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第13章:犬鳴の霧の裏側の灰

#サイコホラー #知能犯 #残酷な描写あり #異常愛 #サスペンス #サイコパス

警察のメガホンの声が、夜の静寂を切り裂いた。青と赤のパトランプの光が回転しながら、犬神邸を包み込む深い霧を貫いていく。


「犬神 江戸イヌガミ・エド! 犬神 あかり! 両手を上げて出てきなさい! この屋敷はすでに包囲されている!」


内部では、江戸が小百合の動かなくなった体を台所の床下の隠し穴へと引きずっていた。あかりはその後を追い、時折指に残った血を舐めとりながら、クスクスと笑っていた。二人は階段を下り、自分たちの「死の実験室」である防音完備の地下室へと向かった。


「ここを爆破するぞ、あかり」ガスボトルのバルブを回す江戸の手は震えていた。「裏の森に古い排水溝のトンネルがある。今すぐ逃げるぞ」


しかし、彼らが制御センターにたどり着いた時、そこにはすでにしおりが立っていた。彼女は通学カバンを持っていなかった。その手には、本来江戸が持つべき起動用のリモコンが握られていた。


「しおり? 何をしているんだ? それをお父様に渡しなさい」江戸が命じた。


しおりは、あまりにも澄んだ瞳で両親を見つめた。つい先ほど惨劇を目にしたばかりの人間にしては、あまりにも澄みすぎていた。「お父様、お母様……お父様の論理は、一緒に逃げるべきだと言っているわね。でも、私が集めたデータは、あなたたちが『お荷物(重荷)』だって言っているわ」


江戸は凍りついた。「……どういう意味だ?」


「警察が探しているのは、殺人犯の夫婦よ。可哀想で『トラウマ』を抱えた孤児じゃないわ」しおりは薄く微笑んだ。「一分前、高木警部のメールアドレスに、お母様が佐藤さんを拷問している音声記録を送っておいたわ。児童保護局にも電話して、泣きながら地下室に監禁されているって伝えてあるの」


あかりは絶句したが、やがてヒステリックな笑いが弾けた。「私の子……。あなたは本当に完璧な捕食者ね! 自分を守るために、私たちを捨てるなんて!」


「愛しているわ」しおりは、中高生程度の体格しか通れない小さな隠し扉へと後退しながら淡々と言った。「でも、自分の未来の方がもっと愛しているの。さようなら、お父様。さようなら、お母様」


カチッ。


その小さな扉は、外側から自動的にロックされた。しおりは暗いトンネルの闇へと消え、強烈なガスの臭いが立ち込め始めた地下室に、両親を置き去りにした。


江戸は閉じられた扉を見つめ、それからあかりへと視線を移した。彼のINTP的な論理は、ついに降参した。予備の計画も、出口ももう存在しない。自分たちは、自分たちよりも遥かに効率的な怪物モンスターを育て上げてしまったのだ。


「あの子の言う通りだ、あかり」江戸が囁いた。その声は今や穏やかで、諦めに満ちていた。「俺たちはあの子の新しい世界にとって、ただの重荷でしかないんだ」


あかりは江戸に近づき、血に染まった夫の首に腕を回した。彼女は恐れていなかった。むしろ、この上なく幸せそうに見えた。「見て、江戸さん……最後には、あなたと私だけ。これって、ロマンチックじゃない? 一番愛した怪物の腕の中で死ねるなんて」


階上でドアを突き破る音が響いた。警察が台所へと雪崩れ込んでくる。


江戸はあかりの腰を引き寄せ、二人の骨が一つに溶け合うほど強く抱きしめた。彼はあかりに口づけをした――今度は暴力ではなく、深い絶望と共に。破滅の淵での、別れの接吻せっぷんだった。


「俺を壊してくれた君を、憎んでいるよ、あかり」江戸は妻の唇に囁いた。


「そして私は、そうさせてくれたあなたを愛しているわ」あかりが瞳を輝かせて答えた。


江戸はポケットから銀色のライターを取り出した。彼は最後にもう一度だけ、あかりを見つめた。彼女の瞳の中に、彼は自分自身の姿を見た――血塗られた執着のためにすべてを失った、一人の男の姿を。


「地獄で会おう、愛しい人」江戸が言った。


ドォォォォォォン!!!


凄まじい爆発が犬鳴村を揺らした。炎が空高く舞い上がり、瞬く間に豪華な屋敷を飲み込んだ。犬神家のあらゆる証拠も、遺体も、そして毒された愛も、すべては夜風に吹かれる灰へと消えていった。

「最後までお読みいただきありがとうございます。次回の更新は明日、22:00を予定しております。また明日お会いしましょう!」

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