら良かったのだが…あれでは装填する間に間合いを詰められてしまうだろう。
思い切って剣で間合いをとった方がいい…だが、そう簡単な事ではないのも分かっている。
何故なら「力」を長時間使用しなければならないからだ。
あの力は身体能力を驚異的に上げるが、体の負担も凄まじい。恐らくは人間が無意識に普段制御している力を、無理やり引き出して能力を上げているのだろう。
先程の戦闘では、長時間使用した反動で体が悲鳴をあげていた。
もっとも、使い方次第では瞬間的に使用し負担を軽減する事も出来るかもしれないが…
元に戻る方法が分からん……
力を使用する事は容易く出来る…が…
使用する前に戻る方法が分からない。
瞬間的に使用出来ないのなら……余計な動きをせず、最小限に避ければいいのかもしれないが
エイト
「とはいえ…避ける力を抑えながらじゃないと結局……わっ!…あぶなっ!」
巨人の拳が頭上から勢いよく振り下ろされてきた。
後方に飛んで避け体勢を整えたが、巨人は避けた俺にめがけ、大木のような足で蹴ってきた。これも地面に伏せて何とか避ける…
やはりまともに当たれば、一撃で致命傷になる破壊力だ。
エイト
「どのみち使う以外に選択肢はないか」
目を閉じ力を発動させた…全身から力が溢れてきた…巨人の動きが遅く見える。だが、ここで調子にのって動くと体の負担が大きくなるのだ。
剣を構えつつ体の力を抜いた…体に余計な力を加えないようにしなければならない。
濁った目で睨む巨人は続けて攻撃してくる。俺を足で踏み潰そうとしてきたが、力を使っている為、動きがよく見える…最小限の動きで避けられた。
すれ違いざまに巨人の踵の部分を斬りつけて離れる…腱を切断された巨人の動きは少し鈍っているように思えた。
エイト
「致命傷は与えられないが、動きを鈍らせる事は出来そうだな」
剣にこびりついた黒い血を払い、再び構えて巨人の攻撃を待つ…これならばいけそうだ。
数度の攻防をしたが体に異変は感じなかった。横目でアレスを見るが、先程と同じに力を溜めているようだ。
いったい何時までかかるのか…溜め息をついてアレスを見ていると視界が急に暗くなった。
巨人が左手で叩き潰そうとしてきたが、すんでのところで避けた…が、避けて飛んだ先には巨人の右手があり、捕まってしまった。
巨人は左手も使い、両手で俺を握りつぶそうと力を入れ始めた。
エイト
「ぐっ…油断した…は…はずれねぇ…凄い力だ」
「力」を使い渾身の力で両手から逃れようとするが、潰されるのを防ぐのがやっとだった。
エイト
「っ!!!…うぉぉーーっっ!!」
さらに「力」を使うと巨人の両手を徐々に押しのけ始めた。僅かな隙間が出来ると体を動かし両手から逃れる。
地面に降りると、全身から疲労が吹き出してきた。
エイト
「……使いすぎた。もう次の攻撃は避けられねぇ…くそっ!」
四つん這いになり見上げる俺を、巨人が見下ろしている…そして拳を振り下ろそうとした瞬間、後ろから轟音と共に巨大な火球が飛んできた。
巨人の体を炎が包み込み全身を焼き尽くしていく…辺りには肉が焼ける臭いと巨人の叫び声が響く。
エイト
「…まったく…いつまで待たせんだよ…頼むぜ」
アレス
「…遅くなった…これで何とかなるか?」
エイト
「ああ…アイツが再生するのを俺が力を使って見る…一番再生するのが早い場所にあるはずだ…魔硝石がな。だが、俺はもう素早く動けねぇからトドメは頼む…。そうだ…一つ頼まれてくれるか?」
アレス
「…わかった」
巨人は激しくもがいている。すでに全身は火傷で皮膚がただれており、気色悪い体はさらに醜悪さを増していた。
巨人の正面に立ちジッと観察する、再生が始まるのか、巨人は立ったまま動かない。
エイト
「……そこだ!」
アレスに拾って装填してもらったボウガンで狙い撃つ…矢は巨人の左肩に刺さった。
エイト
「あの場所だ!斬れ!」
叫ぶ声と同時にアレスは大剣を構えて巨人に走る。矢の場所に大剣を突き刺すと巨人の体から緑色の宝石らしきものが飛び出し、粉々に砕けた。
エイト
「あれが…魔硝石か?」
巨人は魔硝石が飛び出すと膝から崩れ落ち、地面に倒れた。
体からは煙が出て、縫い合わせた場所からは黒い血が大量に吹き出している。
暫くすると巨人の体は肉片と化した。
エイト
「…やっと終わったか…つ…疲れた」
崩れていく巨人の体を眺めながら尻餅をついて座りこんだ。




