猫は人間のお茶会に出席する。
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今回の物語も楽しんで頂けましたら幸いです。
「登城は5日後の朝に成ります」
翌日、領主様のお屋敷に行くと、執事さんが今後の予定を説明される。ちなみに執事さんのお名前はセバルスだ。
記憶の俺が「惜しい!」と訴えている。何が?
「本日は、友好派の方々とのお顔合わせを兼ねてのお茶会となりますので、ご主人様、奥様とご一緒におでかけとなります」
話は聞いていたが、まさか王都に到着して翌日とは思っていなかった。
地方の貴族の到着日を考えてか、王都での懇親会としてのお茶会はどこでもこの時期だけは、新年まで2・3日おきに開催されるとの事だ。
「手土産は何が良いんだ?」
この手の事は最近では執事さんに聞いている。俺が選ぶより間違いない。
「そうでございますね。今回はお茶会でございますし、ロイ様がお持ちのプチケーキなる物がよろしいかと」
クリスマス時と年末年始時に大量に購入したプチケーキセットがまだ残っている。
イベント時期は大手ケーキ屋さんに大量注文しても怪しまれない。
イベント時期で無くても最近では、「誕生日会に使う」とか「会合に使う」と伝えれば、どの店も大して気にされない事が判明した。
「どのくらい、出せば良いんだ?」
「そうでございますね。今回は皆様との顔合わせを兼ねてますので、皆様がお召し上がりになる数の方がよろしいかと」
手土産によってはお茶会で出す事もあるそうだ。
今回は、マントだけで服は着てない。
字面がマズいだけで別に裸族ではない。いつもの格好だと言うことだ。
懇親会の新派閥である『獣人国友好派』は、元々『温厚派』が主体となっており、比較的穏やかな考えの持ち主が多い。
メルーベン王国は幾つかの派閥に分かれており、『温厚派』『中立派』『貴族派』『革新派』などが主な主要派閥として存在する。
中には『温厚派』『中立派』を中心に派生した『獣愛派』や『貴族派』『革新派』を中心に派生した『魔道派』などもあり、これらは国の運営に関する派閥とは違い、ほぼ同好会に近いサークル活動になっているそうだ。
ちなみに『獣愛派』は『獣人国友好派』に即賛同した方々だ。
中には、既に『毛が無いと寒いニャ』の洗礼を受けて、猫さん達を神の様に崇めたてて新たに『猫神派』なるものを発足した御仁もいる。『髪』だけにか?
到着したの公爵家はこれまた大きなお屋敷だ。
お茶会の主催である公爵様は、『温厚派』のまとめ役でもあり『獣人国友好派』の賛同者だ。
招かれるやいなや凄い歓迎だった。公爵様筆頭にやたら禿げたおっさんが多い。
夏でなくて良かった。
夏だと照り返しがあって眩しかったかもしれない。
そして奥様方は、クラベート夫人の肌艶と手土産のプチケーキに夢中のようだ。
「ようこそグルン獣人国のご使者殿」
「お招きありがとうございます。ロイです。猫です。敬語は使えません」
「良い良い、わしはこの館の主人のフランドリル・ライステットだ。この国では公爵の称号を賜っている」
公爵様は立派な髭を生やした恰幅の良い、優しそうな人間のおっさんだった。
残念なことに頭は寂しかった。
その後、お茶会だったのになぜか儀式のように、おっさん達が祈る様にして、俺にキラキラの頭を向けて跪く。
仕方なく俺はおっさん達の頭皮に【蘇生魔法】をかけまくった。
マジで『猫髪様』に成りそうだな。
よくわからない一連の儀式が終わると、ようやくお茶会が開かれた。
どうやら、夫人達とおっさん達で分かれた席でお茶を楽しむ。
そんで、俺は主催者の公爵様とレドラス様と一緒の席にいる。
「人間達のお茶会って変わってるな」
「いや、ロイ殿達の影響ですぞ♪」
「皆、待ち望んでいましたからね♪」
そう言ってフサフサになった髪を掻き上げながら、嬉しそうに♪を付けながら語る、フランドリル様とご長男のフレンドリル様。
ご長男のフレンドリル様は最近かなり薄毛が気になっていたようだ。
「我が家は代々若くして薄くなる家系でしたので、半ば諦めてたのですよ♪」
確かに、30半ばのお年頃。諦め難い気持ちがあったようだ。
「薬師ギルドが開発した育毛ポーションを、どうしても手に入れたかったのですが、一足遅く無念に感じてましたよ」
