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婚約破棄された地味な結界調整士ですが、追放先の辺境で静かに暮らしたらなぜか感謝され続けています  作者: 篠宮しずく


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第49話 戻らない選択

 数日後、辺境の村に王都の紋章が押された封書が届いた。


 大仰な装飾はない。

 形式に則った、簡潔な文面だった。


 「王都結界安定化に関する協力要請」


 リーナがそれを受け取り、しばらく黙っていた。


「……王都からです」


 宿の裏で、アリアに差し出す。


 アリアは封を切り、目を通す。


 内容は予想通りだった。


 強度は十分。

 だが、安定性に課題あり。

 一時的な助言と立会いを求める。


 責める言葉はない。

 命令でもない。


 丁寧な依頼だった。


 リーナが小さく言う。


「行きますか」


 その問いに、迷いは含まれていない。

 ただ、確認だ。


 アリアは空を見上げる。


 焚き火は小さく、声は低い。

 昼の作業は無理なく終わり、夜の準備は整っている。


「もう、整っていますから」


 静かな答えだった。


「王都が?」


「この村が」


 リーナは息を呑む。


「急がない場所を、離れません」


 怒りも、恨みもない。


 ただ、選択。


「……返事は」


「辞退します」


 短い言葉だった。


 その夜、結界は穏やかだった。


 外からの圧もなく、揺らぎもない。


 リーナは小さく呟く。


「選ばなかった、ですね」


「ええ」


 選ばれなかったのではない。


 選ばなかった。


 結界は今日も、薄く村を包んでいる。


 誰かの要請ではなく、

 戻れる場所として。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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