氷魔将軍と極上サウナ飯〜【七十二変化】で最強の鉄板と化し、狂気食材を『肉椎茸ステーキ丼』に昇華する〜
氷魔将軍と極上サウナ飯〜【七十二変化】で最強の鉄板と化し、狂気食材を『肉椎茸ステーキ丼』に昇華する〜
ポポロ村の背後にそびえるポポロ山。
そこには、アバロン魔皇国の『元・氷魔将軍』であるスアイが、自らの氷魔法と重機を駆使して開拓した極上のスキーリゾートと、大自然のサウナ施設が存在する。
彼女は「寒いのにビキニアーマーを着せられる魔王軍のセクハラ風潮」にブチギレて退職届を叩きつけ、タローマン(ホームセンター)のツナギを着てガチキャンパー農業女子へとクラスチェンジした、型破りな超絶美女である。
「あー、世俗は今日も騒がしいですわね。でも、サウナ上がりのこの気怠さ……最高ですわ」
首にタオルを巻き、ツナギの胸元を無造作にはだけさせたスアイが、俺の厨房のカウンターにどっこいしょと腰を下ろした。
洗いたての銀色の髪から水滴が滴り、火照った白い肌が色気を放っているが、本人は全く気にする素振りもない。
「あんたが、最近村で美味い飯を出してるっていう料理人? ロウリュを3セット決めて、極限まで汗をかいてきましたの。……今の私のカラカラの胃袋を、塩分と脂と極上の旨味で満たしなさいな」
「いらっしゃい。サウナ上がりの『サ飯』だな。任せておけ」
俺――クウゴ・タイセイは、タオルを頭に巻き直すと、厨房の奥から本日の食材を取り出してきた。
ポポロ村の狂気的な特産品の一つ、『肉椎茸』だ。
見た目は巨大な椎茸だが、厚みが5センチ以上あり、焼くと最高級の霜降り肉とキノコの芳醇な旨味が融合するという、トンデモ食材である。
「おや、肉椎茸。良いチョイスですわ。でもあれ、調理が素人には不可能ですのよ?」
スアイが呆れたように息を吐く。
「肉椎茸は、表面を数千度の超高温で一気に焼き固めないと、中から旨味が全部逃げ出してしまう。かといって火が強すぎればただの炭になる。……並の鉄板や魔導コンロじゃ、あの分厚い食材のポテンシャルは引き出せませんわ」
「よく知ってるな。その通りだ」
俺はニヤリと笑い、自分の髪の毛を一本引き抜いた。
「並の調理器具じゃ無理なら、俺自身が『最強の調理器具』になればいいだけの話だ」
「……は?」
ふっ、と髪の毛に息を吹きかける。
【身外身の術】によって、俺の横にもう一人の俺(分身)が現れた。
そして、分身の俺は、仙術の印を結ぶ。
俺に宿る【齊天大聖・孫悟空】の権能。あらゆる生物・無生物へと姿を変える、神話の絶対魔術。
「――【七十二変化の術】」
ポンッ! という煙と共に、俺の分身は、厚さ10センチ、純度100%の『超極厚・魔導チタン鉄板』へと姿を変えた。
さらに、俺(本体)の口から【仙術・三昧眞火】を吹きかけ、その鉄板を瞬時に摂氏数千度という超高温へと均一に加熱する。
蓄熱性、熱伝導率、温度の均一性。どれをとってもこの世に二つとない、神話級の調理鉄板の完成である。
「なっ……!? 分身が、鉄板に……!? あなた、自分の魔法を何に使ってますの!?」
「料理に決まってるだろ。いくぞ」
驚愕して立ち上がるスアイをよそに、俺は分身が変化した超極厚鉄板の上に、分厚い肉椎茸を豪快に叩きつけた。
ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!
