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処刑台の上に一人


恐らく、王都だけでなく近隣の町々の人間も集まって来ていただろう。処刑台の設置された広場の周囲は人々でごった返していた。ざわめきはそこに立つ男の元まで届いてくるが、その内容――人々が男をどう見ているのか――は判然としない。見覚えのある顔もあれば物見遊山であろう知らぬ顔もあった。男の知る顔は大体、怒ったような顔をしているように見えた。

「これより、反乱軍の首謀者、ユーニス・クォレンの処刑を行う」

騎士が声を張り上げた。安全のために付けられた木製の手枷が皮膚を擦れる感触を気にしながら、男は舞台の中央へ足を進める。逆らう心算はなかった。これが一番良い未来に続く道であると男は考えていたから。

絞首のための縄の前に立った時、ふっと群衆の中に友の姿を見つけた。何か叫んでこちらに近づこうとしているのを、仲間に押し留められている。彼らは処刑されずに済みそうだとわかり、男は口元に笑みを浮かべる。

「どうか、お前達は幸せに――」

届かないと知りつつ益体もないことを呟く。剣を取ると決めた最初の日から、男の願いは変わっていない。反乱軍の長として見せしめの様に処刑されることになったこの瞬間にも、陰ることなくそう願っている。

首に縄がかけられる。その太い縄も絞首台の木組みも、それなりに恵まれた体格の男の躯を支えるに足るしっかりしたものだ。途中で千切れたり崩れたりといったトラブルは起こらないだろう。

恐怖が全くないと言えば嘘になる。覚悟は決めたとはいえ、男も死は怖いし、苦しんで死にたくはない。怯えや躊躇いを見せないのは、男を慕ってくれていた者たちへの意地だ。お前たちの信じた男は、己の死を前に逃げ出すような腰抜けなどではなかったのだ、という。

合図と共に、彼の足元に穴が開いて男の躯は宙に浮いた。その次の瞬間、首にかかった縄に全体重がかかり、気道が圧迫される。男の意識が落ちるまでそう時間はかからず、脱力した四肢がだらりと垂れ下がった。男の死をその目で目撃した民衆たちがひときわ大きくざわめく。

こうして、王国の転覆を企んだ反乱軍の首魁、ユーニス・クォレンは王国軍によって処刑されたのだった。

彼の死体は晒し者になることなく、速やかに処刑台ごと広場から撤去された。だが、家族の元へとその躯が返されることはなく、罪人塚に葬られたという。家族の手元に戻ってきたのは、遺髪である長い黒髪だけ。死体との面会すら許されない、徹底した重罪人扱いだった。



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