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婚約破棄された地味な結界調整士ですが、追放先の辺境で静かに暮らしたらなぜか感謝され続けています  作者: 篠宮しずく


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第40話 見られている村

 噂は、静かに広がっていた。


 隣の隣村が落ち着きを取り戻したこと。

 そのきっかけが、ここでのやり取りにあったらしいこと。


 誰かが誇張したわけではない。

 けれど、「あの村は違う」という言葉が、少しずつ付いて回るようになった。


 昼前、村の中央でレオンがぼそりと呟く。


「最近、視線が多いな」


 旅人が立ち寄る回数が、わずかに増えている。

 滞在は短い。ただ、夜を確かめるように泊まる者がいる。


 アリアは答えない。


 代わりに、村人たちが自然と話し合いを始めていた。


「派手なことは、やめとこう」

「もともとやってないだろ」


 軽い笑いが起きる。


 それでも、合意は生まれている。


 見られているから静かにする、のではない。

 静かであることを、崩さないと決めただけだ。


 リーナは、その輪の外で立っていた。


「……変わりますか」


 アリアに小さく尋ねる。


「何が、ですか」


「見られると」


 アリアは、少し考える。


「見られて、変わるなら」


 そこで言葉を止める。


「まだ、基準ではありません」


 リーナは息を呑む。


「今は?」


「変わっていません」


 夕方、旅人が一人、宿を求めてやってきた。


「夜は、本当に静かですか」


 以前も聞かれた言葉だ。


 答えたのは、村人だった。


「静かだよ。無理をしないからな」


 説明はそれだけ。


 夜、結界はいつも通りだった。

 外からの圧はなく、灯りは小さい。


 旅人は拍子抜けしたように呟く。


「……何も起きない」


 それが、この村の答えだった。


 アリアは結界点に手を当てる。

 変化はない。


(見られても、揺れませんね)


 村は、もう特別ではない。

 ただの基準になり始めている。


 結界は今日も、薄く村を包んでいる。

 視線の中でも、変わらずに。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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