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婚約破棄された地味な結界調整士ですが、追放先の辺境で静かに暮らしたらなぜか感謝され続けています  作者: 篠宮しずく


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第41話 三日いない間

 隣村から、小さな依頼が届いた。


 結界ではない。

 水路の配置と、夜間の灯りの位置についての相談だ。


「三日ほど、空けます」


 アリアがそう告げたとき、村は静かだった。


「三日か」

「まあ、問題ないだろ」


 誰も慌てない。


 リーナだけが、わずかに息を詰めた。


「……巡回は」


「いつも通りで」


 それだけ残し、アリアは村を出た。


 初日の夜。


 風は弱いが、北側で音が少し重なる。

 以前なら、誰かがアリアを呼んだだろう。


 だが、呼ぶ人はいない。


 リーナは結界点の手前で立ち止まる。


(触らない)


 自分に言い聞かせる。


 周囲を見渡し、焚き火の位置と作業の流れを確かめる。


「今日はここまでにしませんか」


 提案だけを置く。


 数人が頷き、散る。


 滞留は、薄く残る。

 だが、壊れない。


 翌朝、わずかな癖がある。

 強くはない。


(……これくらいなら)


 触らない。


 二日目の夜。


 外の気配が少しだけ近づく。

 結界は薄いままだ。


 不安が胸をよぎる。


 けれど、村の灯りは小さい。

 声は低い。


 外の気配は、やがて離れていく。


 三日目の朝。


 結界の縁には、細い揺らぎが残っている。

 整えれば消える程度のものだ。


 リーナは、その前で深く息を吸う。


(壊れていない)


 それが、事実だった。


 夕方、アリアが戻る。


 誰も駆け寄らない。

 誰も報告しない。


 ただ、「おかえり」とだけ言う。


 巡回に出たアリアは、結界点に手を当てる。


 小さな癖。

 薄い揺らぎ。


 数分で均せる。


 けれど、すぐには触らない。


「……回りましたね」


 ぽつりと呟く。


 リーナは、少しだけ肩の力を抜く。


「完璧では、ありません」


「完璧は、要りません」


 それだけで、十分だった。


 夜、結界はいつも通りに整えられた。


 三日間、壊れなかった事実が、静かに残る。


 結界は今日も、薄く村を包んでいる。

 いなくても、戻れる形で。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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