世捨て人
むちゃくちゃなメタ理論をぶちあげて居ますので・・
適当に読み飛ばしてください
昔の事だ、私を乗せたプロペラ機が故障して不時着したのは、その惑星の砂漠のど真ん中だった。ガイド兼操縦士と私はかろうじて飛行機から飛び出して、万が一の爆発に備えて、急いで砂を蹴って夜の砂漠を駆けた。
運良く、飛行機はそのまま砂に半分埋もれて倒れこんでいるだけだった。
「助けは来るかな」私はガイドに言ったが、ガイドは頭を横にふった。
「あんな磁気嵐の中じゃあ、信号だす前に機械が全部やられちまっただよ。」
「じゃあ、星でも見ながらとりあえず寝るか」私は、本当に降るようなという表現が合う夜空を眺めて仰向けになって寝てみた。「夜じゃどうにもこうにも動けやしない」
「旦那、ここで寝るのは良くねぇや」ガイドは私に言った。
「何故?」
「砂漠は良くねぇ動物が多い。あれが爆発しないなら中から荷物を持ち出してくるから、ここでまってろ」
「そうなら、私も行こう。二人の方が荷物を出すのが早い」
そうして、二人で飛行機に戻って荷物を運び出していると一つの明りがどんどんこっちに近づいてきた。私達は、顔を見合わせて助かったことを確認しあった。
しかし、やってきたのは個人用のホバーで、下りてきたのは奇麗な顔立ちをした青年であった。青年は、この飛行機が落ちてくるのを発見して、急いで駆けつけてくれたのだった。
そのホバーに3人と荷物が乗ると、そもそも二人乗り用なだけに浮力が全く効かなくなってしまい、砂地にくっついたまま、スカートの脇から砂塵だけが舞い上がった。
「荷物だけ乗せて、歩いた方がよさそうですね」と青年は苦笑いをした。「なあに、砂漠の中を3時間もあるけば、僕の住居に着きますから」そうして青年は、自分はホバーに乗り込み、大きな鳥形の風船を膨らませて、それとホバーを紐で結んでふわふわと浮かせた。
その風船を不思議そうに、仰いで見ていた私たちに、青年は「デコイです。これは、この辺りで捕食動物の頂点にいる生き物を模したものですよ。これがあれば、そうそう私たちに近づいてくる、生き物はいません」
「その一番の捕食動物の本物は来るってことはないのかい」私は、訊いた。
「このデコイは雌を模していますから、求愛で雄が来るかもしれませんね」彼は、うふっと笑みを漏らした。「雄の求愛のダンス、見物ですよ」
「いや、できれば、こんなでかい生き物に逢いたくないな・・・そういや、助けて貰って自己紹介が遅れたけど、私は、サトー、こっちの人はリュウさんです。」
「サトーさん、リュウさん。歩かせて申し訳ない、私はウルと言います。」
そうして、私たちは夜の砂漠で移動を始めた。
「ウルさんは、なんでこんな砂漠に?」私は、夜の寒さを歩くことで、なんとか感じずに済んでいたが、指の先の冷たさはどうしようもなく、時々ポケットに突っ込んでは暖を与えていた。
「う~ん」と彼は返答に困ったような表情をしたかと思うと。「長い考え事と研究を、静かにしていたかったのですよ」
「ここの動物を?」上のデコイを見れば、彼の返事は頷くだけだろうと思った。
「いや、宇宙とかSpaceFlowerとかです。こんな砂漠ですけど」彼の返事は、予想外のものだった。
「は?ステーションではなく、地上で?」
「ええ、自分なりの考えがまとまってきたので、まとめてみようかなと思いましてね。今はちょっとした隠遁生活ですよ」
「若いのにもう隠居かい」私は、彼の言葉は冗談なのだろうと思った。それに対して彼ははにかんだような笑いで返しただけだった。
彼の住処は、布と木でできた粗末なものだった。さしずめかつて中央アジアで放牧生活をしていた人々が移動住居として住んでいた大きなテントに似ていた。
そのテントの側には、6本脚の熊みたいな大きな動物2頭が、私たちをおおきなつぶらな瞳でもの珍しそうに見ていた。
「酷い庵でしょ・・・・」彼は、大きなテントの前に立ち、出入り口の布を巻き上げて言った。「でも、たたむと小さくなるから移動には便利なのですよ」
