第46話 王都は静かではなかった
王都の夜は、明るかった。
結界は幾重にも重ねられ、層は厚く、魔力循環は過去最高値を示している。塔の上で確認される数値は、どれも理想的だった。
だが――静かではない。
通りには灯りが溢れ、人の足取りは遅くまで続く。
兵士は巡回を増やし、結界維持班は交代制で魔力を流し続けている。
強い。
それは間違いない。
けれど、落ち着かない。
「強度は十分です」
報告を受け、ルークは淡々と頷く。
「接近頻度は?」
「増減なし。ただ、外縁部で揺らぎが微増しています」
「層を追加する」
即答だった。
部下は一瞬だけ躊躇する。
「……魔力消費が」
「上げろ」
迷いはない。
数値は、上げれば安定する。
それが理論だ。
会議室を出た後、ルークは一人で城壁へ向かった。
夜の王都は賑やかだ。
結界が強いからこそ、灯りを落とさない。
兵士が疲れた顔で敬礼する。
「問題はありません」
「当然だ」
そう答えながら、ルークは外縁を見つめる。
厚い層。
高い強度。
完璧な構造。
それでも、胸の奥に引っかかる感覚があった。
(なぜ、安心しない)
数値は成功している。
理論も正しい。
政策も間違っていない。
だが、夜は重い。
かつて辺境で見た夜とは、違う。
記憶が、ふとよぎる。
薄い結界。
小さな灯り。
静かな呼吸。
すぐに打ち消す。
(強度不足だ)
理論が正しい。
感覚は誤差だ。
遠くで、小さな揺らぎが走る。
「層を追加します」
部下が駆け寄る。
「やれ」
ルークは振り返らずに答えた。
結界はさらに厚くなり、
王都はさらに明るくなる。
だが、その夜も、
完全な静けさは訪れなかった。
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