人気過ぎて発売と同時に売り切れ状態だ。
「儂もじゃ!友がどんどんフサフサになっていくのを眺めているだけで悔しくてのう。余りに自慢された時は、長年の友だが殺意が沸いたわい」
大変だね人間の頭皮事情って。
「それにしても、ロイ殿がお持ち下さったプチケーキと言われる物は、とても美味しいですね」
「うむ、儂も初めてじゃわい。この菓子なら柔らかく、年老いた先代達も召し上がれるだろう。それにしてもグーデルン殿は羨ましいのう。このような物をいつも手土産として召し上がれるとは」
「いえいえ。私も領地でお土産としていただきますが、いつも妻と娘に取られてしまい、今回の旅の途中に頂いただけですので」
そう言って女性陣のエリアを見つめ、置かれていたはずのプチケーキが置かれた器が空になっているのを見つめる。
そんな女性陣達が、ずっと俺を見ているのは気が付いているので目下、俺は振り向かないでいる。
「ご歓談中失礼いします。旦那様、奥様からでございます」
そっと紙が渡された。
「……………」
公爵様。しばし無言で紙を見つめる。
「ご歓談中失礼いします。フレンドリル様、ベリーネ様からでございます」
同じくして、フレンドリル様の奥さんから何やら紙が渡された。
「……………」
こちらもしばし無言で紙を見つめる。
俺は復活するまで、お茶を啜る。この紅茶美味しいなぁ。
「…ロイ殿。済まないがプチケーキの余分はお持ちかのう?もしお持ちならば、譲ってはくれないかのう」
猫でも分かる。奥様方がプチケーキの催促をしたのだと。
向こうにはグーデルン夫人のクラベート様が居る。
グーデルン家は俺が高機能なマジック袋を使用しており、今回のお土産用の品を多量に持ち歩いてる事も知っている。
初めから言い訳できる逃げ道を塞がれた。
「…先程と同じ量でよければ」
「済まんな」
公爵様も奥様には勝てないんだね。
「済まない。私の妻から髪を洗う石鹸についてなんだが…お譲りいただけないだろうか」
こっちはシャンプーか!
原因は分かる。
道中に使った家のお風呂に装備されているシャンプーとトリートメントを使用したからだ。説明すると早速、侍女の一人が試したら凄かった。髪の艶が全く違うのだ。
「前々から、気になってましたのよ。キャット商会の子ども達がとっても艶々になってるのが。ですが若さと食事などの環境の変化でと思ってましたの。ところが、あの冒険者ギルド長のレフルド殿まで髪が艶めいてるじゃありませんか!質問しても『風呂に入るようになった』とか「備え付けの石鹸で洗った』としか答えが帰ってきませんでしたのよ」
それは仕方ない。皆んなその程度しか興味がないんだからな。
俺が毎日風呂入って綺麗に洗えって言われて洗ってるんだし、皆んな洗ったらか綺麗になったぐらいしか思ってないんだから、正直、綺麗の基準が分からない。
そんな夫人達が毎日シャンプーとトリートメントを使用するから、追加補充も必要になった。
そんな夫人の髪を見ての催促だった。
「これ、王妃様にプレゼント予定なんだけど」
「うむ、グーデルン夫人は良しとしても、流石にまずいのう」
「ロイ殿。数は有るのかね」
「数も微妙だ。数日休みをくれたら、王様に頼んで用意はするが」
「ならば、王妃陛下に献上後、我が家から各屋敷に届けると言うことでよろしいかのう」
プチケーキとシャンプーのお代は公爵様が出してくれる事になった。
その後、シャンプーで抜け毛予防にもなる知ると、今度はシャンプー実践会となり盛り上がった。
人間のお茶会とは『お茶を飲めない会』だと知った。
変わってるな。
引き続き、お付き合いくださいませ。
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【更新スケジュール】
火曜日・木曜日・土曜日 21時
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★同日 17時30分に更新★
『只今、異世界潜伏中です。〜脱獄したら、王様にジョブチェンジ?!〜』(おっさん多め)も宜しければお楽しみくださいませ。
こちらの作品は猫さんより1ヶ月先輩の初作品です。




