ホークの過去
ボルゾイ
「エイト殿……お願い申す!!!ギルダスのもとへ行ってはくれまいか!!!」
ボルゾイは血管が、はちきれんばかりに顔を真っ赤にして近づいてくる。
エイト
「あ…いや…は……はい…何とか…やってみましょう…ちょっと体が痛いので休ませてもらえば行きますよ…はは」
ボルゾイ
「それでこそエイト殿!!!このボルゾイ!!!感激した!!!さすがは英雄よ!
」
真っ赤な顔をした巨大な筋肉ダルマは、俺に力いっぱい抱きついてきた。
……痛ぇーーー!!!ひ…左腕が……アバラが…オッサン抱きしめんな!折れてるからマジで!
ボルゾイ
「では今日は休まれるがよろしかろう!!!……おお!そうだ!!今日は我が館に泊まっていかれるがよい!!!それでは…」
ボルゾイの言葉が終わる前に、俺は丁重にお断りした。こんなオッサンの近くにいたら体がもたない…死んでしまう。
ボルゾイ
「ふむ…では先程従者にした者は、この街にワシが与えた家を持っておる。エイト殿が我が街にいる際には好きに使ってかまわぬ。……よいな?エイト殿が安心できるように丁重にもてなすのだぞ」
ローズ
「かしこまりました。以後、ボルゾイ様の名に恥じぬようエイト様にお仕えいたします」
…ローズを自由にするには、この街から出てからになるな。この街では俺の従者として振る舞ってもらおう。
とりあえずオッサンから逃げないと。
俺達を満面の笑みで見送るボルゾイを背に、逃げるように館から出た。
横にいたホークはニヤニヤしながら話かけてきた。
ホーク
「……上手い事やったじゃないか相棒。これで彼女を連れて街中を歩けるってもんだ。…今夜は大変そうだな~…え?ご主人様」
ローズは下を向いて恥ずかしがっている。
…まーたコイツは。余計な事を言うなよ
ホーク
「つってもギルダスの旦那を見つけないといけないしな。……ギルダスが向かったのはモリス村だ。ここから西へ行った森の中にある…いや…あったと言うべきかな」
エイト
「どういうことだ?」
館の外で待機していた馬車の荷台に、ホークは飛び乗って座った。先程とは違い真面目な顔をしてホークは俺達に話をしてくる。
ドラゴンの少年もひょっこり顔を出しながら聞いていた。
ホーク
「モリス村は死者に占領されちまったのさ…ボルゾイさんの言った話は嘘じゃねぇ。あれからもう半年になったっけな…あの日…モリス村から1人の青年が街に助けを求めてやってきたんだ」
…半年前。
ローズ
「ホークさん……」
ローズは悲しそうな顔をしている。何があったんだろう。
ホーク
「……その青年は顔色が酷く悪かった。何度も死者が村を襲ってきたと繰り返し訴えていた。…信じられるか?死者が生き返るなんてよ…聖騎士マルクの伝説じゃあるまいし」
……すまん…ここにいる。
ホーク
「街にいた魔導士は懸命に青年を治療したが、青年は街に来た、その日に死んでしまった。……人間としては」
エイト
「生き返ったのか…死者として」
ホーク
「……そうだ。俺の目の前でな」
エイト
「目の前…どういうことだ?その場にいたのか」
ホーク
「当時、俺はボルゾイさんに傭兵として雇われていたんだ。まあ…今のギルダスみたいなもんだ。そして当時の俺の使用人が…そこの彼女さ」
……な?ホークがボルゾイに雇われていた。
しかもローズが使用人だって?オイオイ…聞いてないぞ。
ホーク
「はは…心配するなよ。彼女には何もしてないぜ?……俺には相棒がいたんだ。同じウィングマンの女がな」
ローズ
「ソニア様です…ホークさんの恋人でした。とても素敵な方でした…奴隷の身分であった私にも優しくして下さったのです」
…ホークの恋人か。
ホーク
「ソニアは青年の様子が気になっていた…俺と、そこの彼女と一緒に治療所に向かったんだ。青年が苦しみ人間として死を迎えるまで俺達はその場で見ていた」
ホーク
「彼女は……青年を弔うと言って死体に近づいた。死体は急に起き上がりソニアの……首に噛みついて……彼女は血を吹き出しながら倒れた。俺はボウガンでソニアに噛みついた死体の頭を貫いて倒した」
エイト
「ホーク……」
ホーク
「彼女の首からは血が噴水のように吹き出して……止まらなかった……押さえても…押さえても止まらなかったんだ! 」
ホーク
「…やがて彼女は俺の手の中で死んだ。何も出来なかった……。俺は彼女を床に寝かせ布を被せようとしたが、彼女は死んだはずなのに目を開けて襲いかかってきたんだ」
…死者に殺されたものは、生き返り生者を襲ってしまうのか。まるで病気のように移っていくな…
ホーク
「俺は彼女を殺した…殺さなければ俺が死ぬ。街に彼女が出たら、この街はモリス村のように死者に占拠された街になっただろう」
……だが…あまりに辛い決断だな。
俺がホークの立場なら…はたして出来ただろうか
ホーク
「この話は俺と彼女とボルゾイ…他数人しか知らねぇ。ほどなくして俺は傭兵を辞めて賞金稼ぎになった。何度も街から出ようとしたが…ソニアの事を思い出すと離れられなくてな。…ギルダスは俺の代わりに側近になったんだ」
…なるほどな。ギルダスはその話を知らないからモリス村に向かったのか。
ホーク
「すまねぇ…エイト。俺は今回手伝えそうにねぇ…今度はこっちが手伝わなければならないってのによ。あれ以来、死者って聞くたびにソニアの顔が浮かんできてな…」
ホークのトラウマだ。愛した人をその手で殺したのだから無理もない
エイト
「…こっちで何とかするさ」
死者……あながち俺との関係が無いわけでもなさそうだな…モニカは関わってはなさそうだが。