中は広かったが、毛布と色々な機械が転がっているだけだった。その一つの機械の電源を入れて彼はマイクに向かって、救援を依頼した。
「そのうち、救援が来ると思いますから、お茶でも飲んでゆっくりしていて下さい。」彼の言葉を私たちは有り難くうけとった。
お茶は、バターが入っていた。やがて外で風が吹き始めたのかテントの布がばたばたと揺れ始めた。
「この風が吹き出すと、かなり冷えるし、飛行機もホバーも無理でしょうね。今夜は泊まることになるかもしれません」
私は、カップのお茶を飲み干すと彼に「結構長い間、ここで暮らしているのですか?」と聞いてみた。
「ええ、まあ」と彼は頷いた。
「しかし、地上でSpaceFlowerの研究とは」私は、一番不思議な点を突いてみた。
「あれのデータとか全然取れなくてね、なのでちょっとした思考実験をしている程度ですよ。」
「まぁ、未だに摩訶不思議な存在ですからね。」私も、散々お世話になっている移動装置なのに、その原理が全く未知のままというのは知っていた。
「全くです・・・」と彼は、いったん口をそこで閉じ、考えをまとめるように目も閉じた。
「あの構造物をくぐり、別のSpaceFlowerから出て来るまでの間の、あの空間はどうなっているのか、どこなのか、全く分かりませんからね。データも取れない、害があるのかも分からないまま、何世紀も私たちはあれを使っています。」
「まぁ、良く言われるのは4次元空間とかだとか、ブラックホールホールとホワイトホールを生成する装置だとかって言いますよね」
「そうですね。あの巨大な構造物は、ドーナッツ状の構造の周囲に巨大なパネルを持っており、その形状が花びらのようなので、今の名が付けられています。現在そのパネルはかなり効率良く恒星のエネルギーを受けている事も分かっています。そのエネルギーを使って、ドーナッツ内に一時的なブラックホールを生成しているとも言われています」
「博士は、どう思っているのですか?」訊いても分からないと知りつつ、彼の口調から私はあえて訊いた。
「笑わないでくださいよ。高次元の閉じた空間なのでは、と思っています。私たちの宇宙は、開かれた状態ですけど、それに対して閉じた空間というのは、他の空間との接点が概念的に存在します。その接点は、高次元であるがために、ありとあらゆる場所にありますが、通常はその接点を通じて開いた宇宙と閉じた宇宙の往来はできません、それに穴を穿つ機能をもっているのがSpaceFlowerだと考えています。」
「そりゃまた、面白い。しかしどうしてそんんなおかしな宇宙が出来たのかねぇ?」
「さぁ、宇宙の成り立ちも、分からないことだらけですから、そもそも何もない所に特異点ができてしまうのも変ですし・・・まぁたとえばですけど・・・無いもない空間と言っても、小さなエネルギーの粒子が二つかそれ以上か、生まれては対消滅したと言われています。それがみな、対照的に生成されていれば、何も起きないままだったでしょう。ただ非対称に物質が生成されると、たとえば発生した粒子が3つなら、それが揃わないと全ての消滅は難しいですし、なによりその3つが明後日の方向に飛んでいったら、出会うのも難しいですね。ただ、それらが、消滅することなくまとまりだしたのだと思います。
電子、陽電子のペアが真空から生まれるように、二つのダウンクオークと一つのアップクォークそれに対する反クォークができたかもしれませんしね」
「相当な時間が掛かっただろうねぇ」
「あるいは、時間そのものの意味が無かった。または、時間が無かったとも言えます。」
「時間が無いって?そんな馬鹿な」
「確かに馬鹿なです。しかし、時間なんて観察されて物理量が決まらない間は、意味なんかないようなものです。ある意味、時間は、物理量を確定する場のようなものかもしれません。その場の無い初期宇宙では、生成した粒子と反粒子は、両方の性質を持っているかもしれませんし、同じ空間に同時に存在できたかもしれません。
同時に同じ場所に存在した粒子は、その数を増し圧縮されてゆき、周囲を行き交う粒子を取り込んで成長したかもしれません。
