拾八章─村娘の恋⑨─
翼「おい凖、これは一体、どういうことなんだ!?君に呼ばれて来てみたら、『鞭ナイフ』が校庭に─」
凖「わからない!だが殺人の動機を作ったのは、おそらく…」
翼「津田健!?そんな馬鹿な!」
凖「だけどお前、それ以外に何か、合点のいく考えが…」
翼「だけど、彼に限って、殺人の動機なんて…それに、何で君は、彼が動機を作ったと思うんだい?『鞭ナイフ』にしたって、他のナイフ戦闘科の─」
凖「いや。ここは、クローンに協力することでコネを得て、武器を取り返したのかもしれないと考えた方が自然だ。他の生徒にコネがある確率は、極めて低い。」
翼「でも、それだけじゃないか!それだけで、何でそうだと言いきれるんだ!!」
凖「犯人の供述に、妙な所があったんだ。城田先生や学校が盲目のことや入れ替わりのことを知ったのは、ある筋から、津田健や僕には劣るものの、かなりの切れ者からの情報らしい、とね。切れ者と判れば、わざわざ津田や僕を引き合いに出す必要はないと思わないか?」
翼「た、確かに…でも」
凖「それはつまり、引き合いに出せばメッセージになると思ったからだよ。少し前にその情報を得た人間が、『突き止めたのは劣化クローンである』と、分かる人にだけ分かるように、伝えるためにね!」
翼「だけど、彼等は十分、速かったぞ。この前みんなで南東へ行った時、僕らが着いた頃には既に、彼等は到着していたじゃないか。」
凖「いや、彼は神なんだろう?僕たちとか言わさせる気がないのなら、体だけ精巧に造って、頭だけ手を抜いて造ってもおかしくはないさ。」
翼「けど君は、前に彼と─」
凖「あの時は、奴は人から聞いた情報を元にして喋っていただけで、切れ者じみた事は何一つとして言っていない。本物はあくまで、出てこない気だろうしな。」
翼「だが─」
凖「じゃあ何だって言うんだ!?奴は、轟桜を、闇の底に閉じ込めているんだぞ!?そんな奴を信じる根拠が、どこにあるっていうんだ!?」
翼「あるさ。たった一つだけ。到底信じきれないような、闇に満ちたドロドロの推理だがね。」
健「ここが長田邸か。」
お婆ちゃん「ほうじゃ。」
優「んじゃ早速、」
流「出陣ですね。」
皆で門を跳び越え、ドアに突進して蹴破ろうとする。
だが、あと1㎜、足がドアに届こうかというその瞬間─
大小二つの檻が落ちてきて、一行を分断した。
健「なっ、何だこりゃ!」
ワル「お前ら、侵入者が来ることを予測して、作っておいた罠さ!」
扉の向こうのその声は、一行を嘲笑するかのように笑っていた─