凄まじい焼き音が厨房に響き渡る。
完璧にコントロールされた超高温が、肉椎茸の表面を一瞬にしてキャラメリゼし、旨味を内部に完全封鎖する。
俺はそこに、ポポロ村特産の『醤油草』の絞り汁と、すりおろしたニンニク、そしてたっぷりのバターを投げ込んだ。
「あぁっ……! な、なんて暴力的な香り……っ!」
焦がしニンニク醤油とバターの香りが、サウナ上がりで飢餓状態にあるスアイの鼻腔を容赦なく強襲する。
彼女は思わずカウンターに身を乗り出し、ゴクリと大きく喉を鳴らした。
「付け合わせの千切りキャベツもいるな」
俺は傍らに置いてあった『ネタキャベツ』を包丁で刻む。
『ギャーッ! やめて! 隣の領主は愛人が三人もいて、全員に同じデザインの指輪を渡してるのよォォォッ!』
包丁を入れるたびに、ネタキャベツが三面記事級のゴシップを大音量で叫び散らす。
スアイは「あら、あの領主、奥様には頭が上がらないと聞いてましたのに。傑作ですわね」とケラケラ笑っている。狂気食材の悲鳴すら、この元・魔将軍にとっては良いスパイスらしい。
「よし、焼き上がりだ」
俺は、熱々の『米麦草』の白飯の上に、細切りにしたネタキャベツを敷き詰め、その上に、絶妙なミディアムレアに焼き上がった肉椎茸のステーキをドンッと乗せた。
仕上げに、鉄板に残ったニンニクバター醤油のソースを上から回しかけ、刻み海苔とワサビを添える。
「お待ち。クウゴ特製『肉椎茸のガリバタ醤油ステーキ丼』だ」
「――――ッ!!」
ドンブリを前にした瞬間、スアイの瞳のハイライトが消えた。
彼女は無言で割り箸を割り、分厚い肉椎茸のステーキと、ソースの染みた白飯を一緒にかき込み、大きく口を開けて頬張った。
サクッ……。ジュワァァァァァッ。
「んんんんんんんっっっ!?」
スアイが、ビクゥッ!と全身を大きく震わせた。
表面はカリッと香ばしく、中は驚くほど柔らかい。噛み締めた瞬間、霜降り肉のような強烈な脂の甘みと、椎茸特有の滋味深い旨味が、口の中で爆弾のように弾け飛んだ。
そこに、焦がしニンニク醤油のジャンクな塩気と、ワサビの爽やかな辛味が追い打ちをかける。サウナで失われた塩分とミネラルを、細胞の隅々までが歓喜の悲鳴を上げて吸収していく。
「あぁ……っ、ダメ……これ、美味し、すぎます……っ」
元・魔王軍幹部の威厳など、そこには欠片もなかった。
スアイは頬を紅潮させ、額に汗をにじませながら、一心不乱にドンブリをかき込む。
「はふっ、はむっ! お肉の弾力なのに、キノコの旨味……! ソースを吸ったキャベツとご飯が……止まりませんの……っ! あぁっ、胃袋が……満たされて、溶けていきますわぁ……っ!」
あっという間にドンブリを空にしたスアイは、ほうぅ……と深く、魂の底からのような熱い息を吐き出した。
彼女の全身からフワァッと脱力感が抜け、完全に『ととのった』恍惚の表情を浮かべている。
「……クウゴ。お酒、ありますの?」
「サウナ飯のシメといったら、これだろ」
俺は、冷凍庫でキンキンに冷やしておいた『イモッカ(太陽芋のウォッカ)』をロックグラスに注ぎ、そっと差し出した。
「ふふっ……分かってますわね。最高ですの」
カラン、と氷を鳴らし、スアイがイモッカを煽る。
アルコール度数40度の強烈なキックが、満腹の胃袋とサウナ上がりの火照った身体を撃ち抜く。
「……決めましたわ」
グラスを置いたスアイが、とろんとした色気のある目で俺を見つめてきた。
「私、今日から山のサウナ小屋と、この食堂を往復する生活にしますの。貴方の料理……完全に、私の胃袋を捕らえましたわ」
「毎度あり。しっかりツケは払ってもらうからな」
「ええ、もちろん。マサカ茸狩りの売上で、いくらでも払ってあげますわ♡」
スアイが艶然と微笑み、俺の手をギュッと握ってきた。
『ギギギギギギギギ……ッ!!!』
――その瞬間。
厨房の奥から、怨念がこもったような凄まじい歯ぎしりの音が聞こえた。
振り返ると、お玉をへし折る勢いで握りしめた村長・キャルルが、般若のような顔でこちらを睨みつけている。
「クウゴさん……? 私という村長がいながら、他の女の人と手を握るなんて……お粥の時と言ってることが違いますよね……?」
「いや、俺はお粥の時も何も言ってないが……」
「いいえ! 私には聞こえました! クウゴさんの手料理は私だけのものです!!」
ヤンデレのスイッチが限界突破した月兎族の村長と、氷魔法で周囲の空気を冷やしながら「あら、良い男は共有財産ですのよ?」と余裕の笑みを浮かべる元・魔将軍。
厨房の温度が、物理的に急上昇と急降下を繰り返している。
「(……また面倒なことになったな)」
俺はため息をつきながら、明日仕込む予定の食材のリストを頭の中で更新するのだった。
逃亡社畜の料理人ライフは、どうやら世界一騒がしいらしい。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
「分身が鉄板になるのズルすぎるww」
「肉椎茸のステーキ丼、夜中に読むんじゃなかった……(飯テロ)」
「キャルルのヤンデレ化が止まらない!」
と少しでも楽しんでいただけましたら、
ページ下部にある**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にして応援していただけると、クウゴの料理の腕前と作者の執筆スピードが限界突破します!
皆様からの『ブックマーク登録』と『星評価(評価ポイント)』が、本当に一番の励みになります!
ヒロインたちの胃袋を無双するクウゴのスローライフを、これからもどうか応援よろしくお願いいたします!




