猫は宝探しは得意です。
「ここか?特に変わったところが無いが」
デルテは岩の壁を触りながら確認している。
「ちょっと待ってくれ〈探索〉」
入り口と反対側にあった石が開閉ボタンのようだ。罠は無く、普通に押せば開く仕組みだ。
「これで開く。開けるぞ」
「おう!いいぜ」
早速、開いてみたら、小さな部屋に宝箱が一つ置かれてあった。罠は無く、モンスターでも無かったので中を開くと、銅貨がぎっしり入っていた。
「おいおいおいおいおいおい!これは幻の隠し部屋か!?」
デルテがかなり興奮しているって事は珍しいんだなこの部屋は。
後で聞いたが、数十年に一度しか発見できない小部屋は『幻の隠し部屋』と言われており、宝箱の品などは縁起物とされ、隠し部屋を拝む事が冒険者達の聖地巡礼のような行為であり、発見することがロマンと言われている。
「とりあえずスキルが有るから、俺が箱ごと入り口まで持って移動できるが」
「おっおう、こりゃ一度ギルドに戻らんとならんな」
こうして急遽ダンジョン説明会は中止になってしまったが。希望者は後日無料でダンジョンの続きに参加できる事が決定となり、宝箱は発見者の俺が「みんなで等分」とした。
デルテも一緒に等分だ。一人500ミューレほどの臨時収入になった。
「良いのか?お前の功績だぞ?それに俺まで分配されて」
「新発見のご祝儀だ。縁起物はみんなで分ける」
そう伝えておいた。だって俺自身もっと大金持ってるから、そんな珍しい発見品は皆んなで分ける方が良い。
それに、どう見ても同じ参加者である子供達は、ほぼ裸の猫でも分かる程に貧しい格好をしていたからだ。なので、ご祝儀代は装備品などにして配ってもらうようにギルドに頼んでおき、全員銅貨1枚はお守りとして渡した。
ここには、銀行の様にお金を預かってくれるシステムは10000ミューレを超えないと無いので、僅かな金額でも悪い奴らに取られる前に防具などを購入しておく方が得策だ。
隠し部屋の発見で、俺は面倒な手続きを省く為、冒険者ギルドに登録することになった。
その後、ギルドが調査したものの、隠し部屋は消えて無くなっていたそうだ。
延期となったダンジョン講習は他のダンジョンへと場所を変えて再度攻略する事になった。
あれから前回潜ったダンジョンは聖地巡礼が原因なのか、やたらと人が増えた事もあり他の『レベル1』ダンジョンに変更となった。
「ここはスライムと大ネズミだ。『レベル1』だが3階層まであるので、予定は3階層入り口までだ。前回、説明が出来なかったが、ダンジョンコアの前には必ずボスである強力なモンスターが存在する。勝利すれば特別ボーナスが貰える。その時、横に移動用の魔法陣が現れるので、そこに入れば一階層に戻れる。だが、一度入ると門が閉まる仕組みになっているので、自信がなければ門前で登録をし、一度帰って再挑戦する事がオススメだ」
前回の臨時収入で皆んな新たな装備が追加されたので嬉しそう、と言うよりヤル気満々だ。
「今回はどうだ?」
デルテが聞いてくる。
「1階層には無いな」
「よし、この前のように順番に倒して進めて行くぞ」
新しくなった武器が良いのか、前回より速いペースで順調に進んだ。
2階層に入り、早速【3Dマッピング】すると、
「隠し部屋を見つけた」
とデルテに伝える。
「マジかよ。まさかギルドも2回も発見するとは思ってもみなかったが、どこら辺だ?」
「2階層の真ん中辺り。3階層の階段経路から外れた通路の突き当たりだ」
「ん〜今回は3階層に登録したら一度ギルドに戻り、報告してからがいいな。悪いが付き合ってくれないか」
「別に構わないが、夜遅くなるなら明日以降にしてもらいたい」
「武器の切れ味が良いのかサクサク進んでる。この調子なら日が高い内に終わるはずだ」
無事に3階層入り口に登録終了後、一度ギルドに戻り再度ダンジョンへ向かう事になった。
「ここだ」
入り口の仕掛けを解除して中に入る。
今回は副ギルド長さんも一緒について来ている。
「本当に隠し部屋が存在するとは!」
中は小さな小部屋だが、以前より箱の数が多いが、
「真ん中はモンスターだな」
明らかに違う気配を漂わせてる。姿を宝箱に似せても、バレバレだ。
「ミミックだと分かるのか!」
あの宝箱モンスターの名前はミミックだと判明した。
「倒して良いか?」
「大丈夫か?推奨ランクは星3だが」
「問題ない」
「分かった。討ち漏らしたら対応するから問題ない」
「分かった。〈剣山〉」
土魔法を使用した。地面から鋭い針山が現れ、モンスターを貫く。
以前使用した風魔法の【斬撃】でも一人前レベルと言うなら、人前では同レベルの魔法仕様が良いだろうし、宝箱モンスターのミミックならこの程度で十分だ。
猫は難しい言葉が苦手なので、発動名をアレンジして使用している。
