巨人
………
目の前に立っている巨人の体は、人間の死体を集めて作られているのだろうか…強引につなぎ合わせられた皮膚の縫い目からは、ドス黒い液体が流れている。胸や腹には人間の顔がいくつも埋め込まれ、両目を開き俺達を凝視していた。
人間の倍以上ある身長…歩くたびに足が地面にめり込むその体は、見た目以上に体重があるだろう。
エイト
「…コイツは何だ?」
モニカ
「魔導人形よ…この子「ローズ」が言っていたでしょ?人間達が魔硝石を複製し、それを核として動かす魔導人形を作り始めた事をね」
エイト
「…こんな気色悪いのが…魔導人形」
モニカ
「実はだいぶ違うけどね…人間達は鉱石で魔導人形を作っているみたいだけど…ご覧の通り、彼女は人形の素材を人間で作ったみたいなの。…未だにこのセンスには、ついていけないのよねぇ…」
彼女とはあの女の事だろうか…
…ついていけない?…あの女と知り合いみたいな言い方だな。
アレス
「…コイツを倒せばいいのか?」
モニカ
「そう言うこと……でも丸腰じゃあキツくない?」
アレス
「…問題ない」
ゆっくりと近付いてくる巨人に身構えるアレス…いくら竜戦士として覚醒したと言っても体格は人間と変わらない。
無茶としか思えなかったが……その心配はいらなかった。
巨人の攻撃は全くアレスには当たらない。
攻撃は当たらなければ意味が無い…虚しく空振りを繰り返す巨人に、アレスは素手で反撃を加えていた。
膝を中心に攻めていた効果はすぐに現れた。膝関節を砕かれたのか、巨人は自分の体重を支えきれなくなり、膝を地面につき、四つん這いになった。
アレス
「…これまでだ」
四つん這いになった巨人の背中に飛び乗ると、後頭部を掴んで強引に引き抜こうとする。
メキメキと音を立てながら巨人の首は捻れ、裂け始めた。
巨人は大きな叫び声を上げ、首を掴んだアレスを捕らえようと、自分の首の後ろに手を伸ばしたが、掴む前に巨人の首は引き抜かれ…地面に投げ捨てられた。
転がった首からは大量の黒い液体が吹き出し、地面を黒く染める。
エイト
「うぇ……気持ち悪いな。…まあ…これで試験は終了だろ?…俺は何もしてないけど」
モニカ
「さすがねぇ…でも試験は終了じゃないわよ?」
エイト
「何を言ってるんだ…そこに転がってるのを……え?」
話の最中に突然、首の無い巨人がゆっくり立ち上がった。
巨人は地面に転がった自分の首を拾うと、首の元の位置に押し込んだ。
すると、首の切断面から触手が飛び出して縫い始める…瞬く間に首は元通りになった。
エイト
「え?……な……なんだぁ!?」
モニカ
「魔導人形は生命体ではないわ。仮の命を吹き込まれた虚ろな物質。…首を引き抜かれようが潰されようが平気なの。では…そんな物質を滅ぼすには?」
エイト
「物質……なるほど……核である魔硝石を取り除かなければ倒せないと言う訳か」
モニカは、いつの間にか修復されたアレスの大剣とボウガンを俺に渡たしてきた。
モニカ
「正解よ。魔硝石がどこにあるかは自分達で見つけなさい…そこまで教えたら試験にならないもの」
受け取ったボウガンに矢を装填する…矢は残り少ない…こんな矢でどうにかなる相手とは思えないがな…
矢を装填し終わると、巨人と交戦しているアレスに合流した。
エイト
「…このデカブツは魔硝石で動いているそうだ。核を破壊しないと倒せないらしい…場所は教えてくれなかったがな」
アレス
「…ならば片っ端から斬り刻んでくれる」
受け取った大剣を構えると巨人に飛びかかり、胸を横一文字に斬った。
切り傷からは黒い液体が出ていたが、暫くすると傷は塞がり元通りになってしまう。
やはり、核をどうにかしないと再生してしまう。
アレスは休む事なく攻撃を続けているが、再生する巨人には通用しない。
エイト
「まずいな…このままだと、いずれ体力が無くなる。そうなったら………ん?」
アレスは火球を作り出し巨人に放った。
胸の辺りに火球はぶつかり、巨人は後ろによろめいたが、やはり決定打にはならない。
エイト
「あいつ…ドラゴンの技を使えるようになったのか。…まてよ…火か」
魔導人形は魔硝石の力で再生する。
体に魔硝石があるなら、再生する速度は魔硝石の近くの方が早いはず…こいつの体全体を丸焼きにすれば再生の速度を見れる。
そうなれば…大体の位置はつかめるはずだ。
すぐにアレスに近寄り話をした。
エイト
「1つ提案がある…アイツを丸焼きにすることが出来るか?」
アレス
「…やれない事はないが…何をする気だ?」
エイト
「上手くいけば核を見つけられる。このままじゃ、いずれやられるのは目に見えてる…協力してくれ」
…巨人を丸焼きにする能力がアレスにあるのは良かったが、再生速度が均一なら意味がない…これは賭けだな。
アレス
「分かった。だが…1つ問題がある。あれほど大きな物を焼くとなると、力を溜めるのに時間が必要だ」
エイト
「…時間稼ぎか。分かった…だが、なるべく早く頼む。お前ほど早く動けないからな…」
当然と言えば当然か…先ほど放った火球とは比べものにならない炎を作り出すのだから。
アレスは後ろに下がり、大剣を地面に突き刺し力を溜め始めた。
エイト
「…今度こそは約束を守らないとな」
俺はボウガンを握りしめ、ゆっくりと向かってくる巨人に構えた。




