猫はフェイドアウトしたい。
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今回の物語も楽しんで頂けましたら幸いです。
「ロイ殿は何か希望されるモノはございますか?」
「欲しいモノは時間と会長職を替わってくれる人材」
「「…………」」
「それ以外でご希望されるモノはございませんか?」
領主様と一緒に登城して、宰相様とお話中だ。報奨希望を聞かれたので俺の一番の願いを言ってみたが、ダメだった。
そして周りに困った顔をする人間を増殖させた。すまんな。
「なかなかに難しいと言うか、なんとも言えない要望ですね」
「うむ、例えば時間だけなら王都にロイ殿の屋敷を頂き、王都での取引はそこでのするとかだろうか」
宰相様と領主様達が他の品として屋敷を出す。
「屋敷の管理が加わって大変だ。だったら城への食材卸しを簡単にしてもらえる方がいい」
「それでは報奨にはなりません」
困った。欲しいモノが無い。別に無欲では無いが思いつかない。
「例えば国中のダンジョンに俺達が入るのは自由にするとかはダメか?」
「それぐらいは構いませんが、それはオマケ程度にしかなりますね」
「報奨とするには内容が小さ過ぎる」
なかなかOKが出ない。
「じゃ〜、作物育てたいから実験できる広い土地が欲しい」
「グーデルンでは既に許可が降りておりますよ」
「そこは調味料を作る場所と、猫さん達のお家予定だ。調味料に使う野菜を育てる専用の広めの土地が欲しい」
思い切って野菜作りができる場所をお願いしてみた。
何か宰相様に考えがあるみたいた。
「それはグーデルンの街から離れていてもよろしいのですか?」
「勝手に塀や建物を作って良いなら別にどこでもいいぞ。手伝ってくれる人間達が近くに居るなら給金を出す」
「そうですかわかりました。そのように手配いたします」
報奨としてグーデルン近くの王領地と一つの村が渡される事になった。
俺はメルーベン王国の王国民ではないので、グーデルンも同様に土地の所有者には成れない。
なので、形式は『土地の貸し出し』としての契約となるので、転売は出来ないが永年使用許可された土地だ。
なので扱い的には王領のままだが、村の人間はグルン獣人国に貸し出す形となる。
正式な領地ではないので俺が税を受け取る権利はないが、村の住民はグルンへの貸し出し期間中は、国への税の徴収は半分まで下げる代わりに、村人は俺の畑の手伝いを3ヶ月間するという労働力としての税を頂く事に決まった。
かなり広い土地のようだが、飛び地だった事や村自体は普通の大きさが一つだけだった事もあり、豊かな土地なので村の取れ高としては少なくはないが、これと言った特産も無い普通の村のようだ。
王領だが近くには他の王領地が無く、ここだけ孤立した村が一つだけだった事もあり、管理が大変だった場所のようだ。
報奨も決まり、解放された俺は次の仕事をする。
「タカシ、お待たせ」
「大丈夫問題ないよ。じゃあ早速行きますか」
本日の買い出し部隊長のお仕事は、王都のパーティー用のケーキの予約をしておいたので、5店舗を梯子しながら受け取りに行く。昼前に王宮から出れたので、一緒に回る事にした。
意外と街にケーキ屋さんが多い事に驚いた。
「ケーキの型と泡だて器、ケーキサーバーやトングもまとめ買いしておいたよ」
「助かる。向こうの世界にはトングが存在しなくて、取り分けるの大変だったんだ」
テラザ達は手渡しでも問題ないが、貴族や王族にはそうはいかない。
ケーキの型は料理長さん達が使う予定だ。
注文しておいた大量のホールケーキやショートケーキ以外にも、一口タイプのプチケーキや焼き菓子なども、一緒に大量購入していく。
「調味料系は業務系のスーパー数店舗で大量に注文しておいたから、僕のストックで賄えると思うよ」
「いつもありがとうな」
「此方こそ、あとはケーキに使う材料だったよね。あんまり詳しい事知らないからなぁ」
「本屋に行って簡単な作り方が載った本を探してみるよ」
