そう珍しい話ではない
ユーニスは元々、王都の生まれではない。王都近郊の食料生産を担う町の豪農の家の子である。兄姉が多数おり、一番上の兄とは14も離れて生まれた末っ子だから、家族から可愛がられて育った。元来素直で心優しい気質をしていたのか、増長したり捻くれたりすることもなく、善良で正義感の強い子に育った。
農家とはいえ、後継ぎの話はある。生家を継ぐのは順当に長兄だ。それ以外の子供はそれぞれ小作人になるなり、職人に弟子入りするなり、何かしら自分で身を立てる先を見つける必要があった。ユーニスも当然例外ではない。比較的生活に余裕がある家ではあるが、いつまでも子供を遊ばせておけるわけではない。
9歳の頃、彼は親戚の家に養子に入ることになった。王都に住む兵士の夫婦だが、子が生まれぬ躯であることがはっきりしたのだ。こうして彼はユーニス・クォレンとなった。そして養父と同じく兵士となるべく剣を習い始めた。
生家でも簡単な読み書き程度の教育は受けていた。絵本ぐらいなら自分で読むことができた。身近ではなかったから、兵士とはどのようなことをするのか、彼はよく知らなかった。そんな彼に養母は本を与えた。その騎士道物語に彼は強く感銘を受けた。物語というのは美化されるものである。それでも、貴婦人に清らかな愛を捧げ、その安寧を脅かすものと勇敢に戦う騎士というやつに彼は憧れを持った。
意欲的に取り組んだからか、やや遅い習い始めに反して彼の剣はめきめき上達していた。また、特に好きな物語の騎士が願掛けのために髪を伸ばしていたので、彼の髪を伸ばし始めた。物語の挿絵に描かれる騎士は金髪で、夜闇を溶かしたような彼の黒髪とは違っていたけれど、そこに不満はなかった。
愛されて育った末っ子故の明るく人懐こい性格から、友人もすぐできた。養家の近所に住む年の近い子供や、剣を習うために通っている幼年者向けの訓練所に通う同輩。そうして知り合った友人の友人。子供たちのコミュニティの中で彼はすぐ有名になった。短期間に強くなったことに加え、平民の出にしては整った顔立ちをしているし、性格が善い。それも流されて都合よく使い捨てられるタイプのそれではなく、しっかりと自分の信念があり容易く己の意思を曲げたりしない強情さがあった。
まあそれだから巻き込まれるトラブルというものもあったのだが。




