猫は鶏肉が大好きです。
「今は忙しい。1日なら付き合うが、それ以上は約束できない」
冒険者ギルドからの依頼が出された。
断るつもりだっだが、鶏肉が出るダンジョンと聞けば話は別だ、参加する事にした。
「ダンジョンレベルは6だから、星6チームと一緒でなければ単独では下層までは許可されない。今回、問題なしと評価が出れば星6にしてやるから、いつでも入れるぞ」
猫は誘惑に弱いものだ。
「星6のチーム『黒獅子』のリーダーをしているクロムだ。個人評価は星5で剣士だ。よろしく頼む」
「ライトだ。星4で、同じく剣士だ。よろしくな」
「テラザです。星3です。回復担当です。よろしくね」
「テテトだ。星3の炎系魔法士だ。よろしく」
「マーヤ。星4、斥候。戦闘時は弓も使う。よろ」
自己紹介した『黒獅子』は、40手前ほどのクロムをリーダーに、10代後半から20代前半の若者4人で構成されたチームだった。
「ロイ。猫で星5。魔法全般。よろしく」
「聞いていると思うが、10階層まで行けば単独行動が認められる。俺達は基本的に手は貸さないが、危険だと感じたら俺達がフォローする。無理は禁物だ。引き下がるのも生き残る手段だ」
リーダーのクロムは、筋肉ムキムキの常識人のおっさんだ。
(あの筋肉かっこいいな〜)と思いながら、無意識に自分の腹をつまんでしまった。ムニッ
グーデルンの街からダンジョンまでは定期的に馬車が出ている。
「ダンジョンの入り口には店屋も出ているから、足りない物はそこで買い足せば良い」
「普段はどれぐらいで階層をクリアするんだ?」
「ダンジョンによるが、高ランクの浅瀬だと、そうだな早くて5日。下層だと10日から一月かかる事もある」
そんなに他のダンジョンはかかるのか!?ダミー置いといて良かった。
「向かうダンジョンは全17階層で、10階層までなら一階層あたり3日ほどでクリアできるはずだ」
今回のダンジョンについての説明を受ける。
「モンスターはコカトリスばかりで、上層階は小型だが毒持ちだ。下層になると猛毒と石化持ちも現れる」
うむ、ぐるぐる穴ダンジョンもコカトリス階層があり、大量の鶏肉ゲットできた。今回も大量の鶏肉が期待できる。
「ねえねえ、ロイって隠し部屋見つけたんだよね!」
「ああ、そうだ」
テラザの問いかけに答えた。既にギルド内では有名になっている。
「すごいな〜。一度でいいから発見してみたいんだよね〜。今回も期待しちゃうな〜」
「おい、そんなに簡単に見つかるもんじゃねぇぞ。数十年に一回しか発見されないやつだぜ、そんなに直ぐに見つかるもんか」
テラザの話にライトが否定する。もしや恋人同士か!リア充か!?
「お兄ちゃんは夢が無いな〜。夢が無いと冒険者なんて出来ないよ!ねえ、お父さん」
テラザがクロムに意見を求めた。
「まあな、だが夢ばっかりじゃなく現実もちゃんと見ろよ」
ご家族様でしたか。記憶の俺が喚いてたので『リア充もげろ』と呪詛を掛けなくて良かったです。
「では入るぞ。ロイ、地図は持ったか?」
「スキルでわかるから問題ない」
「そうか!それは凄いな。ではロイが先頭で出発する」
歩いて行く…と遅いので飛んでみたら、驚かれた。知らない冒険者にも驚かれた。
「ひ、飛行魔法を取得してるなんて!凄いな!」
今まで、無口だったテテトが興奮気味に問いかけてくる。
「歩くの遅いから飛んで進むがいいか?」
「良いが、魔力は大丈夫か?」
「問題ない、基本いつも飛んでるから」
自分で言って何だが、いつも飛んでる猫って?と思ったが気にしたら負けだ。さっさと進もう。
「〈完全切断〉」「〈完全切断〉」「〈ライフル〉」
「凄いな。道を迷わず進んでいるし、コカトリスも一撃で討伐してる」
「ねぇ、さっきから使ってる魔法って何系なの?どっちも見た事無いんだけど」
テラザの問いにテテトも大きく頷く。
「空間魔法と大気魔法だ」
「「「「「え?空間魔法と大気魔法?!」」」」」
「俺の師匠が編み出したスゴ技だ」
ドヤ顔をする猫。
「確かに!そんな魔法を教えてくださるお師匠様は、確かに凄いですよ」
「出会えて良かったと思う」
毎週ありがとうございます。師匠!