途中で本屋に立ち寄ってもらい、簡単なケーキの作り方の本を数冊を購入する事にする。
季節的に、バレンタインシーズンでお菓子作り特集が組まれており、たくさん種類が並べられている。
タカシは気まずそうに俺と一緒に入って行く。
初めはギョッと若い人間のメスにみられてたが、俺を見ると何を思ったのか、誰も気にしなくなっていた。
「子連れパパさん偽装はここでも有効なんだな」
タカシが呟く。俺はいつまで子どもの年齢でいられるのか心配だと話したら、
「それって魔法で姿を偽装してるんだよね」
と言われて、はと気付く。
幾つにでも偽装できるが、身長的にも幼児しか無理だと言う事に気づいてしまった。
俺は永遠の幼児だった。安心と同時に愕然としてしまった。
「どんまいトノちゃん」
察してか、タカシが励ましてくれた。
本を無事に購入すると既に夕暮れになっていたので、本日はこれで終了とする。
「ケーキの材料は、僕も業務系で扱ってるか調べておくよ」
「ありがとな、また空きそうなら連絡するよ」
そう言って車から降りると近づいて来る人影に気付く。
「タカシ叔父さん!その子は誰?!」
いつもの公園の駐車場で車から降りると、タカシに向かって呼び掛ける若い青年の声。
「なっナオト!?」
どうやらこの人物はタカシの顔見知りのようだ。あっ確か家出してきた甥っ子ってナオトって言ってたな。
「お世話になります。タカシおじちゃんにプレゼント探しを手伝ってもらいました」
一先ず子どもっぽく挨拶しながら、頭をペコリと下げる。
「あっいや、どうも」
幼児に先に挨拶されてしどろもどろの青年。よく見るとまだ少年とも言える容姿をしている。
「タカシおじちゃんにお母さんのプレゼントの品を探すの手伝ってもらってます」
「へ〜は〜そうなんだ」
「ではおやすみなさい」
俺はこのままフェイドアウトする。
「待った!夕暮れ時だ。子どもだけなんて危ないよ!」
そう言って、ナオトが家まで送ると付いてこようするから困った。
「僕が送って行くから、ナオトは車で待ってなさい」
「俺が送ってくよ。ここら辺の道も覚えたから、迷わないよ」
「そうじゃない。知らないお前に送られるより俺の方が良いだろう」
そう言われてナオトは渋々車で待機になる。
公園が見えなくなると
「まさかナオトが居たとは気付かなかったよ」
ドキドキしている様子のタカシ。
「とりあえず、俺は勤め先のパートさんの子どもで、お母さんのプレゼント探しにタカシが付き合ってるという設定で」
「うん分かった。場所も変えたほうが良いかな」
「集合場所はタカシの家の駐車場かこの公園のままで良いんじゃないか、今度からは車に乗ってから人間になるよ」
まさかの目撃者が現れるとは、今後はもっと気をつけなければならない。
今日はドキドキしながら家路についた。
「ロイ!猫ダンスしよう!」
帰って早々にレンに捕まってしまい、猫の謎踊りは巷では『猫ダンス』として幼児達に人気の踊りとなっていた。
誰かが猫ダンスとして、あの訳のわからない踊りをそれなりにまとめたようで、音楽付きでちゃんと様になっている。
人間って凄い。
だが、『猫を無理に踊らせないように』と書かれた注意書きは、レンはまだ読めない。
仕方なくレンに身を任せながら、二本足で振り付けレッスンを受けている。
早く、ママさんこの状況に気付いてください。「な〜う」
引き続き、お付き合いくださいませ。
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【更新スケジュール】
火曜日・木曜日・土曜日 21時
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★同日 17時30分に更新★
『只今、異世界潜伏中です。〜脱獄したら、王様にジョブチェンジ?!〜』(おっさん多め)も宜しければお楽しみくださいませ。
こちらの作品は猫さんより1ヶ月先輩の初作品です。