ただ、最初のインフレーションを起こす時には、そこには特異点という高密度のエネルギーがあり、それを支える閉じこめるための空間もあったというのは、間違いないでしょうね。」
「同じ場所を同時に占有したら、なにか反応が起きそうだけど」
「おかしなたとえをすれば、平面上の交差点には信号機があるから、車はぶつからずに同じ場所を、違う時間で占有できます。これが同じ時間では、車は衝突して大破しちゃいますね。
でも、時間が無い世界では、2台の車はその情報を失う事無く、交差点を互いに交差してしまうのです。」
「便利な宇宙だねぇ、信号機屋が倒産するぞ」
「全くです」と彼は、苦笑いをして言った。
「話しをちょっと戻して・・・宇宙の成り立ち、ビックバンより少し前、インフレーションの段階で、多くの空間が生まれました。しかし最初の空間の広がり方は異常すぎます、いわばかっこ、ブレースともいいますね」と彼は「{」を一枚の紙に書いて見せた。こんな感じで一気に広がり、あとはゆっくりと広がり続けています。いわばインフレーション後は惰性で広がっている感じですね」
「インフレーションが始まる直前、最初の特異点が高速でスピンしていたとも言われているね。」
「はい、そうすると、銀河が網の目状に配置されていることが、説明できると言われています」
「でも、君はそれも違うと?」
「私の空想みたいなものです・・・インフレーションが始める直前、その場所は当然高エネルギーの塊です。たとえば圧縮された3次元空間が、そこにエネルギーをためきれず4次元空間に、エネルギーを桁上がりして、やがてその4次元空間もまたためきれずに5次元空間にエネルギーの桁上がりをしてとなった場合、最後の桁まで貯め込まれたエネルギーに最後の一撃を与えてしまった時に・・・エネルギーを一桁さえもため込めない状況に、エネルギーが追加され崩壊が始まったと考えられる・・・こういう風に崩壊したと考えています。
たとえば、11次元の空間があれば、最初に10次元の空間がいくつも放出され、放出された10次元の空間全ても複数の9次元の空間を放出してと、それは空間的に一番低レベルの3次元空間に落ち着くまで続きます。そのとき崩壊した次元は小さく折りたたまれてしまいます。もう入るべきエネルギーがないのですから、入れ物は一番小さい状態になるのです。それらは、クォークより小さいでしょうね。
空間の爆発的拡張は、いわば、入れ子のクラスター爆弾みたいなものです。その課程で、特異点を閉じ込めていた空間だけは閉じた空間を形成します。 それは、私たちの宇宙では小さく折りたたまれ、物質を形成するために、素粒子を格納する次元となり、私たちはそれを観察することはできません、しかし沢山できた宇宙の一つまたは複数あるかもしれませんが、その次元が他の次元より大きくなり、まさに閉じた宇宙を作ってしまったのではないかと考えています。」
「それが、SpaceFlowerを使って入り込んでいる宇宙ってことかい」
「はい・・・」
「訳わからんよ。」
「でしょうね・・・私もです、ついでに面白い話しを知っていますか?」
「難しいのはいやだな」
「また時間ですよ。SpaceFlowerで移動中の宇宙船の乗務員達は、移動中でも時間の経過を感じると言いますが、実際あの装置に入って、別の装置から出て来た際、ほとんど時間経過が無いとの報告がありました。時間というたとえが悪いかもしれませんけど、私たちは感じる時間というものは、物理的な変化を見ます。しかし、そういう観点だともし、物理量の変化が一切ない状態を考えた時に、時間は存在しないという考えと等価になります。しかし、時間というものを、空間に対する抑制的な働きとみることもできます。たとえば、時間があるから、同じ空間を複数の物質が同時に占有することができないと考えられます。同じ空間を、複数の物質が存在する為には、時間をずらしていったん其処に存在したあとで、別の物質にその場所を明け渡すために、移動しなくてはなりません。しかし、時間が空間に対して抑制的な働きをしないなら、同じ場所を複数の物質が存在できると考えられます。」
