ギルダスの後悔
「ギルダスの旦那……もう引き返しましょうぜ……もう気味悪くてかないませんや」
ギルダス
「うるせぇ!とっとと歩きやがれ!このクソどもが!」
ギルダスは、ぼやく部下を蹴っ飛ばしながら深い森を歩いていた。
…いまいましいエイトの餓鬼が!
あいつのおかげで俺の評判はガタ落ちだ…ボルゾイ様もエイトの野郎を気にいってやがる。
評判を取り戻そうと死者を退治しに来たものの…このザマだ!
無能な部下どものケツを蹴ってばかりじゃねぇか。
ギルダス
「おい!モリス村の道はコッチあってるんだろうな!」
「はい…たしかに…しかし本当に死者なんているんですかね?ただの噂じゃ…」
ギルダス
「それを確かめに俺達が行くんだろうが!モリス村との取引は、ここ半年も無くなってるんだ。何かあったに違いねぇ」
……ふん!どうせ噂だ。村人全員が病気にでもかかったんだろ。村人の死体でも持って帰れば、街の奴らも死者を退治したと大騒ぎするだろうぜ。あの野郎がドラゴンを退治するはずもねぇと思うが…万が一があるからな。
「だ…旦那!女がいますぜ…こんな森の中で何やってるんでしょう?」
ギルダス
「あぁ?女だぁ?……おい女!何をしている。モリス村のもんか?」
汚い服を着た女はうずくまっている……
何ヶ月も洗っていなそうな服は、所々黒ずんでいて髪の毛には泥がついている。
「旦那…様子がおかしくないですか。なんか…唸ってますぜ」
ギルダス
「汚ねぇ身なりだからな。腹でもくだしたんだろ。おい!てめぇら!あの女から情報を聞き出せ」
ギルダスの呼びかけに部下の1人が女に近づく……女はうずくまりながら唸っていた。
「おい……おま……え?……ひ……ひぃ!こ…コイツ…首がとれかかってる!腐ってい…あぁーーー!!!」
女はギルダスの部下の首筋に噛みつくと喉元を食い破った。部下は首から血を吹き出しながら倒れて息絶えた。
倒れたギルダスの部下の死体を女は夢中で貪っている。
「こ…コイツは死者だ!死んだ人間が蘇って襲う噂本当だったんだ!こ…殺される!」
ギルダスの部下達は、死者に驚き道を引き返そうとした。
ギルダス
「馬鹿野郎!討伐にきたのに逃げる奴があるか!……ケッ!所詮は死体だろうが!こんなやつ!」
ギルダスは死体を貪っている女の頭に力いっぱいクロム鋼の棍棒を振り下ろした。
女の頭はイヤな音とともに砕けて体は動かなくなった。
ギルダス
「見ろ!所詮は死体よ。たいしたことねぇじゃねぇか!頭を潰せばなんてことはねぇ!わかったか!!!」
ギルダスは部下達の士気を取り戻そうと棍棒を高々とあげて叫んだ。
「さ…さすが旦那だ…へへ…おみそれしやした」
逃げ出そうとした部下達も死者を倒したギルダスを見てどうにか士気を取り戻していた。
「あ……だ…旦那……後ろ…」
ギルダス
「あ?ナンだって?後ろがどうした?」
振り向くと女に食われた部下が首から血を流し虚ろな目をしてギルダスを見ている。
ギルダス
「おまえ……死んだはずじゃ……」
部下は唸り声とともにギルダスに襲いかかり押し倒した。ギルダスは押し倒されながら部下の喉元を押さえて必死に抵抗している。
ギルダス
「おい!お前ら!見てないで助けろ!」
「ひぃぃーー!!!やっぱり来るんじゃなかったー!に……逃げろーー!」
部下達はギルダスを置いて逃げ出した。
ギルダス
「おいーー逃げるなーー!!!俺を助けろーー!!!」
……くそ!役立たずどもめ!……この腐れ化け物!
ギルダスは死者と化した部下の頭を殴った。
よろけた隙に跳ね飛ばし逆に馬乗りになり死者を殴りつける。
ギルダス
「死ね!死ね!くたばれぇーー!!!」
渾身の力をこめて数回殴り死者は動かなくなった。
ギルダス
「……俺様を殺ろうなんざ10年はえーぜ…つ…疲れたがな…へへ」
押し倒された時に手放した棍棒を拾い息を整える。部下達は1人残らず逃げ出したようだ。
ギルダス
「クソども…戻ったらぶっ殺してやる」
座りこみ悪態をついたギルダスの耳に死者の唸り声が聞こえた。
まわりを見渡すと死者達が濁った目でギルダスを見て唸っている。
ギルダス
「……くそったれ」
ギルダスの呟きは死者の唸り声に掻き消されていった。