「進みが早すぎだな。もう2階入り口か」
駆け足で進んで行った。お肉と魔石回収以外はノンストップで進んだ。
「登録して一度2階層を覗いてから、明日また潜っていいか」
「問題ないぞ」
2階層を覗いたが特に変わりなく1階層と同じく洞窟風の迷路になっていた。
(確かに地図がないと迷子になるな、いや地図があっても怪しいな)
道は広いが目印や隠れる岩などが存在しない為、戦ってるうちに方向が分からなくなる可能性がありそうだ。
だが、コカトリスはかなり大きな鳥型モンスターなので、こちらからは見つけやすい。
遠距離攻撃が可能だから、苦労しないでサクっとやっつけて、鶏肉をゲットだ!
「では、明日もここで待ち合わせだ」
グーデルンの入り口に到着、解散となった。
俺からしたら、ダンジョンより乗合馬車での移動の方が、かなりハードに感じるのだが。
「分かった。では明日」
今回の依頼は、肉を納めるという依頼では無いので、ダンジョンの品は納めなくても構わないそうだ。
今日は鶏肉を持ってそのままグルン村に行き、肉を渡してから帰る。
(今日は、タカシに頼んでおいたキャットフードを貰いに行く日だったな)
棲家に戻る前にタカシの家に立ち寄る。
「にゃ〜(居るか?)」
アパートの奥から足音が聞こえてくる。
「やあ、待ってたよ。どうぞ上がって」
タカシが待ち侘びたようにドアを開ける。
マイ足拭きで足を拭いてお邪魔する。
「猫なのに律儀だね」
「まぁね」
「量が多くてバイクで運ぶのが意外と大変だったよ」
大量のキャットフードを叩きながらタカシが話す。
「自動車を持って無いのか!?」
「免許はあるけど、金が無いから維持できないんで、今は原付だけだよ」
なんてこった。
田舎だから、自動車は必ず持っていると思ってた。
「なぁ、金渡すから自動車を買えよ。そうすれば、俺も一緒に回れるし」
「あ〜、申し訳ない」
猫に頭を下げる人間様がここにいる。
「確か、保険とかもあるから、300万渡しとくからよろしくね。足りなかったら言ってよ」
「重ね重ね申し訳ない」
細かいことは丸投げだ。猫は自動車買えないし、運転できないからな。
「ところで、あの小山が開発されるって知ってるか?」
「あぁ、噂でね。住宅が建つって大家さんのお婆ちゃんが教えてくれた」
「金があれば、あそこに建つ家を買えるか?」
「無理無理、いくら一括で払えても、お金の出所が怪しくて調べられちゃうよ」
そうだよな〜。
「なあ、自営業で猫の餌の専門店って仕事にならないか?買うのは俺だけど」
「どうなんだろう。調べないと分かんないけど、何で?」
「その方が、仕入れが楽そうだし、美味い餌しか買付しない。猫の餌マイストロー的な」
「トノちゃん、それを言うならマエストロね」
「そうそれそれ、どうよ、猫の感想が聞けるから細かい分析してるってのが売りで。俺がお客で買うって感じで。ペットに金掛ける人間が多いって言うから誤魔化せないかな」
「確かに、猫の餌大量に仕入れても怪しまれないか!凄いよトノちゃん」
「まあ、細かいことはタカシに任せるしかないけど、とりあえず自動車はよろしくね」
山積みのキャットフードをアイテムBOXに入れて現金300万と本日の購入分を支払う。
「ねぇトノちゃん、お願いがあるんだけど」
「ん?何だ」
「俺もマジック袋を使いたいな〜って」
記憶の俺がわかるぜ!と頷いている。
「好きな鞄を一つだけなら作っても良いけど失くさないでよ」
タカシは大喜びで大はしゃぎ。はしゃぎし過ぎて隣の住人に叱られた。
次回更新は6月3日水曜日です。
更新時間は不規則です。
0時過ぎに出来なければ、17時〜22時になります。