「頭が痛くなってきた」
「閉じた宇宙では、全てはエネルギーの波の状態で存在しているのです。波なら複数の波が同じ空間で混ざり合いそして再び、離れて行きます。そして原初の宇宙-何もない空間では、粒子と反粒子が生まれます-これが、私たちの宇宙では、これが衝突すると対消滅を起こします。ただ、時間が無い空間では、同じ空間を二つの物質が同時に存在します。それは集まり、凝縮してより強いエネルギーになってゆきます。それに、生まれた粒子も実は量子状態で、観察されるまで、粒子か反粒子が定まっていないかもしれませんし・・・あの宇宙は、あるいは巨大な量子かもしれません」
「そんなのをまとめているのかい?」
「まぁ、そんなものです。馬鹿でしょ。もっとも、お迎えが来て、書く前にどこかに連れて行かれそうですけど」彼は、笑みをみせた。
「お迎え?」
「ナビゲータって知っています?」唐突に彼は、笑みを消した。
「ああ、SpaceFlowerで閉じた宇宙だか4次元空間だかを航行中に、行き先を案内する仕事だろ?」
「そうです」
「それが?」
「その、候補生として私は、教育を受けるように中央から指示を受けました」
「すごいね」
「ええ、これでSpaceFlowerの向こう側の空間の謎も、研究できると思っていますよ」
「ふうん、でもどこでそんな教育をやっているんだろ?」
「さぁ、宇宙船のチケットでは、ノード103まで来るようになっていますけど。そこから先に行くのか、その近傍の惑星に降りるのかは分からないですね」
「ノード103、そりゃどこなんだ?・・・何回乗り換えるのやら」
SpaceFlowerにはノードという番号が付けられている。それらは最初に発見された太陽系にあるSpaceFlowerをノード1と数え、見つけた順に番号が振られている。
理由は不明だが、あるSpaceFlowerから行ける別のSpaceFlowerは固定されている。それらは、ほとんどが1対2のペアであるが、一部は一つのSpaceFlowerから、複数の場所にゆける所もある。
そういう仕組みになっているので、枝分かれこそ少ないが、どうやらこの宇宙においてSpaceFlowerは、樹状構造のように、宇宙に広がっているらしい事が分かってきていた。
だが、この構造のため近隣のSpaceFlowerに行こうとしても、直接そこへは行くことはできない。まずノードを遡って行きたいSpaceFlowerに辿り付くことの出来る枝の根元まで行き、そこから目的地まで目指すのだ。
普通なら、何世代もかけて行く距離を、あっというまに行けるのだから、それでも申し分ないのだが、慣れてしまえば不便このうえない。
その上、一回のノードの移動で、必ずSpaceFlowerから出なくてはならない仕組みにもなっている。博士の移動にどれほど、ノードを出たり入ったりするする必要があるかを考えると、可哀想に思えてきた。
「なんか大変だね、若いのに」私は、ふらふらしている身の上だけに、自由に行動できないこの若者が不憫に思えた。
「全く、どうして中央のやることと言ったら・・・」
やがて、テントの外が明るくなった。大きなエンジン音が聞こえ、風が天幕をゆらした。
「おや、予想外にも救助が来たようですね」ウル博士は、笑みを漏らした。
「早いなぁ、博士ともう少し話して見たかったです。」私は、手を差し出し、彼もそれを握り返した。
私と、ガイドは大きなホバーに乗り込み、街の方へと向かった。
「いやぁ、噂には聞いていましたけど、まさか本当だったとは、おどろきましたぁ」とガイドが、小さくなってゆくテントを振り返って言った。
「なにが本当だって?」
「あの博士、もう30年もここに住んで、砂漠を放浪しているって親父から聞いていてねぇ、見た目は若いまんまだぁ」
-降ろしてくれ!-と叫びそうな心の叫びを唾と一緒に飲み込んだ。
以後、彼とは会っていなければ、消息も分からなかった。
こりゃ、あとで書き直し必須だなぁ・・・