風魔法の【斬撃】は「切れる風」やら「シュッ」とか「シュッシュッシュッ」など強さを数で調節している。ちなみに土魔法の【剣山】は「トゲトゲ」が一番多い。
「原獣人は魔法が得意なのか?」
「多少は出来るが、個体差は有る。体が小さい分スキルで補っている。俺は魔法が得意だ」
少し片言口調で話す。猫さん達の喋り方を真似している。特に理由は無いが、俺が猫さんらしさを出す為だ。
お宝は貨幣と武器、それと
「おいおいおい!こりゃ、マジック袋じゃねぇか!」
「まさか、こんな浅瀬で出土するとは!」
異空間に繋がっている色々と収納出来る袋だ。そう、青い猫のロボットの先輩が使用している例のポケットだ。
「ウチのギルドに卸してもらえないか」
今、わざわざ冒険者ギルドの個室でデルテ、買取担当者、副ギルド長と話し合い中だ。
2回もレベル1の低階層での隠し部屋発見した事で、注目を浴びている俺への対応のようだ。
是非、マジック袋を冒険者ギルドに卸してくれと頼まれたので譲った。その代わり、こちらの条件を提示する。
グデデの大森林で狩ったモンスターの素材と日用品や食料の交換を頼みたいという条件だ。
「問題ないが、何を狩ったんだ?」
「名前は知らない。とにかくデカいやつだった」
俺は綺麗な巾着袋を出して、その中から幾つかツノや魔石などを出した。
「「「!!!!!」」」
モンスターの種類が分かりやすいように毛皮も出しておこう。
「ちょっちょっと待て!まず、その袋はマジック袋なのか!?」
あぁ、そっちか。
「そうだ、だからその袋は譲る」
俺な【時空間魔術】【時空間魔法】の両方を取得済みだから、【時空間魔術】を【付与】で袋に固定すれば、マジック袋が量産出来るので、子供用のポシェット型のカバンをマジック袋にして、連れ去られメンバーのほぼ全員に配給済みだ。皆んなおやつとして、キャットフード(ドライ)を入れてカリカリ食べている。
「副ギルド長!これ、ブラックバッファローの角ですよね!こっちはライトニングディアの角と毛皮ですよ!」
「俺達の集落に突っ込んでくる奴らだ。壁を壊すのでやっつけた。問題あったか?」
なんか信仰する神の使いとか、特別な動物だったヤバい。ヤバそうなら街から逃げて、ここへ近づくのは避ければいい。
「いや、問題ない。こいつらの討伐には国に援軍を要請するレベルだからな、驚いただけさ」
「で、何が欲しいんだ?これだけの素材だとかなりの額になるはずだ」
「食材は鳥系の肉。俺達のサイズにあったフード付きマントとブーツを出来るだげ沢山だ」
「どれぐらい必要だ?枚数によってかなり時間はかかるぞ」
「鶏肉はその時あった分でいい。マントとブーツは1000は欲しい。急ぎではないから時間は問題ない。ただ、人間が信頼できなかったからな、店屋に直接注文を出せずにいた」
騙されて、連れて来られた事は知られている。なので、信用できるかを問いてみた。
「分かった。ギルドが責任を持って仲介しよう。ところでそのマジック袋はお手製か?」
「ウチの一族のな。成人の証で王様から貰える」
嘘です。
『騙されやすい』猫達の対策として考えたのは『すごい王様がいるんだよ』説だ。
少しでも凄い王様という存在をアピールして、出来るだけ街では冒険者ギルドに後ろ盾になってもらう作戦だ。
出来るだけ『すごい王様』が存在するように思わせる必要があり、人間達には猫達の裁決は王様にあると認識させる事が重要だ。架空の王様、がんばれ!
「今回の品では、マントとブーツは少し代金が足りないが、こちらも一度に準備は出来ないので構わない。次回の品はモンスター素材にマジック袋も対象にしてもらいたい」
「ん〜、この素材の金額と、その袋で価値とマントとブーツの金額を知りたい」
「しっかりと査定はしてないが、おおよその金額はー」
素材は370000ミューレ、マジック袋は50000ミューレ、マントとブーツは200ミューレと450ミューレほどだと。
「分かった。ここに来たときは差額分の品を持ってくる事にする」
「まずは明日にでも、靴屋達を呼んでサイズを計らせるがいいか?」
「明日は用がある。明後日ていいか?」
「問題ない。では明後日の朝にこちらに寄ってもらおう」
明日は、猫達の餌を購入しまくる日だからな。
野良の代表猫の数匹には、スカーフ風に見せたマジック袋にキャットフードなどを入れてあるので、俺がいない時でも野良の食事は問題ない。もし、食材を独り占めしたらマジック袋は没収することになっている。たまのつまみ食いは目を瞑ろう。
安定した食材の管理するためには猫でも最低限のルールは必要だ。
カラスさん達も欲しいと言われたので、スカーフ型と普通の袋型を数袋用意した。
「ただいま、ミミ」
「おかえりに〜たん」
最近留守が多いからミミが甘えてすり寄ってきた。何気ない出来事を話したりして、一緒にまるまるとホッとする。
明日も頑張ろう。




