拾八章─事件解決─
東「あのな、黒瀬くん?突っ込むのをすっかり忘れていたが、何故彼女が犯人なんだね?犯人としては、一番怪しいのは、野村幸久ではないのか?」
準「確かに彼は、盗聴器を使って、良からぬ事を企んでいました。しかし今のところ、誰の目撃証言も出てはいません。それは何故か…下で発動した『鞭ナイフ』に、生徒が気をとられてしまうからですよ!!」
東「『鞭ナイフ』ぅ?なんだそれは。」
準「あれ、御存知ありません?津田健が使っていたパワーウエポンの一種で、そのままなら鞭のように伸びるナイフ、地面に刺せば百股のナイフになるという、強力な武器ですよ。雑魚を一掃するのに適していて、以前には多方面から自分に放たれた銃弾を全て壊したという、まるで無敵の盾のようなナイフですよ。」
鈴木「でもなんでそんなものが…」
準「それはともかく、彼女が入れ代わりを行っていたことは確実ですよ。さっきレシートを見たら、帽子は二つ、買われていました。同じ帽子を二つ買うことはありませんから、恐らくそれは入れ代わりを行う人物のため。頭の大きさが違ったりして、帽子に違うカタが着いてしまったりすると、入れ代わりを行うとき、不自然に見えてしまいますから。」
水野「フフッ。でもあなた、肝心なことをお忘れよ。私が殺したと言うのなら、目撃証言のためそこで入れ代わりをした人は、目が見える人。目撃証言は偽証じゃなくなるから、私は帰れることになっちゃうけど。」
準「いや。目撃証言は、怪しい人物に罪を着せるため、どちらか片方がすればいいだけのこと。要は盲目と入れ代わりがばれさえしなければ、この殺人は立派な完全犯罪になると思った…ですが盲目の人は、何らかの道標がなければ標的に辿り着くのは難しい。盲目の人にとってそれは、床の凹凸や音声。それを見つけるための、そんな怪しい動作をすれば、城田先生も、殺されるとは思わないまでも、不審に思って警戒するでしょう。つまり殺したのは、目が見える、入れ代わりを行った人物の方。」
水野「では、何かありますの?私が盲目だという証拠が、私が入れ代わりを行っていたという証拠が。そして私がその人と協力して、殺人を行ったという証拠が!」
準「ありますよ?盲目は先程も言った通り、医者に問い合わせれば判りますし、入れ代わりの証拠は、盗聴器にあります。この盗聴器によると、水野春来なる人物は、二人いることがわかります。」
水野「何故?」
準「二人とも声のトーンはとても似ていますが、微妙に違います。そこで声紋鑑定を行ってもらったところ、声紋が違っていました。恐らく、劇がある日だけ、入れ代わりを行っていたのでしょう。そして三つ目は…」
刑事「警部!!」
東「なんだ。」
刑事「黒瀬少年の言う通りです。二階の女子トイレから、水野春来さんが発見されました!」
準「そう。この計画の欠点。それは、どこかに注意を逸らさないと、そして盲目の方の水野春来がどこにいてもおかしくない、つまり拘束されていない状態にないと、実行犯の方の水野春来が脱出できないということ。二階は三年生の階で、始業前にそこから出てくると見つかってしまい不自然になる。まぁこれは、誰にでも言えることですがね。」
水野「フ…バカな娘。私の双子の妹ですよ、入れ替わりしてたのは。学費がどうにも足りなくて、公立に行こうにも妹は受かれなかったので…それで、私がこれを計画して、上手くいってたんですよ。途中までは…あの女に、計画が露見するまではね!」
鈴木「それで二人とも退学になると思い、彼女を殺した?」
水野「そうです…でも、終わった後で気付きました。他にも知っている人間は、いるのだと。」
準「えっ!?」
水野「あの女が言ってたんです…『これは私ではなく、津田健には負けるものの、相当な切れ者の掴んだ情報だ』って…」
準「なんだって…」
準の脳裏に、女子供に暴言を吐く、津田健のクローンの姿が映った。
水野「でも残念ね。危険を犯してでも出てきていれば、ばれずに済んだかもしれないのに。」
準「いえ。それがなくても、解りましたよ。何しろ、目が見えないあなたが、わざわざ偽証をしに来た時点で、犯人だと睨んでいましたから。見抜かれるリスクを犯してまで偽証をしに来る理由は、他人に罪をなすりつけねばならない相当な理由があるということ。それは自分の身内や親友、そして自分が犯人であること以外にありません。親友の戸張さんは連れてきたし、この島には基本、親はいませんから、残るは自分か、兄弟。この場合は、どちらも犯人ということになりますから、盲目と入れ代わりが立証できれば、あなたが犯人であるという結論に至ったのですよ。それに…」
刑事「警部!被害者のポケットから、こんなものが!」
健「さてと。敵から奪った拳銃四丁を、どうするか。まぁでも、予備として持っときゃいいし、敵のアジトの特定が、優先かな。」
背後から突然、声が。
お婆ちゃん「その心配は、ありゃせんよ。」
健「うわっ!」
お婆ちゃん「このくらいで驚くでねぇぞ。のぅ?」
宰「一人で乗り込むつもりだろうと、満場一致でして。」
健「ハハ…やっぱりオメー等の目は、誤魔化せねぇってわけか。」
優「あぁ。もうずいぶんと一緒にいる、仲間だからな。」
お婆ちゃん「それに、心配せんでも、アジトぐれーわかっちょるわい。大きな御屋敷。長田家じゃよ。」
鈴木「こっ、これは…」
東「とっ…特待生での、入学許可証…」
水野「なっ、何で!?どうして!?」
準「城田先生は、あなた達の事を知った上で、入学させてくれようとしてたんですよ。妹さんの演技力は確かなもので、将来女優になることを見越して、学校としてもそれを自慢できれば一挙両得ですからね。」
水野「そっ…そんな…そんなことって…」
名女優の目から、涙が溢れる。
そして彼女は、机に突っ伏して、泣いた。
部屋の中には、彼女の泣く声だけが、こだました…




