2人の悪魔
アレスを背中を貫こうとした手を止めたのは、気を失い倒れていたローズだった。
だが、その瞳は金色に変わり、目つきは鋭くなっている。
「お久しぶり……大戦以来かしらね。相変わらず、死人から魂を喰らう悪趣味は変わってないようだけど…」
「やっと姿を見せたか…今はモニカと言われているようだな。その娘の中にいるのは分かってはいたが…自分の(駒)を見殺しにするとはな」
モニカ
「ん~彼には悪かったけど、この子が覚醒するにはこのやり方じゃないとね…。もっとも貴女も覚醒するのを見たかったんでしょ?演技にも熱が入っていたようだし」
「…抵抗されて少し本気になってしまったがな」
女が見せた折れた手首は力無く垂れ下がっていた。
モニカ
「今の私と違い、霊子体の貴女に傷をつけたのは驚いたわ。彼の魂を融合させたのが良かったのかもね…あるいは、この子の力なのかも」
倒れて気を失っているアレスに向かって、モニカは微笑んだ。
「…前任者達とは違うということか。貴様が(あの事)を成すなら私にも利がある。…我々の存在から見れば、裏切り行為ではあるがな」
モニカ
「それじゃあ、この子達を見逃してくれる?今後は貴女の食事を邪魔しないように強く言っておくわ」
モニカは片目を閉じて女に頼み込んでいる。
それに答えるように女は腕を組み、やれやれ…と言った表情で話した。
「…お前が、けしかけたのだろう?」
モニカ
「あら?私は止めなさいと忠告はしたのよ?…彼は向こう見ずだから」
「…まあいい。死人の魂を喰らうのも飽きてきたところだ。…お前と争う事もしたくはないしな」
モニカ
「さすがは天空神ホルスと下界から呼ばれた方ね。慈悲深くて感謝するわ」
「昔の事だ…その名はよせ。私は天界に帰る…奴らの仕上がりを試したかったらアレを使え。戯れに作ったものだが…丁度良いはずだ」
女は目の前の空間を歪ませると黒い霧を出した。
モニカ
「1つ聞きたいんだけど…彼らを欲しいと言った事…本気だったの?」
「………さあな」
女は呟くと黒い霧の中に消えていった。
モニカ
「いまいち考えてることが読めない人ねぇ……さて…彼を生き返えらせなくちゃ」
モニカは手をかざすと黒い煙をだし亡骸を包んだ。
エイト
「あ……え?……ここは…ローズ?…無事だったのか。あれ?…アイツがいないぞ」
悪魔の女はいない。俺達に止めをささなかったのか…何故だ。
モニカ
「私の空間に呼ばないで直接生き返らせたから、混乱しているかしら?」
…その色っぽいが冷たい金色の目は何度も見ている。…体はローズだが、お前はモニカだろ。
モニカ
「正解よ。…まったく貴方は…あれほど止めなさいと言ったのに手を出すなんて。私がローズちゃんの体にいなかったら、ホントに死者になっていたのよ。…反省してるの?」
…アイツが先に手を出してきたんだ。しょうがないだろ。
投げやりに言うと、モニカは溜め息をついて顔をそむけた。
モニカ
「もういいわ…勝手になさい。…知らないから」
やべ…怒らせたか。
すいません…調子こいてました。ごめんなさい。
モニカ
「……貴方の向こう見ずな行動のお陰でアレス君が覚醒出来たのも事実だから、許してあげるわ。…もう2度と軽率な行動はしないでね…わかった?」
はい。反省してます……と言うかアレスが覚醒?……あの男はアレスなのか?
倒れている男は少年ではなく、どう見ても青年の姿だ。
むしろ俺より年上な気がする。
アレス
「う……油断したか…。む……アイツはどこだ?…ん?エイトか」
頭を抱えながらこっちを見てアレスは話す。
どうでもいいが…真っ裸なのは勘弁して頂きたい。恥ずかしがらずにモロ出しかよ。
エイト
「お陰さんで生き返ったよ。…しかし、お前はまた随分と変わったな。子供から大人になっているじゃないか」
アレス
「体に何か変化が起きたようだ…分からんが口調も変わっている。話に聞いたように竜戦士として覚醒したのかもな。…力が溢れてくる感覚はある」
髪は白髪で逆立ち褐色の肌は変わらないが、体つきは無駄な贅肉は無く、鍛えぬかれた体になっている。
…顔だちは……いや…俺の方が勝っているはずだ。
モニカ
「…う~ん。服が破けちゃったみたいね。私としてはそのままで構わないんだけど…この子に余計な刺激は与えたく無いわ」
手をかざすと真っ裸のアレスが鎧姿になった。
頭には額当てに口と鼻を覆う装甲がつき、体には上半身を守る軽装鎧…腕や足にも鎧が装着された。
関節部分には装着されていない所を見ると、動きやすさを重視した鎧のようだ。
モニカ
「よく似合っているわね。前大戦で竜戦士が装備していたものだから当然と言えば当然ね。……覚醒した貴方への贈り物よ」
アレス
「……この鎧を着ていると安心する。俺が竜だった時の皮膚のような感覚だ」
竜戦士が着ていた鎧だからか…たしかに一体感はある。
モニカ
「さて…試験を始めましょうか」
エイト
「試験?」
モニカが指をさす方向には、巨大な肉の人形…いや、元人間であったものが集まった巨人が立っていた。




